第28話〜視線〜


「平和だな〜〜〜〜。」
「ん〜〜〜〜〜〜、これで彼女がいればばっちりなんだけどねぇ〜〜。」
「やっぱさぁ、こうゆうとこはさ、カップルでこないとさ・・・。」
「キャーーーーッ!!グーフィーさんがっ、手振ってるの〜!!」
「おおっ!写真写真! 取りあえずスターツアーズだろっ!」

 春休みである。 ノリミチ、僕、夏姫さん、妙里、元太で今日は東京ディズ ニーランドに遊びに来ている。
 一時は切迫していた僕の身辺が、最近少し落ち着きを取り戻しているのと、 今年は大学受験の年なので、取りあえずその前にみんなで日頃のうさをはらすべ くどこかに遊びに行こう、ということになり、僕らはTDLに押し掛けている。

 皆、楽しそうだ。 妙里はともかく、阿久津元太がはしゃいでいるのには以 外だった。 妙里といっしょにそっちこっちでぬいぐるみと記念撮影している。  空手だなんてごっついことしてる割には可愛い物も好きなんだな。 ノリミチ はそんな元太を見てあきれているふりはしているものの、何か落ち着かない。  と後ろから可愛いぬいぐるみが現れノリミチに愛想を振りまくと待ってましたと ばかりに記念撮影だ。 僕は・・僕ははしゃぐ友人達をボーッと眺めていた。

 僕と同じ顔をした女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。 昼も夜もサブリミ ナルよろしく僕の意識にちらつく。

 と、周囲を見渡すと、みんなが消えていた。 僕が惚けてる間に移動してし まったようだ。 酷いな、みんな。 少しいじけてコンコースを軽く蹴り飛ばし た。 すると後ろからプッと吹き出す声がした。 誰だよ、と思い振り向くと夏 姫さんが軽く微笑みながら、迷子のカズを呼びにきた、と言い僕の腕をむんずっ とひっつかんでずんずん歩き出した。 どうせなら手を握って欲しかったな、な んて図々しいことを考えながら僕は夏姫さんをよこしてくれた友人達に感謝した 。

 春休みともあって、TDLのアトラクションは混みに混んでいた。 2時間 程してやっとこさ目当てのアトラクションを終えると、僕らは取りあえずお茶で もしようか、ということになった。 でもどこも混んでいる。 元太とノリミチ の仕切で夏姫さんと僕がオーダー部隊、その他は場所取り部隊となって動くこと になった。 全くもう、気使いやがって。緊張するじゃん・・。 それとも奴ら 何かたくらんでいるんだろうか?他愛も無い会話をしながら無事食料調達を終え ると、今度は連中トイレに行きたいなんて言い出し、僕は再び夏姫さんとお留守 番になった。 なんか、二人で並んで座っていると、まるでカップルみたいだ。

「何?顔になんかついてる?」

 なるべく他のとこ見ようとしてるのに、つい見つめてしまう。

「や〜痩せてていいな〜ってさ〜僕もダイエットしなきゃ〜〜あはは・・・」

 ・・なんちゅう言い訳だ。 未来のギターヒーロー(僕の予定)にしてはし けている。 もう、こうなったらいっそのこと告白でもなんでもしてしまおうか ・・。

「あ・・あのさっ・・あの・・っ・・実は・・そのっ・・」
「なぁ〜にぃ? はっきりいいなさいよ〜、なんかそんな言いづらいことでも したわけぇ?? まさかパソ壊したとかゆんじゃないでしょうねぇ〜あはは。」
「や、そのやらかしたとかそーゆうのではなくてぇ・・んと・・・」

 僕はふと気配を感じ、視線を横にずらした。 すると柱の影で連中がニヤニ ヤしながら見ている。 げげっと思い、再び視線をスライドさせた。 ふと目が 合ったそいつはニヤっとしながら僕を見た。 僕は全身が総毛立ち震えが止まら ず倒れそうになった。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2529より転載>

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