「嘆きの壁」みてね!

「5話・イエスの申し子」

「4話・シオンのとりこ」

パレスチナ問題の構図・3話

 ワシントン28日共同通信によると、米大統領クリントンはパレスチナ側に対して「独立許さず」の強い態度にでている。言うことを聞かなければ今までの関係全体を見直すとまで言っている。

 米政府のイスラエルへの肩入れはアラファト議長への圧力と同時に、政権維持に苦心するイスラエルのバラク首相を内政面で後押しする狙いもあるらしい。パレスチナ側がこのまま反発し続ければ裏目にでる可能性もあり、恒久的地位交渉の最終期限(パレスチナの独立)の9月13日を前に中東情勢は緊迫してきた。

 さて、「エルサレム」のことも話したいのはやまやまだが、これほど中東問題がきな臭くなってくると、のんびりノート写(歴史のお勉強)しなんてのもやってもいられないのだが、とにかく気にかかるのはアメリカの傲慢さだ(何に対しても彼の国はしゃしゃりでるのですが。世界の用心棒、いや警察だから?)。沖縄サミットだって、あのオルブライト女史はこなかったし、アメリカにとっては中東問題は非常に大事なんだよね。それにオルブライト長官は記憶違いかも知れないがポーランド系のユダヤ人じゃなかったかな。かの有名なキッシンジャー博士だってユダヤ人だろう(元国務長官)。なぜ国務長官はユダヤ人なのか?それにアメリカでは民主党がユダヤ寄りだと言われている。クリントンは民主党ですよね。

 アメリカ国民のわずか3%にみたぬユダヤ人だがその中には富裕者が多く存在し結構力を持っていると言われている。では、なぜアメリカのユダヤ人は民主党を支持するのだろう?それにアメリカのイスラエルに対しての尋常ならぬ肩入れはいかなる理由によるものか?

 というわけで、今回はアメリカのユダヤ人が少数ながらもいかにしてイスラエルに力を貸しているのか、今一つはっきりしないユダヤ人像の真相を解明するためにもアメリカのユダヤ人についてちょこっと調べてみたいと思う。

 では、なぜユダヤ人が民主党を支持するのか。その理由を知るには、面倒だがまずその歴史的背景を見る必要がある。

 在米ユダヤ人の大半は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて東欧から移住してきたユダヤ人とその子孫たちである。1920年までに全世界のユダヤ人の三分の一以上がアメリカに集中し、その数はさらに増えることが予想されていた。だが、1921年、当時の共和党政権は移民の制限し始めた(日本人もひどい目に遭っている)。その目的の一つはユダヤ人の移住を縮小することにあったと言われている。さらに30年代、共和党の孤立主義が強まるにつれ、ユダヤ人の間で「共和党は反ユダヤ主義」という感情がいっそう強まることになった。

 その一方、国内の少数派(マイノリティー)の問題に共和党よりも積極的に取り組むリベラルな民主党を、少数派市民であるユダヤ人が強く支持するようになったのは当然の成り行きだった。1944年の大統領選挙では、民主党候補ルーズベルト氏を、ユダヤ人の90%が支持したと言われる。

 また、移民二世代から、医者、学者、ジャーナリストなど専門職にユダヤ人が数多く進出していったことも、リベラルな民主党支持の傾向と深い関わりがある。さらに不動産業などユダヤ人の進出がいちじるしいビジネスにとって、民主党支持が有利であるという経済上の理由もあった。

 ユダヤ人の民主党支持の傾向は、民主党への莫大政治献金、さらにその献金による党内への強力な影響力へとつながっていく。

 さて、アメリカの経済誌「フォーブス」は毎年、全米上位400人の大富豪の名前を発表する。その中で人口比率3%にも満たないユダヤ人が24%も占めている。残りの76%はキリスト教徒のアメリカ人である。その90%は共和党支持だと言われている。つまり、400人の富豪のなかで民主党を支持するキリスト教徒は7.6%にすぎない。

 一方、ユダヤ人は、共和党にかつての反ユダヤ主義の傾向がなくなったことや、その経済的、社会的地位が向上したことによって、保守化する傾向はあると言われながらも、民主党支持の伝統はまだ根強く、24%を占める富豪の中でも約50%が民主党支持と推定される。つまり400人の富豪のなかで、民主党を支持するユダヤ人富豪は12%占めることになり、また民主党支持の富豪の6割がユダヤ人であるらしい。これは民主党を支える政治資金の中でユダヤ人の献金の占める割合をほぼ示している。民主党がユダヤ人の声を無視できない理由がここにあるわけだ。

 共和党にたいするユダヤ人の政治献金の占める割合は小さく、それだけではユダヤ人の影響は小さい。共和党が民主党政権よりもイスラエルに対して比較的強い姿勢がとれるのはそのためだと言われる。1956年、エジプト領土に侵攻したイスラエルを「経済援助の停止」という圧力をかけることによって撤退させたのは、共和党のアイゼンハワー大統領である。イスラエル・ロビーの猛烈な反対を押し切ってサウジアラビアに最新兵器を売却したのも共和党政権(レーガン)だった。そのいずれもその後再選を果たしている。

 また、ブッシュもイスラエルに強い圧力をかけた大統領だ(彼も共和党)。しかし、1991年に湾岸戦争が勃発し、イラクがイスラエルにミサイル攻撃を開始すると、イスラエルがイラクに報復することによって、アラブ穏健派諸国が反発し多国籍軍が分裂することを恐れたアメリカ政府は、イスラエルへの大量の武器援助と経済援助で報復を抑えようとした。一方、イスラエルは度重なるイラクのミサイル攻撃で犠牲者を出しながらも、従来の「目には目を歯には歯を」の強硬な政策とはうって変わってジッと絶えることによって、ブッシュ政権誕生以後、深まっていたアメリカとの溝を一挙に埋めることに成功した。さらに、これでアメリカに貸しを作って、湾岸戦争以後のパレスチナ問題に関する議論で、自国に有利な状況をつくり出したということが言えるだろう。そして、現在の民主党大統領クリントンのイスラエルに対する肩入れを見るに「なるほどなあー」と思うのはわしだけではないだろう。

まあそれはそれで納得できたが、当分は中東問題から目が離せない。別にどちらに味方するわけではないが人間って「追いつめられている方」を味方したくなるのが人情ってもんじゃないですか(でも、イスラエルのバラク首相(穏健派)も窮地に立たされているのですが。もしイスラエルの政権が変わったらもっともっとやばくなりますよん)。 参考文献・土井敏邦著「アメリカのユダヤ人」岩波新書より。

[4話でーす] /welcome:

 第四次中東戦争から始めるつもりでしたが中東が俄然風雲急を告げてきたので歴史が真新しい1990年代のお話から致しましょう。

 「銃の引き金を引いたのは確かに私だ。しかし、私の指を突き動かしたのは2000年以上に及ぶユダヤ民族のこの土地に対する愛だ」ー1995年11月にイスラエル首相イツハク・ラビンを殺害したユダヤ人青年イガール・アミールは、裁判でこう陳述し、無罪を主張した。アラブとの和平を理由に「エレツ・イスラエル(イスラエルの地)」を一部でも手放そうとしたラビンの行為は、過激な大イスラエル主義者アミールの目には民族に対する裏切り行為であり死に値すると映ったのだろうか。

 この「エレツ・イスラエル」をめぐる問題は、一方で神とユダヤ教と「約束の地」という三者の関係にかかわるきわめて神学的な命題だ。

 同時に、現実に存在するイスラエルと言う国の領域をどこからどこまでとし、パレスチナ人や他のアラブ諸国と、どのようにして和平を結ぶかという究極的な政治的問題である。この神学的な命題と実際上の政治的問題との間にどのような折り合いを付けるかは、シオニズムが当初から内包していた矛盾だった。

参考文献・立山良司著「揺れるユダヤ国家」文春新書。

 さて、もりさんの神の国発言ごときで、てんやわんやのわが国においては「神学上の命題」などと言われても、はたと首をひねってしまうのが「ユダヤ・シオニスト」に対する日本人の大方の感想ではないだろうか。

 そんな脳天気な我々日本人を尻目に、「エルサレムの完全な回復を望む」とサウジのアブドラ皇太子がアラファト議長に強調し、パレスチナへの全面支持を表明した。また皇太子は、「エルサレムはすべてアラブ人のものであり、エルサレムに関して、アラファト議長であろうと他のアラブ指導者だろうが一方的な決定をする権利はない」と述べ、エルサレム問題でイスラエルに対して一歩も引かない、譲歩しないことを示唆し、あくまでも戦い続けることを明言した。

 さて、95年に暗殺されたラビンだが・・・。

 1994年7月25日、今はなきヨルダン国王フセインとワシントンDC(アメリカのワシントン市コロンビア特別区)のホワイトハウスで中東問題について会談し、両国の平和条約調印直前まで話は進められた。この時中心の話題も「エルサレム問題」であった。

 ラビンはフセインに、ヨルダンはエルサレムに関して「優先権」を持っていることを承認するとしたのである。

 それより先の1993年9月13日、イスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)との間でパレスチナ暫定自治協定調印が行われ、これもワシントンDCのホワイトハウスにおいてであった。世界は注視した。そしてラビンとアラファトが握手したのであった。この時ラビンが認めようと認めまいと、アラファト及びパレスチナ人たちは将来必ずパレスチナ国家をつくることを心に誓い、その首都は「エルサレム」でなければならないとしたのである。

 ラビンはこのアラファトを出し抜くかのようにヨルダンのフセインにたいしてエルサレムの優先権を認めたのである。PLOは慌てただろう。自分たちより先にヨルダン国王がエルサレムにはいるのではないかと。しかし、その年の8月12日、PLOの外相級にあたる人物がエルサレムに行き、イスラエルのエル・アクサ寺院で礼拝したのであった。

 エルサレム、エルサレムへと、アラブ諸国あるいはイスラム諸国は草木もなびく勢いで吸い寄せられていく。果たしてその時、イスラエルは本当の中東和平を望んでいたのだろうか。中東和平とは、その実現とは、とりもなおさず「エルサレム」をイスラム諸国に返還することなのかも知れないのに。イスラエルは今回もエルサレム分割案を用意していた。しかし、現実はそうは問屋が降ろさない。

 イスラエルはエルサレム問題で全アラブ諸国の指導者を集め、各アラブ諸国内部での争いを引き起こし、一挙に彼らイスラエルペースで、エルサレムを返還することなくエルサレム問題解決を図ろうかとしているのではないだろうか(特にリクードは)。もし、エルサレムで殺戮事件が起きるとき、それが第三次世界大戦へのきっかけになると言えば、それはたんなる杞憂にすぎないのだろうか。

 イスラエルの考えるエルサレム分割案は、今回はともかく、以前の考えではエルサレムを総合的に統治するのは「カトリック」からの代表であるとされていた。そして、その下にユダヤ人の市長とパレスチナ人の市長がそれぞれの地域を治めるというものだ。

 昨今、ユダヤ教に対してぺこぺこ「しょく罪」の連続の体たらくなカトリックの法皇がユダヤ人の承認する人物となれば、このエルサレムの分割はやはり、ユダヤペース以外の何ものでもないと言うことが判明するのである。

さて、次回はイエスの申し子マルチン・ルターについてちょいと。

参考文献・宇野正美著「古代ユダヤは日本で復活する」日本文芸社。

[5話でーす] /welcome:

 さて、イエスの後の時代に、イエスと同じ精神で聖書を絶対的規範にしなければならないと叫んだのはマルチン・ルターであった。

 日本では、マルチン・ルターと言えば宗教改革者とされる。しかし、彼は宗教を改革したのではない。当時のローマ・カトリックが聖書という絶対基準から外れていると指摘したのである。マルチン・ルターは「聖書に帰れ」と語ったのである。

 マルチン・ルターは聖書を基準として当時のカトリックを断罪した。多くの人がマルチン・ルターに共鳴し、それは瞬く間にヨーロッパに拡がった。

 後年、マルチン・ルターはユダヤ問題についての著作を上梓している。内容と言えばユダヤの教典タルムード(ユダヤの聖典には、タルムードの他にトーラーそして、秘中の秘のカバラーがある)の危険性についてだが、しかし、彼よりも約1500年前、彼が主と仰ぐイエスが当時のユダヤ指導者たちを真っ向から糾弾したことそのものであると言われている。

 しかし、今日、膨大なマルチン・ルターの著作集のなかから、ユダヤ人問題だけが削除されているという。ルター派、ルーテル派と言えば、世界的な規模で強い力を持っている。にもかかわらず、近年、ユダヤ人たちに頭を下げたと言われている。

 とにかく、現代に於いては「差別」という言葉はある意味ではタブー視されるべき言葉である。たとえ、カトリックといえどもユダヤ教に対して行ってきた差別は現代の価値観においてもとうてい許されるものではないかも知れない(あくまでヨーロッパ社会においての出来事だとしても)。

 そのことを十分踏まえながら中東問題、ひいてはエルサレムの行方を見つめていきたい。ちなみに、イスラエルではバラク首相の右腕であったレビ外相が離脱(セファラデーか?)、名誉職とはいえ大統領には本命視された与党労働党のノーベル平和賞受賞者、シモン・ペエスが落選し、右派リクードのモシェ・カツァブ氏が当選した。新大統領は、中枢を占める欧州系アシュケナジーに対し、傍流扱いされている中東・北アフリカ系ユダヤ人に属するセファラディーの出身。右派リクードにあっても穏健派として政敵がないのが強みとされるが、今後のイスラエル内部の政治状況も予断を許さない状況だ。とにかく、どうも理解できないのは、和平に反対しているのがセファラデーではないかということだが、そのことはもう少し追求してみる必要があるようだ(ちなみに、閣僚の割合は主流のアシュケナジーが多いのではないかと思うが)。

 8月4日の読売新聞によれば、和平交渉が不調なら「武装蜂起」を望んでいるパレスチナ人が6割もいるという世論調査の結果が伝えられている。レバノン南部からイスラエル占領軍を追い出したレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの武装闘争を見習うべきだという、パレスチナ住民の回答が武装蜂起賛成の最大の理由のようである。とにかくアラファトがエルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還権で妥協を拒否したことを評価するパレスチナ人が大多数のようだ。

次回はカーター、サダト、ベギンによる「キャンとデービット」を思い返してみましょう。そのあとユダヤのアンビバレンス「アシュケナジーとセファラディ」について考えてみましょう。

     

まずはユダヤ人について

中東関係その3 中東関係その2 中東関係その1

アラビアのロレンス 英国の三枚舌外交 ユダヤ・ゲットー

富裕なユダヤ人 フランス革命

ロスチャイルド 差別・迫害