第27話〜”もう一人”の石〜


 赤く夕日に染められた部室。 僕らはUFO(みたいな物)が消えていった 窓を見ていた。 則道は呆然としているが、僕も・・・・・・。

「和博、俺達、どうなっちまうんだろうな・・・・」

やっと日本語を則道は言えた。

「ふ〜ん、あんたカズヒロって言うんだ・・・・・。」

 背後からの突然のその声に、僕はビクッとした。 此処には僕と則道だけの はず。 しかも女性がいる訳が無い。
 ゆっくり振り向いて見た。 ドアのかたわらに女性が居る。 夕日の強烈な 反射で顔ははっきりとしていなかったがショ〜トカット。 うちの女子の学生服 を着ている見覚えの無い女性は足音を立てずに近づいてくる。 光の加減で顔立 ちははっきりしてきた。 どこかで見たような気がする。
 と、思いだそうとしていたら、彼女が右手に持って居る物が目に入った。

「おい・・・それは・・?」
「そう。 貴方達がUFOと思っている物よ。 余計な事をしようとするから ・・・」

 音が弾けた。 金属音とも言えない不思議な音と共に、彼女の手の中でさっ きのUFOが潰れ、粉になったみたいだ。 多分、間違いない。 付いていたペ ンキに見覚えが有る。 僕は哀れな動物の運命を哀れんだが、意識はそちらの方 に集中しなかった。 現実は今、僕の目の前にこそ有る、という気分だ。

「久しぶりね。 カズヒロ・・・君。 覚えている訳無いけど。 私も思い出 したのは最近ですものね。 それと・・・・」

 彼女が僕の横を向いたのにつられて、僕も横を向いた。 則道がいる。 呆 然としている。 もう見慣れた顔だ。 彼と敵対している不良どもがこの顔を見 たら何と思うだろう。
 僕は彼女の方を再び向いた。光の加減で表情は読めない。

「カズヒロ。 その胸の石を護るの。 絶対にね。 私の為に。 貴方達の為 にも。」

 則道はようやく自分を取り戻したようだ。 僕と一緒に呻いた。
 石だ・・・僕と同じ様な石が、彼女の胸に光っているのを見たからだ。

 彼女は体を返し、再び足音を・・・・今度は立っている、聞こえなかったの は錯覚か・・・・足音を立てて、部屋の外に消えていった。
 「なんだ?あいつ?」僕は思わず呟いた。 いきなり部室に入ってきておど かしやがって。 石・・あいつも持っている。 彼女のは普通の石なのか。 そ れとも・・・。

「不思議だな。」
「ああ。 なんであいつまで石を。 流行っているのかな」

と僕は則道の言葉に合わせた。

「いや、石もそうだが・・・あいつ、顔が和博にそっくりじゃね〜か? とい うか・・・・・・・そのまんまだぜ。」

 僕ははっとした。 何処かで、というのは自分の鏡なのか・・・でも、違う 。遠い前の思い出にあるような・・・。

「和博・・話すか? 今の事を。」
「ん・・・誰に? そっくりさんの事か? UFOの事か? ・・いや、両方 やめとこ。」
「UFOなんて・・信じないだろうからな。 この俺も信じん。」

 結局、和博のそっくりさんの事だけを事のついでに話したら案の定、妙里は ノリノリで”和博君そっくりさんを探せ!作戦”とお騒ぎしだした。 僕と則道 は頭を抱えたと同時に安堵感を得たものだった。
 妙里の作戦が一向に効果を得ない事数カ月、誰もがその事自体を忘れ、妙里 はといえば遥か昔に忘れていた。 そして・・・風は梅の香りを吹き去り桜の季 節が訪れた


(ねこかず)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2493より転載>

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