第18話〜「WIZARD」〜


 あんまり妙里が妖精の話をするものだから、カズは頭っから布団を被ってふ て寝している。 俺はと言えば、この現実世界には存在し得ない者の話で盛り上 がる女二人から現実逃避するかのように全く別のことを懸命に考えていた。 好 きな女の子のこと、夕べのテレビのこと、新しく出るCDのこと、パソコン通信 のこと・・・・が、妙里の声があんまりでかいものでどれも途中で遮断されて全 く長続きしない。 話題を代えたくて仕方ない俺は、カズの布団を無理矢理ひん むいた。

「うう〜 何すんだよぉ・・・」
「あのさ〜〜 何か無いの?? 他の話題ぃ、ほら、院内での噂話とかさぁ、 ほらたとえば、あの看護婦と医者はできてるとか、患者はできてるとかさぁ」
「あ〜、十三階の患者さんが夕べなくなって、でもその人が無くなった時間に 廊下を・・」
「ぅああ、そそそーゆうんじゃなくてさぁ・・そだ、バンドの名前!! そそ 、名前名前・・決めようよ。いつまでも名無しじゃかっこつかないだろ・・」

俺がそっち方面苦手なのをしっていて、尚かつ醜態をさらした直後だというの に暇人和博は無理矢理話をオカルトな方向に持っていく。 俺はあわてて話をバ ンドの名前の話に切り替えた。

「んん、そーだそーだ、暇人は余計だが、それは大事なことだ。 なんかない かなぁ。 なあ、妙里、何か無い?内藤さんも何か無い??」

しばしの沈黙である。内藤さんは無論、妙里までもが黙りこくって唸っている 。

「最近のバンド、”〜S”て複数形になるの、あまり無いですよね・・受け狙 いはやめましょう・・。 個人的には短い名前の方が好きですね。」

才女の以外な発言。 この人もしかして、結構音楽好きなのかなぁ・・?

「イニシャルくっつけただけっていうのは、わけわかんないから嫌い〜」

イニシャルか・・確かに何か素っ気無いような気もする・・妙里ナイス!

「なーなー、何でもいーからとにかく格好いいのにしようよ!」

・・・おい、お前なんか他人事だな。俺1人で考えろっていうのかよ。

「う・・痛い・・・・けが人をはたくなよ・・ふん、いいよーだ。 そうやっ ていじめるとな、1人で麻雀してるから・・ん、げ、変なとこおしちゃったよ」

ノートパソコンの画面に見慣れないMSGBOXらしきものが出ている。

「”ハードウェアウィザード”なんだこれ・・」
「あ、それはたぶん、新しいハードをインストールする時に使うものだと思い ます。 キャンセルをクリックすれば、消えますよ。」

・・・すごい、内藤さん、まるでインストラクターの用だ。 へーぇ、ハード ウェアウィザードねぇ・・いろんな機能があるんだ、WINて。
 ・・・・・・ん、何か今頭をよぎったような・・・。 ウィザード・・。  俺のインスピレーションが刺激を受けたようだ。

「まあったく・・何がインスピレーションだよ、ノリミチは格好つけだな。  でも、なんかいいね、ウィザード・・これ何て意味なの? つづりは? 一応コ ンピューター用語かな、未来っぽくていいんじゃない?」

一同才女に注目した。 彼女はやっぱり私の出番ですかとでも言いたげに微笑 みながらこう言った。

「コンピューター用語かどうかは知らないですけど、意味は”男の魔法使い” です。 綴りは”WIZARD”です。 なかなか良いんじゃないですか? 二 人とも雰囲気暗いし、それに魔法の石もありますし。」

・・・お見それしました、なかなかするどい観察眼だ。 カズもなかなか悪く は無いような感じだ。 あと、収穫がもう一つ。 内藤女史の微笑みが以外と可 愛いことに気がついた。 ついでに俺は彼女に俺達のブレーンになって、と申し 出た。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2301より転載>

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