第16話〜石の住人〜


 僕はしばらく何が起きたのかわからず、青い石を握りしめたまま宙に浮いて いた。 石の発光は収まる様子もなく、部屋を青く染めていた。 数秒ほどの時 間が経過してから、やっと僕は我にかえった。

「お、おおい、ノリミチっ、なんとかしてくれっ」
「な・・・なんとかしてくれって言われても・・そだ、取りあえず石を手から 放すんだ! た、妙里っ、カーテン閉めろっ!! 」

 僕は、このいまいましい石をふざけんなよと言わんばかりに床にたたきつけ た。僕はベットの上に墜落した。 直りかけの身体が軋む。 と、さらに奇妙な ことが起こった。

「わぁああっ、可愛いっ!!」

 妙里が叫ぶ。 いったい何と形容したら良いのだろう。 床にたたきつけた 石から、光りと同じ色した人ガタの、背中に羽の着いたちび、そう、たぶん、童 話の世界では妖精だの、小人だの、化け物だの言われる類のものが出て来たのだ 。

「うっわ・・んぐっもがっ」

 絶叫しそうになった僕の口をノリミチが慌てて塞ぐ。

「ししし・・しぃーーーーっ!! さささささ、騒ぐと人が来るっ、まままま た面倒が起こる!!」

一見冷静そうなノリミチだが、どもりが出ているところを見ると彼も相当驚い ている。 いや、よく見ると、顔から水でもかぶったかの用に汗がしたたり落ち ている。
 その”妖精”は、全身を青い光りに包まれていた。 見た目年齢不詳、男と も女ともつかない顔つき、背中にはトンボのような薄羽がついている。 白人の ような顔つきの妖精はまるで今の今まで眠っていました、とでも言いたげな眠そ うな目で僕の顔を見つめて、まるで寝ぼけているかのような口調で口を開いた。

「・・・・・・・・か・・・・ず・ひ・・ろ・・・・もち・・・ぬし・・・手 ばなし・・・・ても・・帰る・・・かならず・・ねむい・・・わたし・・・・も ちぬ・・・し・・えらぶ・・・・もちぬし・・・たすける・・・・・眠い・・・ わたし・・・・目覚める・・・・とき・・・・たいへ・・・ん・・な・・とき・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ZZZ・・・・・・」

半寝の妖精はようやっとこれだけ告げると再び眠りに落ち、光りが消えた頃に はいつも通りの青い石が床に転がっていた。

「・・・・・・ぅぅぅぅぅあぁぁあああああああああああああああ〜〜〜!」  

叫ぶなと言った張本人が大絶叫している。 忘れてた、ノリミチは見た目に似 合わず、霊とゴキブリは大の苦手だったんだ・・。 ご愁傷様。 妙里は妙里で 目をウルウルさせて呆然としている。 まるで、憧れの芸能人に思いもよらず町 で出会ってしまったような感じだ。
 バタバタと忙しい足音がする。 ノリミチの叫び声で何かあったのではと慌 ててかけているのだろう。 息を切らした主治医が床に座り込んで抜け殻のよう になっているノリミチの顔をペチペチ叩きながら一体何が起こったのかと聞いて きた。

「う・・・・・あっああおっ・・よっよよよよ・・うぅっっ・・」

はぁ〜。 だめだこりゃ。 再起不能じゃん。 見た目怖い物無し見たいな顔 して、人間以外な弱点があるもんだ。

「なんか幽霊見たらしいっすよ。ノリちゃん、こーみえてもお化け大嫌いだか ら・・TVの特集も怖くて1人じゃ見られないんですよ〜あはは〜」

医者はぎくっとした顔つきで僕を見た。

「・・また出たのか。ここは重症の方がよく入院する部屋だから・」

・・・・・先生、そうゆうことはもっと早く言ってよね・・・・。 先生はノ リミチを叩き起こすとそそくさと部屋を出ていった。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2278より転載>

あらすじ 外伝紹介 相関図

この作品のに関するご意見、ご感想は・・・