第26話〜紅蓮の教室〜


 西日の部室は再び静寂を取り戻した。 ノリミチは一通りわめきちらした後 、疲れ果てて今度はまるで魂が半分抜けてしまったように座り込んでいる。

 僕は再び耳を澄まして見た。 自慢じゃないが、耳には自信がある。 どれ くらい自信があるかってゆうと、チューニングメーターなくても僕はギターのチ ューニングができるのだ(ん、ギタリストなら誰でもできるって? 余計なお世 話だいっ)。 その自慢の耳を思い切りダンボにしてみた。 すると、なんと、 再びあのモーターの音が聞こえてきたのだ。 ノリミチは相変わらず抜け殻であ る。 僕はほとんど無駄口に近いような、つい今さっきの事件とは全く関係無い 話をしながら部室の棚の中をあさった。 確か、このあたりに先輩達がギターの ペイント用に使っていたスプレーがあるはずだ。 あった。 棚の一番奥に。  僕はスプレーを持ち再び耳を澄まし、無駄話を続けた。続けながらモーターの音 を確かめる。 どこだ・・・。 どこにいる・・。 見えなくてもいるのがわか る。 右、左上、下、旋回、また前方、次は後ろ・・・と音がとある位置で止ま った。 僕の目の前にいる・・いや、姿は見えないけど確かにいる。 気配があ る。 僕はおもむろにスプレーを自分の前方に吹き付けてやった。

「うわわわわわっ、何をするんだっ。 こら、落ち着け、落ち着きなさい・・ 。 我々は・・」

 やっぱり、あれは正夢だったんだ・・・・・・。 ドラ焼きUFOの夢。  連中はガタガタ左右に揺れながら自分たちは宇宙のFBIのような組織だとのた まい、君の叔父のことで捜査をしていたと言い、君のかけた噴射物のおかげで偵 察艇の調子がおかしいとのたまった。 そして、我々は君の味方である・・、君 は今、ある組織に狙われているが、今はまだその組織の名前を明かすことはでき ない、とのたまった。

「あんたら、宇宙人だろ。地球外生物なんだろ。 国家は必死になってあんた らのこと隠しているのに、なんで僕にだけ正体を明かすのさ」

 すると連中は、それとこれとはまた別物である、などとあいまいな言葉で答 えをごまかした。 そして、自分たちの存在は絶対に口外しないこと、と僕らに 告げ、連中はペンキを背負ったままどこかの空へ消えていった。

 かわいそうにノリミチは頭にペンキをのっけたままの姿で失神していた。  僕は自分の頬をつねって見た。 痛い。 今度はノリミチをたたき起こして彼の 頬をつねってみた。 お返しに拳が飛んできた。 僕は教室で見た夢の話とノリ ミチが腑抜けていた間に起こったことをノリミチに話してみた。 再び彼は錯乱 した。

 どうやら、僕のあずかり知らないところでとんでも無いことが起きようとし ているらしい。 みっちゃんの二の舞だけは嫌だ・・それに、そんな事態は叔父 にしても本意ではないだろう。 僕はトラブルメーカーを握りしめ、改めてこと の大きさに打ち震えた。 溜息をつきながら周りを見渡すとすでに西日は真っ赤 な夕日となり、僕らを紅蓮に染めていた。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2465より転載>

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