第17話〜石の秘密〜


 僕はというとこんなものは慣れっこだ。 というか慣れた。 不可解な事が 多すぎる。 僕は立ち上がった。もう大丈夫と思ったけど体は僕の意志にはまだ 従ってくれなかった。 ガクッと膝から力が抜けた僕を横にいた妙里が小さな手 で、見た目とは裏腹の力を出して支えてくれた。 とは言っても大した力はかか っていないけど。 僕をそのままベットへと誘導する間も、妙里の目は床に落ち ている石一点に注がれている。 僕がベットに腰をかけたかいなや、妙里は行動 を起こした。 

「触るな!妙里!!」

僕が言ったのが先か、後か、妙里はさっきの石を取り上げた。

「綺麗だね〜〜〜〜〜〜っ!」 

と言って妙里は石を上下に振る。 さっきの妖精(みたいな物)が神社のおみ くじみたいに落ちてくるのを期待しているみたいだ。 僕がさっきみたいに光出 すかもしれないとハラハラしながら見ていたけど、何にも起きなかった。 

「ね〜、これい〜なぁ〜欲しいなぁ」

と言った途端僕の口から無意識に駄目だ!、と大声が出た。その声を聞いて妙 里がベソかきだしたのを見て、僕がどんな表情をしていたか、自覚した。 

「いらないよ〜ぉ・・・」

そう言いながら妙里は僕に石を渡した。
 石を欲しがった人はこれで2人目。 叔父さんはロッカ〜で石を探していた のかもしれない。 他に用事の無い校舎で殺されるなんて尋常ではない。 そう としか考えられない。 そんな意識が一瞬頭をよぎった。 石を渡したら殺され る・・・。
 そう思っていたらいつの間にか妙里は帰って行ったみたいだ。 罪悪感を僕 に与えて・・・。

 どうも可笑しかった。 あの日以来則道は一人で来なくなった。 理由は勿 論分かっているのだけど、頻繁に誘われるクラスメイトは、らしくない行動に恐 らく半ば当惑しているはずだ。 今日も病室のドアの外から声が聞こえ出した。  大体分かる。 又、例のリズムとスリッパのペタペタ・・・。
 今日の連れは内藤久美と覚見 妙里だ。 というか今回はこの前の石の騒ぎ の時、折角持ってきたノ〜トを妙里がもって帰ってしまったそうで、則道が言う には今日改めて持ってきたついでに、基本的操作を内藤久美さんに教えて貰おう 、と妙里が提案したそうだ。 

「このソフトは20種類の音種が始めから設定されています。 もし、一寸ア レンジしてみられる様でしたらこのように・・・でも入っているソフトはなにぶ ん簡易のソフトですので、今度宜しければ本格的な物を探してみましょうか?」

 僕はおとなしく、はぁ、と答えていた。 簡易の物なのは当然かもしれない 。 夏姫さんは多分、此れを使って空手の情報を整理していたに違いない。 パ ソコンも使い方次第って所か。 其れよりもっと気を引いたのは、此れを使って 通信が出来ると聞いた事だ。 PHSとかに繋いで通信が出来ると久美さんは言 った。 良いかもしれない。 今度家からPHS持ってこよう。

 話はいつの間にか石の話になった。 僕は久美さんに石を見せて久美さんは 妙里とそれを見ながらキャイキャイ言っている。 綺麗とか不思議ね〜とか、妖 精の事を信じているのかいないのか、言いたい放題だ。 則道はというと顔をし かめながら僕の顔を見た。 妙里はクラスの人には石の事は少しも話さなかった そうだ。 でも久美さんには別だった。 ベラベラとまぁ良く話すこと。 則道 は時々出る「お化け」の言葉にビクビクしている。

「この石、7つ集めたら願いが叶うとか〜、あ、石割ったら妖精出るかもねっ 」

 そんな事あるかい。僕は布団を被って俗世間の喧騒を遮断した。


(ねこかず)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2281より転載>

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