TACAN(Tactical Air Navigation System)

TACAN at HYAKURI BASE 

TACANは米海軍・空軍がFederal Telecommunication Laboratoriesの協力をえて、軍用に開発をした1955年公表された無線航法方式です。VORがVHF帯を用いるため比較的大きなアンテナ装置を必要とするのに対し、船上にも設置できる程度の装置として1000MHz帯の電波を用い小さなアンテナ施設で運用が可能です。

次のような事例からも設置の容易さは想像できることでしょう。

新田原TACAN(NHT)が工事のため1998年7月21日から8月5日まで 運用を休止します。この間,代替として新田原TACAN(ZZT)が運用されます。 この後,築城TACAN(TQT)が,1998年8月24日08:00JSTから9月16日17:00JSTまで運用を休止しますが,この間,代替として運用される築城TACANのIDは代替新田原TACANと同じZZTで,周波数,出力も同じです。近年の防衛庁所管のTACAN改修に際しては代替TACANが設置されていますが,同一のID,周波数,出力で,同一の機材を使用しているものと思われます。

また,長野olympicで行われたブルーインパルスの展示飛行に際しては,機から会場を視認することが困難であったため,TACAN(TUT)が設置されました。このTACANは車載型移動式で,会場国旗掲揚台裏の駐車場に設置されました。

動作原理


 TACANの動作原理は次の通りです。
 距離測定は DME と同様です。つまり、機上の装置(Interrogator)から、TACANに対し問い合わせ信号を送信します。地上の装置(Transponder)は航空機からの問い合わせ信号を受信すると、一定の時間遅延をおいて、応答信号を送出します。Interrogator は問い合わせの送信から応答の受信までに要した時間から、TACAN局と自機の距離を算出する方法です。精度は0.2%程度です。
 一方、方位測定は次の様に行います。
 TACAN局は、問い合わせが無く、応答信号が無いときでも充填pulseと呼ばれる無情報のパルスを送信します。このパルスは指向性を持ったアンテナから送信され、この指向性は1秒間で15回転するため、ある方向から見るとパルスの包絡線(ピークを結んだ線)は15Hzで振幅変調されていることになります。指向性が0度の時に基準となる信号をもったパルスを送出すると、パルス包絡線のピークと基準パルスとの位相差から、TACAN局から見た自機の方位を決定できます。実際には、方位測定精度を向上するために、包絡線の15Hz成分の上に9Hzのリプルを重ねているため、測定誤差はほぼ1度に押さえられます。有効距離は、周波数の特性上航空機の高度に依存しますが、13000mの高さで200nm程度とのことです。
 TACANは VOR と併設されて VORTAC として、民間航空機の計器飛行を支援するためにも用いられます。

DMEとTACAN

 民間航空機ではVORが1949年に方位測定の標準としてICAO採用された現在使用されているTACAN と同等のDMEではない別規格のDMEが1951年に標準として採用された。しかし、当時は経済的な理由などから機上にDMEは装備されない一方、アメリカ合衆国ではTACANが多数設置され整合性を取る必要性が迫られた。このため、1960年にICAOは旧規格のDMEを規格から削除して、当時DMET とよばれたTACANの距離測定部分を改めて標準のDMEとさだめた。


HYAKURI (茨城県東茨城郡小川町)  識別符号 HUT
DAIGO  (茨城県久慈郡大子町)   識別符号 GOC

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