第20話〜罠〜


「話は聞いたぞ。どうして俺らを呼ばないんだよ。」
「そーだよ、正々堂々と殴り合いができたってゆうのにさぁ〜」

呑気なもんだ。 にしてもなんで阿久津姉弟がこの話を知っているんだ。 妙 里がにやけている。 妙里を問いただすと話をしたのはあの二人と内藤さんだけ だ、と小声で告げた。

「お前なぁ、普通言わないぜ、あんな襲われ方したらさぁ。怖くて言えないぜ 」

すると、阿久津姉弟ならきっと力になってくれると思ったと少しいぢけた様子 で俺に訴えた。 どこまで話たのかと問いただしたら、よりによって洗いざらい 話したと妙里は言った。 なんてことだ。二人が空手バカだというのは知ってい るけど、だからって面白がって首をつっこんで巻き込まれたらどうするつもりだ 。 俺はおまえらには関係無い、頼むから首を突っ込まないでくれと二人に申し 出た。 すると、

「わかってないなぁ・・俺達お前が思うほど弱くないぜ。なあ、妙里。」
「そそっ、百戦錬磨の悪苦痛姉弟なんて呼ばれてるんだよっ! あたしよりぜ んっぜんつおいんだからっ、格が三つも上なんだぞぉっ」
「たえっ、悪苦痛じゃないっ阿久津だっ! 穂積には確かあたしのパソコン貸 してたよね〜〜。 あたしらきっと役に立つと思うよ。」

サンバカトリオの大合唱である。 俺は眉をしかめ上目使いでサンバカ達を見 た。 全く、なんだってこんな女に惚れるわけ?和博は。 いくら夏姫が美人? (和博説)だからって・・。 噂によれば夏姫嬢は女の身にもかかわらず、近辺 で乱闘があると必ずといっていいほど、その影をあらわにし、どさくさに紛れて 両者思う存分調理しておもむろにその場を立ち去ると言う・・。 たちが悪いぜ 。 こないだだって校内で三年生が乱闘してた時にさりげ無く中に入ろうとして いたし・・。

「何その目。せっかく力になろうとしてるのに・・。 女と思って格下に見て るでしょ。なんなら今からやって見る?」

夏姫は椅子から立ち上がり指をべきべきっと慣らし、俺を睨み付けた。 なん て気の短いお嬢さんだ。

「やめろよ。 ここは教室だぞ。 それに穂積もさあ、心配してるんだよ。  うんうん匂う匂うプンプン臭う。 きな臭いぞ〜、これだけ臭けりゃ誰だって首 つっこまれるの嫌がるさ。 な、座れ、夏姫。 それに穂積はもう喧嘩屋じゃな いんだから。 お前がつっかかっていってもかわされて悔しがるだけだぞ。」

ふん、昔のことはもうどうでもいい。 夏姫嬢は元太にたしなめられて渋々椅 子に座った。 そして元太は付け加えるように俺にこう告げた。

「穂積、お前、確かに喧嘩強いかもしんない。 でもよぉ、考えて見ろよ。  聞いた話じゃ向こうさん結構やばいアイテム持ってるらしいじゃん。 とても穂 積と岩館だけじゃ手に負えないと思うぜ。 へっへ。 はっきり言ってお前の強 さは我流の強さだ。 いくら場数踏んでるったてさ、訓練された者とまともにや って渡り合えると思うか? 持久力しかり、技しかり。 前にお前が乱闘してる とこを見たことあるが、まあ、半端な武道家よかよっぽど強かったけどよ、随分 無駄な動きが多かったな、ふんふん。 ま、お前1人じゃ連中おろか、俺にも勝 てんだろうよ〜」

 批評家よろしく元太がのたまってやがる。 血が逆流する。目がぎらつく。

「・・・てめぇ、誰に喧嘩売ってっか解ってるんか?ぁ゛あ?つぶされてぇか 」
「くくくくくっ、今夜十時資材置き場で待ってるぜぇ。逃げるなよ〜ノリピ〜 」

そう言い残すと空手バカ姉弟は俺の教室をスキップしながら去っていった。  横を見ると妙里といつの間にか内藤さんが立っている。 いつからそこに、と聞 くと決闘の申し込みのとこからと言い、ついでに穂積君、阿久津君にはめられま したね、と笑った。 ・・・才女の微笑みで俺は我にかえった。 しまった・・ はめられた・・・もう無益な殴り合いはすまいと誓ったのに。 かと言ってここ で逃げては男ノリミチの名が廃る。 妙里が追い打ちをかけるように元太は前か ら俺と対戦したがってたと言った。 ふぅ・・・。 大きなため息に女史のスカ ーフが靡いた。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2310より転載>

あらすじ 外伝紹介 相関図

この作品のに関するご意見、ご感想は・・・