第24話〜ドラ焼き・・じゃない!〜


 数日後、僕は放課後ノリミチを連れ、例の部室のドアを開けた。 ギィイイ と重い音がする。 捜査の後だろうか。 最後に部室を出た時よりも、随分風景 が変わっている。 雑然としていたハズの室内が綺麗にかたされていた。 何よ りも一番の変化は床が一部張り替えられていたところだった。 そこは叔父の血 痕があった場所だという。
 ふいにノリミチが何かの気配を察知した。 なにか妙な音がする、という。 さすが地獄耳だ。 悪口と妙な雰囲気には敏感だ。 僕もまけじと耳を澄ました 。 廊下を駆け抜ける足音、女の子の弾む様な声、調子合わせの運動部の太鼓、 調子っぱずれのトランペットの音、かすかなモーター音・・・・・・・ん・・・ ・・何の音だ・・・。 ここにはモーターが回るような物は何も無い。 僕はノ リミチにささやいた。

「・・モーターの音か?」
「・・・あぁ。微かだけど・・。ここ、モーター回るような物ないよな。」

 窓から西日が差し込む。 それは長く薄い影を描き出す。 機材の影、机の 影、ノリミチの影、僕の影、忙しく揺れるドラ焼き型の影・・・・・ん?

「・・・・・・あの影なんだ?」
「・・・・・・ドラ焼きなんて持ってきてないよな・・・・・。」

 と、不意に西日を浴びてギラギラと輝く銀のドラ焼き型の銀色の浮遊物体が 目の前に現れた。 大きさはカレー皿くらいの大きさだ。

「UFOだ! つかまえろっ!!」

 ドラ焼きUFOはちょこまかと動き回ったが、部屋が狭いのと、先手をうっ てドアを閉ざしたということもあってか、逃げ場を失ったドラ焼きUFOは壁に ゴスゴスぶつかり、最後に窓の方に突進していったが、あらかじめ予想していた のだろうか、ノリミチが暗幕でドラ焼きの行く手をばさっと阻み、そこを僕がほ うきで叩き落としてやった。 なんだか、UFOの癖に随分へぼい囚われ方だ。
 驚いたのはノリミチだ。 超常現象には弱いはずだから、てっきり錯乱する と思っていたのに、とても張り切っている。 平気なの、と聞いたらUFOは未 確認飛行物体てことだろ、物体てことはこの世に存在する物であるから俺は問題 無いのだ、とわけのわからんことを言った。

 ドラ焼きUFOは、と言えば、往生際悪く未だにバタバタしている。 ノリ ミチはニヤニヤしながら、焼いて喰うか煮て喰うか、上からがんごん殴って遊ん でいる。 どこから出したか、でかい磁石なんぞ近づけて遊んでいる。 と、突 然妙な声が部屋に響き渡った。

「こっこらっ、君やめなさいっ。 我々は宇連警銀・太陽系支部の捜査官だっ ! 君の叔父さんの件で捜査にきたのだっ!! こらっ、磁石をはなさんかねっ 、おかげで精密機器がメタメタだ!」

 ・・・・・・なんだよ、今度は宇宙人かよ。 いい加減にしてくれ。 僕ら はドラ焼き野郎を持ち帰って、逃げ出さないように漬け物石でくくって、赤点の 答案と共に僕の学習机の鍵付の引き出しの中にしっかと放り込まれた。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2415より転載>

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