第11話〜現(うつつ)ぞ夢か〜


 一瞬の衝撃の後、視界は赤に支配された。 人工的な赤だ。 僕は意識を集 中してみる。 今の状態を知りたい。 人・・・人なのか?此の感触・・・・・ 誰だ? 人か? それとも・・・いや、意識で感じた。 これは自分で掴んだ僕 の腕だ・・・。
 けたたましいサイレンが鳴る。 急に広がった僕の視界に大きな水晶の固ま りが飛び込んだ! そして誰かの声が聞こえた。  

「お前・・・なんて事を・・・・・・・・・・!!!!!」

 気がついたらパソコンに”長い間応答が有りません。通信を続けますか?” という文字が出ていた。 夢か・・・僕は寝ていたのか・・それとも・・・   僕はとっさに胸元から石を取り出した。 光っている・・でも、段々薄れていっ て、ついにはいつも通りの青い石に変わった。 メ〜ルは・・1通だけ消えてい た。

 則道と僕はいつも通りの授業を受けて、いつも通り屋上で購買部のパンを食 べたいつも屋上は僕たちだけしか使わない。 本来屋上にはいってはいけないの に、特別に同好会の練習の名目で鍵を貰ってある。 今日も快晴。 コンクリの 冷たさと日差しの暖かさの差が結構好きだ。
 そして相変わらず一通り煙草の利害の、判決の出ない裁判をして僕が通信を している事を話した。 夢の話は・・・しない方が良いに違いない。 そうだよ 、単なる夢だよ。 石が光ったのも、名前の無いメ〜ルが消えたのも気のせいさ ・・・。

「通信かぁ面白そうだな。」

 僕は一通り通信の加入の仕方を教えた。 きっと乗り気になってくれるだろ う。 則道は立ち上がっていつも通り煙草の吸いがらを中庭に投げ入れた。 今 日は放物線を描かなかった。 柵から手だけを伸ばして自由落下の法則を証明し た。
 僕の夢は又嫌な夢だった・・ような気がする。 あの大きな水晶・・のよう な物は・・僕の胸元の石に似ていたような・・・。
 暫く下を覗いていた則道は言った。

「なぁ、今が夢だったら良かったと思う事ってあるよな。」
「ん?んん・・。」
「先公が沢山、下にたむろしていやがった!!やべ〜ぜ!」

 げげっ!!
 床に足を取られそうになりながら僕たちは急いで此の危険な場所から逃げ出 した。

 たむろしていた理由が分かったのは放課後だった。 煙草の件は恐らく気づ かれていないと判断した僕たちは同好会の活動をしようと部室に向かって警官の 壁にぶつかった。 この部室は校舎と離れていて、色々な部室が集まる専用の建 物だ。 放課後まで警察に気がつかなくてもおかしくない。

「あの〜此処使いたいのですけど・・・」

3人いる内の警官の一人は言った。

「駄目駄目。・・ん?君は岩館和博君だね?」

そう言って、いぶかしげにみえただろう僕を部室に連れていった。

「授業が終わってから事情を聞こうと思ったからね。」

・・・事情? こっちが聞きたいよ。 なんでおまわりが居て、部屋の中に人 型の白線が有って、番号書いてある・・・・・・・おいおい、これはまるで・・ ・。 誰が此処に倒れていたんだ?! 僕が問う前に警官が間接的に答えてくれ た。 

「道雄さん・・つまり君お叔父さんがなんで此処に用事が有ったのかね?」


(ねこかず)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2220より転載>

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