第14話〜希望〜
「あのさぁ・・」
見舞いの二人が帰った後、ノリミチが照れくさそうに切り出した。
「お前の怪我が直ったら・・ライブ・・やろうよ・・」
思わぬ申し出に僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。
「・・・・・・・俺とじゃ嫌か・・」
あの日のことを気にしているのだろうか。 僕はびっくりしただけだよと告げ
て、即座に賛成の意をノリミチに伝えた。 しかし、問題がある。 なんせ僕ら
のバンド、結成して今年で3年目になるのに、今だ名前が無いのだ。 それにメ
ンバーも気づけば二人。 昔はもっといたのだが、他のメンバーは皆先輩達だっ
たので次々と卒業していってしまい、気づけば二人きりのユニットになってしま
った。 まあ、それも良しとするか。
「でもよ〜、メンバーどーするよ〜〜かずひろぉ」
ほとほと困ったような声。どうしよう・・何か良い手は・・そうだ!
「パソコンがある!」
「へ!?パソコンでいったいどーするのさ、第一あんなでかいのどうやっては
こぶんだよ。」
「ほら、阿久津兄姉がさ、ノートパソとDTMソフトもってたから、それを使
わせて貰おうよ。打ち込みとギターだよ、今流行ってる奴。これで初期のB’z
のカバーなんてどーかなっ」
ノリミチがにやけている。
「ほ〜 阿久津兄姉ね〜 なるほど、これで夏姫嬢に近づく口実ができるとな
、ふんふん」
ちっ、図星だ。さすが親友、あなどれん。でもありがとう。親友の提案で僕は
久々に明日を待つのが楽しみになった。
あの日、確かに石が光ったあの日、確かに僕は眠りから目覚めた。 でも身
体のダメージは相当な物だったらしい。 なかなか退院の許可が降りない。 入
院日数と比例するように僕の精神は明けない夜の如く深みにはまっていった。
でも、もう大丈夫。僕はどうやら夜明けの方向を見いだせたようだ。
(SUM)
<PC−VANサークル「カフェテリア」#2237より転載>
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