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雪滑稽古風景
(ゆきすべり・こっけい・けいこ・こふう・ふうけい)
Skitch=Ski+Sketch
【びっくり】
自然から学ぶことは多い。
雪なし地域のいわきの人が、雪上に立って、景色を見て、スキーをやることで、いろいろ学ぶことは格別の感がある。
雪なし地域のスキーヤーが、四十年もスキーをやっていれば、スキーの操作は簡単になる。
スキーイングの爽快感は別としても、雪なし地域のスキーヤーがスキー場でみた光景で、雪が解けても、理解ができないスキーヤーの行動を見ることが多く、スキー場のチェアリフトやゴンドラリフトのシート、スキー行からの帰り道の車中、そして帰宅してからの話題では、スキーを何倍にも楽しむことができる。
雪なし地域のスキーヤー栗胡桃太郎は、今シーズンからスキーの基地を山形県栗子国際スキー場から、栃木県那須にある、Mt.JEANS那須スキー場にスキーの基地を遷し、那須桃太郎と自称している。
Mt.JEANS那須スキー場では、平成十六年三月三日(水)のひなまつり≠ノ因んで、特別イベント、レディスディ≠ェ企画されていた。
「女性限定、ゴンドラリフトとチェアリフトを一日無料のサービス」である。
スキー場開き、全リフト無料≠ナ滑られるということにつられて、雪なし地域のスキーヤーが行って来たという話を今まで聞いてはいたが、桃太郎は、現在まで、その特点を利用したことがなかった。
桃太郎一家の伴侶の胡桃、娘の小桃の二人は、勿論、女性なので、これを利用しない理由はないと思った。
今シーズンの桃太郎は、スキーをしていた従来の場を去り、スキーをする場を遷すことを余儀ない事態となったことにより、新境地での再出発の記念にと、Mt.JEANS那須スキー場のシーズン券購入を決意した。
オープン十周年記念ということで、リフト搭乗券を半額で購入できる券の五日分がプレミアムになっていたので、桃太郎の伴侶の胡桃と娘の小桃の二人は、その券を活用していたので、今シーズンは比較的に安価なスキーを楽しんでいた。
安価にスキーをやることのスキーライフスタイルになじんだから、なおのこと、三月三日(水)の「女性限定、ゴンドラリフトとチェアリフトを一日無料のサービス」を利用することになった。
早速スケジュールの調整をした。
昨年は、娘の小桃が大学受験の年のために、恒例の年末年始スキーを休止し、今年も、あれやこれやと日程が合わず、延期していたファミリースキー行を、平成十六年三月二(火)、三日(水)の一泊二日とした。
今シーズンは、いわきスキーフレンズのイベント、スキーキャンプには、伴侶の胡桃と共に二人で参加というのが、二回もあったが、桃太郎一家の三人が揃っての、ファミリー・スキー・キャンプの実施は、一年振りとなった。
キャンプといっても野営ではなく、栃木県那須町、ホテル・フロラシオン那須に一泊である。
初日は、朝の八時、朝日桃山城から桃太郎三世号で出発、常磐自動車道や磐越自動車道を利用しないで、栃木県那須にあるMt.JEANS那須スキー場に行って、スキーをやり、スキーが終わったならば、ホテル・フロラシオン那須に移動、宿泊し、翌日の二日目は、再び、Mt.JEANS那須スキー場にホテルから直行という行程である。
初日のスキーは、天気薄曇り、比較的寒い、雪質はアイスバーン上に、前日までに降った雪が被った状況、まあまあのコンディションであった。
午後から雪が降りだしたものの、日帰りの行程でないことから、十六時ごろまで、スキーをゆったり楽しくやった。
小桃のスキー技能の上達には、目を見張るものがあった。
桃太郎のゲレンデでのスキー技術のアドバイスに添え、伴侶の胡桃と娘の小桃がペアチェアリフトに一緒に乗っていて、スキーに関してのアドバイスが功を奏していたのである。
スキーを終えて、Mt.JEANS那須スキー場を引揚げ、ホテル・フロラシオン那須に着いた際、雪が降っていたので、ホテルのボーイが傘を持って迎えに出たのには、ちょっと戸惑いを感じた。
雪の中でスキーをやってきたし、スキーウェアを着たまま、着替えをせず、帽子もかぶっている姿でスキー場からホテルに直行したからである。
ホテルのボーイに、「傘はいらないですよ。」と云ったのだが、マニュアルどおりなのか、雪の中で耐えるスキーウェアを着ているということの意味を理解していないのか、無頓着なのか、気にもせずに傘をかざしていた。
ホテル・フロラシオン那須は、車からの荷物運搬、フロントでのチェックインの状況、ルームの案内、施設の説明は、丁寧すぎるほどで、十分に満足する内容の接遇を受けたと感じた。
過剰ともいえる接遇には、戸惑いもあるのだが、優越感をくすぐられるので、快感に浸れるためかも知れない。
今シーズンのいわきスキーフレンズのイベント、スキーキャンプでの二回の宿泊が、予想外に期待をしてがっかりしていたことと、昨シーズンまで永く利用していた栗子ホテルバレーブランシェの横柄な接遇に諦めていたからかも知れない。
苗場プリンスホテル、志賀高原のプリンスホテル、最近では、蔵王アステリアホテルを利用して以来の爽快さであった。
エントラント、ルーム、レストラン、風呂など、設備が良く、これまでのスキー場のホテルの窓から見える景色も異なっていた。
ホテルの窓からは、黒磯市の街のあかりが木立を通してチラチラ見えた。
朝になって、ルームのカーテンを開けると、楢の樹林が前景にあって、その向こうは、牧場であって、放牧の馬が散歩していた。
二日目の三月三日(水)には、Mt.JEANS那須スキー場の駐車場に、「女性限定、ゴンドラリフトとチェアリフトを一日無料のサービス」の効果で、自分で運転して走らせて来たようなレディススキーヤー・ボーダーの自動車が多かった。
エントラントにあるエスカレータの通路に行くと、目の前には、背がすらっとして目立つ、若い女性が二人でエスカレータに乗るところだった。
目立った理由に、二人のスキーファッションにもあった。
二人の彼女達を見た瞬間に、桃太郎は振り向いて伴侶の胡桃と顔を見合わした。
伴侶の胡桃は、目を丸くしていた。
エスカレータに乗った、若い二人の彼女達の姿を後方から見上げると、遥かに遠い日々の良きスキー全盛時代を懐かしく思い出すことになった。
スキーブーツの内側におさまっている白いタイツタイプのスキーパンツ、白いふわふわ毛の縁取りの頭巾が附いてウエストを絞った花柄のスキーウェア、縁取りがあってサンタクロースがかぶるような帽子、ヘッドフォンタイプで白色ボア附きのイヤウォマー、そしてウエストポーチというファッションである。
輝くように保存の良い白いスキーブーツ、そして、新品か、もしくは、クリーニングが行きとどているスキーウェアである。
アーリースキーヤースタイル≠ニでも分類しておこう。
私をスキーに連れてって≠フ再現であった。
ユーミンのメロディが流れれば、一九八〇年後半から一九九〇年前半に戻ったような錯覚におちいる光景であった。
原田知世、原田貴和子、高橋、三上寛の顔と、SALOTのスキーブーツが浮かんで、ぼうっとした。
ロビーに行くと、一日のゴンドラリフトとチェアリフト無料サービス目当てのレディススキーヤーが、いるいる、いっぱいいた。
年齢が片手にもならない少女から、六回も年女になった婦人もいる盛況ぶりであった。
五回ぐらいをクリヤーした年女のスキー姿の群が一列に並んで、胸にプレートをつけていた。
駐車場に、大宮ナンバーの大型バスで乗り付けていた団体での方々であった。
バスから降りた際には、温泉場でないのに何でこんなところに観光客と思った方々であった。
那須温泉に来て、ついでにスキー場でも観にきた団体かなと思っていたが、やはり、一日のゴンドラリフトとチェアリフト無料サービス目当てレディススキーヤーだった。
二日目のスキーの始まりも、初日と同様に、ゴンドラリフトで頂上まで登ってから一気に滑り降りる。
クワッドチェアリフトで登り、サンアップコースを滑り降りる。
桃太郎一家が、スキートレーニングするのには、相応しい斜面としているホウスバックストリートに行った。
同じ斜面で、滑っては降り、チェアリフトでまた登るというスキーを繰り返していた。
チェアリフトで斜面の上を見ると、あのアーリースキーヤースタイルという二人の彼女達が、いまや滑り出すところだった。
スキーブーツの内側におさまっている白いタイツタイプのスキーパンツ、白い縁取りがあってサンタクロースがかぶっているような帽子、ヘッドフォンタイプの白いボアのイヤウォマー、そしてウエストポーチを附けているのも二人共に同じであった。
ただ、白いふわふわ毛の縁取りで頭巾が附いて、絞ったウエストで花柄のスキーウェアは、青色地と黄色地というように異なっていたので、二人を区別することができた。
ホウスバックストリートの斜面は、緩急としては中位の斜面なので、スキー経験者には、誰もが容易に滑り降りられる斜面である。
この日の斜面の状態は、昨日の夕から夜にかけて降った雪が少々あったが、今朝にかけて冷え込みの厳しさの影響で、アイスバーンになっていた。
アーリースキーヤースタイルの二人の彼女達は、プルークボーゲン程度の技能という滑りをしていた。
初級者同士の友達が、二人で久しぶりのスキーを楽しんでいると見えた。
ところが、二回目滑走から、アーリースキーヤースタイルという二人の彼女達の、絞ったウエストで青色の地に花柄スキーウェアの方の一人が、チェアリフトの真下の斜面に作られている人工的なコブのラインのスタート地点に立った。
先ほどのプルークボーゲンは、初級者程度の技能で滑っていたのではなくて、ウォーミングアップの足慣らしをしていたのかと思った。
間もなくコブに向かってスタートしたが、コブの一つ目の凹部に入り、凸部にさしかかったとたんに、スキーを雪面から天に向けて舞い上がってしまい、すぐに尻から雪面に落下した。
起き上がり、二つ目のコブに向かって再スタートした、凹部に入って、凸部になると、またスキーを雪面から天に向けて舞い上がり、尻から雪面に落下した。
また、起き上がって、三つ目のコブに向かって再々スタート、凹部に入って、凸部では、またスキーが宙に浮いて転倒した。
コブの個所をやめて、整地された斜面に戻るのかと思っていたら、また、起き上がり、四つ目の凹に向かってスタート、凸部で、スキーが宙に浮いて転んだ。
七転び八起きというか、七転八倒の様子。
七転び八起きも、七転八倒も同じことだが、そう重複して表現の必要がある場面であった。
斜面の裾に辿り着いて、いまの七転八倒のコブを振り返ってみていた。
何を鼓舞しているのだろうと目を疑った。
(この絞ったウエストで青色の地に花柄のスキーウェアの彼女を略称でESSYLBとする)
なんと驚くなかれ、この、ESSYLBは、この後、チェアリフトで斜面の上に戻り、また、コブのスタート地点に立ったのだ。
そして、一つ目の凹部に向かってスタート、凸部でスキーが宙に浮き、尻から雪面に着く、転倒する。
またまた七転八倒の掛け算、五六んとしていた。
転んではその都度にスキーがはずれて、再装着を繰り返す。
転倒して、スキーの再装着を転倒したコブの手前の凹部でやっていて、なかなか避けないときが多く、別のスキーヤーが、後方でスタートを待っていて、滑り降りたいことを邪魔しているのだが、まったく気にするようすはなかった。
転んでしまって、一つのコブを通り越した際に、片方のスキーを凹部に残したときがあった。
起き上がって、整地の斜面側に移動を始めたので安心していたら、片方のスキーを装着した状態で、整地斜面の位置から、スキーを拾おうとして、持つストックの腕を伸ばし、コブの凹部に残したスキーをストックで引っ掛ける方法をとっていた。
スキーをストックで引っ掛けようとするのだが、スキーが装着していた片方のスキーが滑ってしまい、後方へ下がってしまう状態になって、コブの凹部に残したスキーからは離れるばかりだった。
再びコブのところに寄り、凹部に残したスキーをストックで引っ掛けようとするが、スキーを附けた脚側が後方へ下がり、離れるばかりとなる。
繰り返す。何回かを繰り返す。
やっとの思いで、スキーを手元にして、スキーを装着することができて、越してきたコブ斜面見上げ、何を思っているのか、しばらく見ていた。
転んで起き上がっては、スキーパンツの尻や腰の部分に附いた雪を丁寧に振り落とし、小さい雪は、手袋を脱いで、雪を摘んで、払っていた。
滑っている時間よりも、はるかに雪と体を接していた時間の長いスキーヤーである。
スキーの上達は、長い距離を滑ること、長い時間を滑ることという極意があることはあるが。
桃太郎は、エントラントのエレベータ付近での、私をスキーに連れてって≠フ再現に、びっくりで、また、傘をさした小野道風と柳に跳び上がる蛙の絵を連想してしまうように、何度もコブの斜面に挑戦スキーヤーに二度目のびっくりをした。
チェアリフトに乗っていた、桃太郎一家の以外のスキーヤーからの視線もあることは知っているようだった。
転んでも悪いことはない。
見られていることを気にしていないのだろうか。
見られることを意識していてのことだろうか。
それとも何か特別な意識を持ち過ぎなのだろうか。
コブでの場面の話を、伴侶の胡桃にしてみると、「わたしも見た。どうも、何か、勘違いをしているような気がしてならない。」と言った。
続いて、「スキーブーツの内側におさまっている白いタイツタイプのスキーパンツ、白いふわふわ毛の附いた頭巾があって、ウエストを絞った形で花柄のスキーウェア、白い縁取りがあってサンタクロースがかぶっているような帽子、ヘッドフォンタイプの白色ボアのイヤウォマー、そしてウエストポーチというファッションの彼女に、たまたま、トイレの鏡の前で隣り合わせになったのよ、その時に、彼女、鏡に向かって自分を写して、ヘッドフォンタイプの白色ボアのイヤウォマーを、上に下に、前に後へと、位置を確かめるようにしているので、そんなに気にしてどうしたのだろうと思っていたら、サングラスをはずしたので、顔も見たけど、意外にも美人で、和風な感じだけど、他人に見られることには慣れているようで、ますます他人を意識をするかのように、イヤウォーマーの位置を、前へ後に、前に後ろにと、位置をづらしては鏡で確めて、私が見ているのが、イヤウォーマーをつけていることを、羨ましいと、思っているようにも感じたのよ。この彼女は、何か勘違いしているのと思っていた。ああいう女の人は珍しかった。」と伴侶の胡桃は言った。
「コブでのスキーも、びっくりしたわね。」と、三度もびっくりしたことを言った。
「コブで転んでいると、男性スキーヤーが来て、『お嬢さん大丈夫。』と言って、手を差し出して、起こしてもらえるシーンを夢みていたのではないの。きっと、白馬にまたがった王子さまが出現するのを期待していたのよ。」と付け加えた。
「私をスキーに連れてって≠フシーンに、そういう場面がなかった?」と小桃が言った。
桃太郎も唖然とした。
しかし、あのコブ斜面のケースでは、上手そうなモーグラーのようスキーヤーもいたが、転んだのを起こしてもらえるような展開にいたることはなく、転倒シーンを避けて通っていた。
アーリースキーヤースタイルという二人の彼女達のうち、もう一人の、ウエストを絞った黄色の地に花柄のスキーウェアの方が、ホウスバックストリートの整地斜面を、プルークボーゲンで、バランスを上手くとって、安定して滑っている。
青色地が黄色地を誘ってスキーに来たのだろうか。
「私がスキーを教えてやるから、私をスキーに連れてって」と言って二人で来たのだろうか。
ホウスバックストリートを一回目に滑走した際に、緩急としては中位の斜面なので、誰もが容易に滑り降りられる斜面なので、差がなかったので難易度のある不整地のコブ斜面を選択したのだろうか。
地上では、青色地が黄色地に対して、相当に威張っていたが故に、そのプライドが許さないのかとも思った。
慣れなくとも、斜度と速度の対応に強い人がいる、コブも、度胸だとやっぱり思ったのか。
スキーの技能もないが、気力はある。
でも無理がある。
スキーで苦戦して、もがいている状況はいろいろだ。
一度やりだしたらやめられないカッパエビセン方。
一度負けたら二度とは負けたくない方。
一度言いだしたらきかない方。
スキーでは、自分のスキーの操作が斜面に対して適応しない場合には、ギブアップも必要だ。
急な斜面をスキーで滑るには、ある程度の技能を要するので、初心者には転倒の回数は多くなるが、スキーの転倒では、緩やかな斜面より、より角度のある斜面の方が体への衝撃が小さい、分力と滑りがあるので、転倒の際に衝撃が小さいのが物理である。
滑っているときよりも、転んだ際に負傷が多いのが普通であるが、負傷の様子もなかったのが幸いであったが、相当な痣の数は想像できる。
数日前に、このコブ斜面をレディスのモーグラーが、一人で来ていたようだが、スローながら上手に滑っていて、自分で自分のビデオ撮影をしていたという場面があって、素晴らしいスキーヤーもいるなと感心していたのに、この日のESSYLBの滑り、ゲレンデには、話題が溢れていると思う一日だった。
いくら、地上の星でも、雪上の星にはなれない。
スキーでは、びっくりすることも楽しみであるが、別なことでびっくり仰天したスキー行でもあった。
こんなスキーヤー見たことない。
いや、似ているスキーヤーを見たことがある。
佐渡のスキーヤー、浜ちゃん以来と思った。
びっくり≠ニは、不意のできごとに驚くさまで、はっとして、こころがわずかに動くほどである。
びっくり仰天≠ニは、びっくりを超え、こころが浮揚するほどである。
「また、いっしょにすべりましょう」と、言われることは、スキーヤーとしては勲章ものだ。
スキーの技術と技能の習得するのは目的ではなく、手段である。
雪上の一日で生まれた出会いの人。
雪なし地域のスキーヤーがスキーを通して出会った方々は貴重な存在、手に入れた宝は、鴎盟の友。
「いわきスキーフレンズ」と命名して良かったと思う二十年。
スキーは心身のバランスを保つ比類のないスポーツ
いわきスキーフレンズ 那須桃太郎
2004年 3月 5日 記
2004.3.15(載)