第25話〜夢の又夢〜


 僕の肩を誰かがゆすっている。

「おい!どうした和博!ボ〜っとして?」

 は、と気がつくとそこは教室だった。夢?
 目の前には痛そうに頭をさすっている妙里と則道がうつむいている僕を覗き 込んでいる。 また夢か・・・則道に殺されそうになった時と同じだ・・・でも 、よりによって宇宙人とは、我ながら笑ってしまう。 これは則道達には黙って 居たほうが良いに違いない。 好き好んで道化になる趣味はない。 僕はそう得 心して笑って誤魔化した。

「ところで則道、今日の放課後久しぶりに部室にいかないか?」

 則道は一寸 ”いいのか?” という顔をしたけど、快く応じてくれた。  そこに妙里が入れた一言、「叔父さんの幽霊は平気なの?」は僕にも強烈だった 。


 放課後、則道と部室が雑居する特殊棟に移った。 久しぶりに見る廊下は違 った雰囲気が有る。 他の部は運動系は我先にと校庭を占拠し、文化系は今日は 僕たちだけのようだった。 静まり返った特殊棟に僕たちの靴音が響き渡る。  時たま野球部のバットの金属音が僕に刺さってくるような錯覚を与えた。

 此処まではあの時と同じだ。 あの衝撃の日と。 叔父さんの最後の日を確 認した日。
 軽音部の部室のドアを目の前にした僕は、あの日までとは違う雰囲気を覚え た。
 開けると其処には・・叔父さんの匂いが、叔父さんの記憶が甦るような・・ ・。

「和博・・・」

 則道のその声に押されてドアに手をかける。 づしっという手ごたえがくる 。 こんなに重たかったっけ・・・ドアの重い音が響く。

 デジャヴ〜というものだろうか。 いや、前から此処の部屋を利用している から正しいと言えないかもしれないけど、何か今までと部屋の雰囲気が違うよう な気がするけど前から知ってるような・・
 則道は勝手に片付けられた事にブツブツ言っている。 多分、怖いけど僕の 手前声を大きくして言えないらしい。 やたら無駄口言っている。

「スコアどこだよ、ええい元に戻せってんだろあの馬鹿やろがええい邪魔だっ て、あ〜あ、暫く手入れしてねぇから、和、早く一つぶっぱなそうぜ」

 意味不明。

 そうだ思い出した。 此の部屋のかたずけ具合は夢と同じだ・・・。 とい うことは、当然次は・・・

「和・・・なんか変な音しないか?」
「則道、それってモ〜タ〜の音か?」

 突然目の前に現れた青い物体を僕は思わず 「どら焼きだ!」 と叫んだ。  でもどう見てもどら焼きには見えなかった。 まるで僕の胸にぶら下がってい る石がカレ〜皿位に大きくしたみたいだった。
 段々音は大きくなる。 モ〜タ〜というより、金属を擦るような音に包まれ た。 とっさに僕は則道は役に立たないと思い、箒を振り回して僕に近づくその 青い物体を避けようと努力したが、無駄だった。 どんどん近づいてくる。
 その時、則道の会心の一撃が石の上部に加わった。 急速に勢いを失った石 はそのまま僕の脚元にゆっくりと落ち、床に付いたと思ったら消えて無くなった 。
 僕は呆然としている自分に気がついた。
 やっぱり則道は頼りになる、過小評価して済まない,と思って僕は則道を見 た。
 彼は石を叩いた箒を持ったまま,恐怖のせいか錯乱状態だった。


(ねこかず)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2418より転載>

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