EHC事務局のページ

 パソコンの教育現場への導入が本格化し、その利用についても種々提案されていますが、理科教育という立場で主なものをあげてみると、
   (A)データ処理
   (B)シミュレーション
   (C)実験測定器
が考えられます。
 以前よりはかなり安くなったとはいうものの1台数十万円するパソコンを各班1台(最低でも11台)用意することは予算面でも厳しいものがあり、ノートパソコンは別にしても、パソコンだけで実験台の半分近くをしめてしまうことになります。また、教師にとっても事前の準備と授業後の片付けはかなりの負担となり、どうしても教師の演示実験となってしまう傾向があります。

1.実験ツールとしてのパソコン

 生徒実験用として各班に用意するためには、
 (1)さほど時間を要することなく比較的簡単に十数台製作できる.
 (2)小型軽量で持ち運びと準備が簡単.
 (3)2万円以内(消耗品)の予算で購入できる.
 (4)操作が簡単で生徒にも使用可能
 (5)教師にとってプログラムが簡単(BASICが使える).
といった条件を満たす必要があります。理科実験では時間・電圧・温度といった計測が主とした目的になりますから、上記の条件を満足する測定器ができれば、生徒にもテスターを扱う気安さで実験に参加できるようになります。

2.PC−G830

 Z80CPUを使用しているSHARPのポケコン「PC−G830」は、RAM容量32KB,クロック周波数3.58MHz,Z80バス端子の搭載とPC−8801など8ビットパソコン並みの仕様と処理速度を有しており、従来パソコンで行われていた分野へのポケコンの利用が可能になってきました。
 PC−G830の特徴のうちのいくつかを挙げてみると、
 (1)参考図書も多く扱いやすいZ80CPUを使用している.
 (2)パソコンと同様にCPUバス端子を備えている.
 (3)RS−232Cを使ってパソコンからプログラムが転送できる.
 (4)ラムファイルエリア(30KB)にプログラムが保存できる.
 (5)「BASIC+機械語」のプログラムが可能.
 (6)PC−Gシリーズは学校教育用ということで安価(12700円).
など生徒実験用として極めて都合のいい条件を備えています。N88BASICになれている私にとってはSHARPのBASICもほとんど同じと考えていいので、88用または98用に作った物理計測プログラムがほとんどそのまま使用できます。「速度・加速度の測定」「音声の録音・再生」など高速測定の場合は機械語プログラムが必要となりますが、PC−G830にはソースプログラムを機械語プログラムに自動変換するアセンブラ機能が搭載されているので、機械語プログラムの開発をスムーズにしています。

3.ポケコンインターフェイス「PIF95」の開発

 制御用各種インターフェイスボードは、サンハヤト,太平洋工業などから完成品として市販されていますが、”汎用性の高いよりオリジナルなものを”ということで、入出力LSI8255A,タイマLSI82538254),A/D変換LSIAD7576を1枚のプリント基板に載せたポケコンインターフェイス「PIF95」を開発しました。各種測定システムは生徒実験用として準備されることを意識して、PIF95を2枚のアクリル板ではさみ、その上にポケコンを載せることにしました。測定用周辺装置とはフラットケーブルでワンタッチ接続できるようにして、教師側の準備の簡素化をはかりました。生徒は数個のキーを押せば測定可能なように実験操作の単純化も心掛けたつもりです。


4.PC−98ジョイントボード

 メーカーの違うパソコン間では一般的に互換性はなく、I/Oアドレスの違いから周辺装置も当然機種が限定されています。前述の「PIF95」はSHARPのポケコン用に開発したものですが、「PC−98ジョイントボード」をPC−98の拡張スロットに差し込むことによって、PC−98用インターフェイスとしても使用が可能です。このボードの完成で「プログラムの開発と測定用周辺装置のテスト」にPC−98が使用できるようになり、開発環境がより充実したものになりました。





5.計測システム

 8255Aと8253(8254)を使用した「運動測定システム」と、AD7576を使用した「A/D変換測定システム」を開発しました。赤外線センサーを使用した「運動測定システム」は、1点・3点・6点での計測が可能で、「V−T曲線」「運動の法則」「運動量保存の法則」など直線状の運動についてはほぼ対応できます。
 「A/D変換測定システム」では、20Pヘッダー部に各種周辺装置を接続することによって「メモリオシロ(音声録音・再生)」「LC共振」「電磁誘導」「温度・照度・電圧計測」などに対応できます。

6.EHCの歴史

 1993年5月から始まった一宮EHCも、「マイコン搭載計測器の開発」をテーマに3年10ヶ月の歴史を刻むことになりました。この間若干のメンバーの出入りはありましたが、現在も17名と他のサークルに負けない参加者を維持してきました。毎回の例会には常に新しい「物づくり」があり、精選された理論構築が常に新しいテーマを生んできました。その歴史は次の通りです。

      実施日             テーマ

第1回  1993.05.30   RS−232C通信ケーブルとボードの製作
第2回  1993.08.21  ミニI/Oの利用としての小型搬送車の製作
第3回  1993.12.19  ポケコンインターフェイス(PIF95)の製作
第4回  1994.03.13  PIFボードの規格化と配線の修正,8255A入出力装置の製作
第5回  1994.07.09  PC−98ジョイントボードの製作
第6回  1994.08.20  8253テストボードの製作
第7回  1994.10.02  運動測定システムの製作
第8回  1994.11.13  AD7576の使い方とテストボードの製作
第9回  1995.02.26  「運動測定システム」センサー部の改良(1)(第7回と同じ)
第10回  1995.05.27  マルチ電圧計の製作
第11回  1995.07.22  Quick Basic 学習会(1)
第12回  1995.07.23   Quick Basic 学習会(2)
第13回  1995.07.24  Quick Basic 学習会(3)
第14回  1995.11.26  ポケコン間通信ボード(BOI)の製作
第15回  1996.03.03  音声録音・再生装置の製作
第16回  1996.07.13  音声録音・再生装置の配線変更
第17回  1996.07.20  Quick Basic 学習会(4)
第18回  1996.07.21  Quick Basic 学習会(5)
第19回  1996.11.23  電圧・温度計の製作
第20回  1997.02.09  電圧・温度計の配線変更
第21回  1997.03.02  「運動測定システム」センサー部の改良(2)(第7回と同じ)
第22回  1997.07.12  「運動測定システム」センサー部の改良(3)(第7回と同じ)
第23回  1997.07.26  s=(1/2)gt^2 検証装置の製作(1)
第24回  1997.07.27  インターネット体験学習

 それぞれの企画内容については、回路図・授業での利用例なども含め順次紹介してゆきます。