第22話〜眠れる記憶を呼び覚ませ〜


 世界がゆらぐ。 視界には新月の星空がリアルに飛び込む。 誰かが僕の頭 を抱え込む。 そして世界は碧につつまれる。
 目の前には”半寝の妖精”がいた。 目をパチリと空けて僕を見つめている 。 腕を組み、のばした足を軽く組み、蜻蛉のような薄羽を広げて。

「・・思い出して。早く・・・私のことを思い出して。」
「・・・・お・・思い出して・・って、いったい何を?」
「・・・・・魂は・・・・巡る・・・・永遠の輪の上を・・車輪は廻り決して 止まることは無い・・・・」
「ねぇ、一体何のこと? 何が言いたいの? 僕にいったいどうしろって言う の?」
「眠る・・記憶を・・・・呼び起こして・・・・私を・・私のことを・・早く ・・」

”パンパンッ!”
「こら〜〜〜〜っ、寝るな〜〜〜〜っ、寝るなら家に帰ってからにしろぉーー 」

・・・・う・・・・・・・・・・痛い・・・・。夏姫さんが僕の顔に往復ビン タをくれたらしい。 ・・痛い・・でもいっか。夏姫さんだし。
 にしても、みんなやけに落ち着いている。
 まったく、ノリミチは元太とやりあった後ですっかりバタンキューだ。 元 太は元太で妙里に自分の決まり手をプレイバックしてに見せびらかしている。
 おかしい。 また青い石が発光をおこして”半寝の妖精”が現れたばかりだ と言うのに。

「ねえ、今の見たでしょう! またあいつが・・石が光ってあいつが出てきた のを!」
「バカ言うなよ。 今日はまだ一度も見てないぞ。変なこと言うな。 だいた いだな〜この世の中に本当に”有翼性人間型半透明体質生物”なんかいたらよぉ 〜、キュパカブラス級のスク〜プだおっ〜。 そんなことあったらNASAが連 邦捜査局がぁKGBがぁ秘密機動隊がぁ〜ふにゃにゃにゃ・・うぐっ・・・・・ ・・・・・・・・・。」

 酒を飲んだ後に激しく運動すると一気に酔いが回る、というけど、今日のノ リミチは非常に良い例だと思う。 あんまりノリミチがのたまうものだから、夏 姫さんがノリの腹に拳を一発入れ、ノリミチはそのまま夢の世界に行ってしまっ た。

「まあ、ノリミチはともかく、私は青い光りも”半寝の妖精”も見てないね。  妙里はどうなの?」
「なっちゃんがノリミチ君に一発入れたのは見たけど、青い光りも妖精さんも 見てない・・。 カズ君見たの?」
「・・・・・・・うん。 見た。 夢だったのかな?」
「う〜〜っ、ずるいぃ〜〜、俺にも見せてよ〜〜 今すぐ見せてぇぇ〜あう〜 っ」

 冷静な者、タダのよっぴ、酒の勢いでダダをこねる者、でも皆一様に石の発 光も”半寝の妖精”も見ていないと言った。 夢だったのかな? いや夢にして はリアルすぎるよ。 僕は夢で見た”半寝の妖精”と奴からのメッセージを皆に 話した。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2351より転載>

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