パレスチナ問題の構図・22話「インティファーダのうねり(アメリカのユダヤ人)」

 さて、アメリカのユダヤ人の話を続けるためには、時代をほんの少し遡らなければならない・・・・・。

  イスラエルは、アメリカのユダヤ人にとって溺愛している一人息子のようなものである。ところがこの一人息子の非行が目に余るようになってきた。その端緒は、ベギン政権の登場であった。

 ベギンは「エルツ・イスレエル」(神との契約の地全土にユダヤ国家を樹立することを目的とする修正シオニズム。もう一つが社会主義のイメージを持つ労働党。ベギンは相対するリクード)のカリスマ的指導者ジャボンティスキーの信奉者として有名で、もとゲリラのこの首相は、非ヨーロッパ系ユダヤ人(セファラディー)の票を集め、選挙キャンペーンのたびに支持者が「イスラエルの王、ベギン」と叫ぶと云った大衆政治家であった(アシュケナジー支持がハト派の労働党で、セファラディーの支持がタカ派リクードというイスラエルの構図なのか?)。

 アメリカのユダヤ人は、アシュケナジーが多いのであろうか?彼らの体質似合わないものをベギンに、そして彼の支持者達に嗅ぎ取っていた。そして、レバノン戦争である。イスラエルは、圧倒的軍事力で隣国の首都ベイルートに迫った。

 中東問題において、その当時、ちんぷんかんぷんではあるが、そんなわしでさえその生々しい影像には記憶がある。さて、その頃には、イスラエルはもはやただの「いじめられっこ」ではなかった。とてつもない腕力を備えた大人に成長していた。もはやイスラエルはパレスチナ人の民族自決を拒絶する占領者であり、弾圧者でもあった。

 しかし、アメリカのユダヤ人にはイスラエルを非難することはタブーであった。たとえアメリカのユダヤ人が批判せずとも、イスラエルの批判者はすでに多すぎるほどいたのだから、彼らアメリカのユダヤ人が批判すると言うことは、イスラエルの敵に利用される恐れがあった。

 ちなみに、少なくともイスラエル側から見れば、これまでの4回の戦争は回避できないものであった。イスラエルの生存をかけて戦った。だが、レバノン戦争は違っていた。イスラエルの北部に対するパレスチナゲリラの脅威があったのは確かである。しかし、それとて、イスラエルの存在を脅かすようなものではなかった。ましてや弱小国レバノンがイスラエルの脅威であるはずがない。イスラエルは、政策として戦争を選択しレバノンに侵攻した。つまり、しなくても良い戦争だった。イスラエルの歴史の中で初めて戦争に拒否する兵士がでたことからもそのことを如実にあらわしている。

 そして、この戦争により軍事力を誇示する強国としてのイメージがアメリカのユダヤ人さらには、世界の国々の人々の脳裏に刻み込まれた。

 レバノンの首都ベイルートを包囲し、民間人の存在も意にかんせずと言った様子がテレビに映じられ、イスラエルのこれまでのイメージを変換せしめていった。こうしたイスラエルの対外イメージは、そして自己イメージの変容は、1987年のインティファーダ以来、さらに加速されることになった。

次回は、エルサレムが原因で混迷を深めるパレスチナ・イスラエル問題を考える上でどうしても知っておかなくてはいけない歴史、いや神話だろうか?「旧約聖書」について立ち入ってみたいと思います。

 

ここもアメリカのユダヤ人解説

まずはユダヤ人について

中東関係その3 中東関係その2 中東関係その1

アラビアのロレンス 英国の三枚舌外交 ユダヤ・ゲットー

富裕なユダヤ人 フランス革命

ロスチャイルド 差別・迫害