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雪滑稽古風景
(ゆきすべり・こっけい・けいこ・こふう・ふうけい)
Skitch=Ski+Sketch
雪なし地域小学生卒業記念スキー旅行助っ人になったいわきスキーフレンズ
自然から学ぶことは多い。
雪なし地域のいわきの人が、雪上に立って、景色を見て、スキーをやるということで、いろいろ学ぶことは格別の感がある。
雪なし地域のいわき南部第六小学校六年生がスキーを楽しむ二日のスキー行は、平成十六年二月二十一(土)、二十二日(日)に催行された。
このスキー行事は、いわきスキーフレンズの二代目会長であった眠梨三四郎が、自分の長女が通学するいわき南部第六小学校のPTA六学年委員長であることで、おもいでつくり≠ニいうのための行事に、「小学生卒業記念スキー旅行」を企画したものだ。
以前は、いわき市内の小学校が盛んにやっていたが、現今、学校で主催する宿泊訓練でスキーを計画する学校が減ってしまっている。
スキー行事で不測の事態が多かったのか、学校側が責任問題から及び腰になっていて、学校長は計画を反対、学校側関係者は参加回避するという状況で、PTA役員の学年父兄主催という勇断の決行である。
PTA役員同士に、眠梨三四郎(全日本スキー連盟基礎スキー準指導員)と元いわきスキーフレンズの会員であった黄金川嵩雪(全日本スキー連盟スキー技能検定二級長野県)の二人がいたこともスキー行を卒業記念の行事にしたようであった。
その際にスキーの指導を、いわきスキーフレンズのスキーインストラクターに要請があったのは当然の成り行きに感じた。
いわきスキーフレンズの現会長(三代目会長)で、黒潮牛若丸(全日本スキー連盟基礎スキー指導員)、只見金太郎(全日本スキー連盟基礎スキー準指導員)、有歩州這路(全日本スキー連盟基礎スキー準指導員)、半日双六(全日本スキー連盟基礎スキー準指導員)、そして初代会長で栗胡桃太郎改名した、那須桃太郎(全日本スキー連盟基礎スキー指導員)の錚々たる五人が助っ人となった。
初日は、朝七時、小学校前からバス二台で出発し、常磐自動車道勿来インターチェンジ、磐越自動車道会津坂下インターチェンジで、会津自然の家に着き、準備のあと、会津坂下町町営スキー場で導入スキー、会津自然の家に宿泊し、二日目は、フェアリーランドかねやまスキー場という行程である。
会津自然の家では、開会式、オリエンテーションが行なわれた。
指導員を代表して、「スキーというのは、スキーという道具を操って、雪上を移動することが目的です。スポーツとしてのスキーは、ある高い場所から低い場所へ滑り降りる実体感は、それぞれ、技能の違いがあっても、爽快感を得られることでは、全く共通しています。いわきスキーフレンズの指導員としてみなさんがスキーを好きになっていただくよう精一杯の努力をします。」と那須桃太郎が挨拶した。
いわきスキーフレンズが指導するスキーは、雪なし地域のスキーヤーに合理的なものとして伝達できるように努力しているということを云ったつもりだ。
小学生全員が体育館の床に、すわらせられて≠「てのオリエンテーションを受けていた。
労働争議の座り込み≠フような姿でいるので、挨拶の前に、「みなさん立って下さい」と云った。
そして、「脚を広げて、手を高く上げ、背伸びをしてください。あくびでもいいです。」と云った。
長時間の膝抱えお据わり≠ナ、体の向きは様々になっているし、オリエンテーションの行う重要な方向づけ≠フ意義がなくなっている。
犬、猫などは腰痛がないという、次の行動の移る場合に、関節等を伸ばすため、伸びをして、整体をしてから行動するからである。
近年の教育の場で、膝抱えお据わり≠ェ、教え育む関係をこういう関係で仕切っているのが、学力の低下、体力の低下の一因とおもっていたからだ。
しかし、此方がせっかく起たせたのに、次の話にはまたすわらせた。
学校で教師がやる行動をPTA役員も考えなしに真似をしている。
幼稚園までぐらいは、行動の規制をかけないと、かってに動いてしまうので、膝抱えお据わり≠フ指導をしたのであろう。
膝抱えお据わり≠ヘ、やっても幼稚園までだとつぶやいた。
坐わるとは、すわる。自ら安定のための行なう。
据わるとは、すわらせる。落ちつかせる。
PTA役員も膝抱えお据わり≠フ世代なのかと思った。
いわき駅前の歩道、階段、コンビニエンスの前、いたるところで、すわる℃瘤メが多い。
教育の荒廃に対する抗議のスタイルなのかも知れない。
会津坂下町町営スキー場は、予想どおりの田舎のスキー場であった。
スキー講習のグループ編成は三段階。
中級者は、黄金川嵩雪、半日双六。
初級者は、只見金太郎、有歩州這路。
初心者は、黒潮牛若丸、眠梨三四郎、那須桃太郎が受け持った。
グループ編成は、既に決まっていた。
中級者といっても、五日以上の滑走日数ぐらいで、初級者は、五日未満の滑走日数、それも一日以上ということで区別したようだった。
グループ編成する場合の、区別するのは指導する場合の重要なポイントである。
男女、体格、体力、これを考慮しないでの区別は、指導に影響が大である。
初心者は、まるっきり初めてということで、服装、スキーブーツの装着、スキー用具の名前、取扱い、ビイディングの取扱い、ストックの持ち方の指導からだ。
那須桃太郎が受け持ったのは、女子児童が九人の初心者である。
食堂前に整列したときは、男子児童もいたはずが、雪上に移動する前に、眠梨三四郎のグループに合流してしまったようだった。
眠梨三四郎は、PTA役員で見慣れていたので、其方の方の指導を選んだのか、女子児童と共に指導を受けるの嫌ったものと割り切って、指導を始めた。
ヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリン、イメルダ、エリザベス、ビクトリア、ダイアナ。
スキーブーツのままの雪上歩行、片脚スキーを履いての平地の歩きを交互に練習する。
両スキーを履いての平地を歩行、そして、雪上に8の字を描くように歩くなど、スキーの長さを実感、雪上での平地歩行を慣れてもらうという一連の導入を行う。
この練習までくると、先ほどまでは、四苦八苦の状況から抜け出し、「早く滑ろう、早く滑ろう。」と言い出す。
横歩きを教える、模範動作をしながら「脚を横に開いて、踏み出した側に、残した脚を寄せて揃えて直立し、また脚を開きだして・・・・」とはいうが、初心者には以外に難しい、開き出した脚を越えて、残した脚を運びだすことがある。
歩行で前進する場合の交互に脚を使う仕草である。
「カニのように横に歩いて」と簡単にいうことがあるが、カニの歩き方を観察していたものが全員でない、ヒトは、カニのように脚が多くなく、カニの歩き方のとおりでもない。
指導者の言葉として不適切であるともおもった。
方向転換の仕方、後方開き、前方開きを指導する。
平地から少し角度のあるの斜面に移り、スキーを並行にしたまま、直滑降で自然に停止できるような斜面を選んで滑らせる。
滑り出すが、そうやすやすとスキーを操れる子供は多くない。
「転んでもいいんですか?」という質問があった。
なんてこった、転ぶのに許可を求めているのか、評価でも気にしているのだろうか。
やってはだめ。失敗するな。成功教育の産物か。
「転んで悪いことはない。転びそうになったときは思い切って転びなさい。女でも男らしく転びなさい。なぜかというと、転んで体の筋力を緩めると、関節が捩れてしまう、転ぶ瞬間には体を硬直させることが身を護る。」ということを教える。
かつて、スキーの先輩に「転んだ分だけ、スキーは上手くなる。」などと教えられたが、転ばなくて上手になったほうが良い、転んだ際には負傷の場合もある。
バランスを上手くとって、安定して滑っている、スウジィを真っ先に誉めた。
「うまい、うまい」と手袋をとって拍手で称えた。
「テニスと同じですね。膝と肘を軽く曲げ、脇を締めると上手く滑れる。面白い。楽しい。楽しい。もっと滑ろう。」と嬉しそうにはしゃいでいる。
指導者のフォームを頭に入れて滑り出し、何かに共通点を見つけて、それをもとにして工夫している。
素質があるのだろう。
すぐに、ヒラリィとマーガレットが、バランスを上手く保って安定して滑られるようになった。
「うまい、うまい」とその度に拍手で称えた。
しだいに、斜面の角度を上げ、長い斜面に変え、滑走距離を伸ばした。
会津坂下町町営スキー場の斜面は、緩く、短く、雪質が柔らかく、速度が出ない斜面であった。
滑走性が初心者には適正なのかもしれない。
少し長い滑走距離とはいっても、斜面の中間からであるので、完走する児童もいる。
筋が良い児童は、スキーをはずしては歩いて登り、出発個所に戻って再スタートし、滑走を繰り返す。
それでも、途中で転んでは起きての繰り返しで、めげずに頑張る児童もいるが、ときには起き上がれない児童もいるので起こしてやっては滑らせた。
努力しているのだ、努力できるのも才能とは良くいったものだ。
このスキー場にはチェアリフトが無い、変則的なロープトウだけである。
「リフトに乗りたい」とせがむが、初心者には、ロープトウは難しい。
滑りたい児童は、スキーをはずして斜面の裾から登らせる。
滑っては登ることを繰り返す。
しかし、転ぶ度に、大声で「せんせい、せんせい、せんせいってばっあ。」と呼びつけて起こして貰おうとするのは、ビクトリアだ。
起きることも練習と、手を貸さないの原則だが、状況により、執拗に呼ぶので、仕方なしに起こしてやる。
「せんせい、おじさんは、豪邸に住んでいるの。」と小学校六年の児童が質問にびっくりする。
「ダンボールのうちにすんでいるよ。」と返答をすると、ビクトリアは、流し目をするような顔で、間をおいてから、「まあ、いいか、おこしてっ!」と言う。
両親とか、小学校の先生は、何を教えているのかと疑問になった。
気温十二度という会津地方では異例の暖かさに、小学生も指導者も汗だくであった。
頑張ったご褒美として、アクエリアス、森の水を一本づつあげた。
初日は、終了時間の十五時三十分頃まで滑った。
児童が、自信に満ち溢れて、明日のスキーには、本人達も指導している此方も期待を持った。
宿泊の会津自然の家では、他の少年団が同宿し、深夜に廊下を走りうるさかったが、当たり前だが、いわき南部第六小学校六年生は、廊下を走るものがいなかった。
二日目は、フェアリーランドかねやまスキー場に移してスキー指導を開始した。
きのうの、会津坂下町町営スキー場で受け持っていた児童は、女子児童の、ヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリン、イメルダ、エリザベス、ビクトリア、ダイアナという、九名のはずだったが、今朝からは、そこに男子が四名が加わって十三名となった。
きのうのグループ分けの際に眠梨三四郎のグループに合流していた男子児童のようだった。
このスキー場は、会津坂下町町営スキー場と異なり、いろいろな斜面がある。
午前は、滑ることに慣れることを重視する。
リフトに乗ることができるようにしなければ展開がない。
スキー場の全体を見せ、なんのためにスキー技能を修得の必要があるかということを知ってもらうことである。
スキー場斜面の裾の一部を見て、体験しただけでスキーの概念を決めるのは、上達の妨げである。
緩い斜面では上手く滑っているが、少し急な斜面にかかると腰がひけて、動けなくなってしまう場合の人が多い。
むしろ緩い斜面では苦しんで滑っていた人の方が急な斜面を容易く滑ることがある。
というわけで、斜度と速度に慣れることが肝要で、度胸とは良くいったものだ。
最も下にある超緩い斜面を選び、スキーをハの字形の直滑降である。
初級者にプルークを学ばせることは、成果があるが、初心者にプルークを求めるのは容易でない。
初級グループを教えていた有歩州這路指導員が、突然、斜面の下から「桃太郎さん、その子をお願いします。」と言って、プルークターンがままならぬと男子児童を置いて滑って行ってしまった。
桃太郎さん、わたしもいっしょに連れていって、というフレーズはどこかで聞いたことがある。
また受講生が一人増え、十四人だ。
「午後は、リフトに乗り、山頂に行って、景色を観るのだから、しっかり滑りなれるよう、リフトに乗りなれるように、どんどん繰り返しをしなさい。」と言いながら練習をさせた。
昼食後、「リフトに乗って山頂に行くことにするから、少し早めに準備するように。」と云った。
既に、レストランの外にはもうすぐにも出かけられるような態勢の児童もいた。
「桃太郎、この二人が、頂上へ行って景色を観に行きたいというので、いっしょに行ってもいい?」とダイアナが言う。
「グループの先生は、いいといったの?」
「みんな上に行くといって置いていかれた。」と言う。
初級グループに区別されていたのに、山頂へ行くメンバーからはずされたのかと思った。
そして女子児童が二人また増え、十六人となった。
一時間三十分あれば、このパーティでも降ろせると思った。
山頂へのリフト搭乗は、予想よりスムーズだったのでまずは安心をした。
しかし、頂上で写真撮影をする整列の際に、もう転倒する児童がいるので、暗雲を予感させた。
山頂から、パノラマ景色となる迂回コースをとり、正面のゲレンデを緩い斜面に使って滑り、再び迂回コースで降りる予定である。
迂回コースは、緩やかな斜面でも、幅が狭くて、児童が固まって、団子状に滑り降りるという状況は、追突、玉突き事象になって、スキーのエッジで切傷、ストックでの刺し傷等での不測の事態が予見される。
かつて、桃太郎の娘の小桃が学んだ、いわき市立第五小学校の宿泊訓練でも、会津自然の家(当時、会津少年自然の家)を利用、スキーレッスンでも、このフェアリーランドかねやまスキー場に来ていて、同行している。
小桃は、上手なグループの中でも最もスキー経験があったが、「迂回コースは、狭い幅で、初心者が予測つかない動きだし、前で転んでいる人達が重なり合っているし、恐ろしかった。」と聞いていた。
桃太郎も勤め先のスキー大会で、十年前から毎年来ているので、スキー場の特徴をよく知っている。
第五小学校の五年生の児童がこのゲレンデを多くの初心者が滑り降りている。
このフェアリーランドかねやまスキー場の正面のゲレンデは滑り降りられるはずである。
しかし、先頭集団のヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリンの六人が滑り降りて行っても後続がない。
戻ってみると、エリザベス、ビクトリア、ダイアナの三人がスタート十メートルで、転倒していた。
坐ったままでスキーを装着しようとしているので、スキーブーツとビンデイングが上手くおさまらない。
立たせて、手伝ってスキーを装着し、再スタートするが、迂回路は緩やかだが、幅が狭く感じるのか、腰が引けて、スタートできない状況である。
スタートから三十メートルぐらいは、右側が谷でブナの木があり、左手は、2メートル以上の雪の壁という状況である。
そういう状況なので、どうしても雪の壁の方向へ逃げてしまう、壁に当たって転倒する。
それを繰り返す。
やっとゲレンデに戻ったときは、先頭が痺れをきらして待っていた。
ゲレンデからゲレンデをつなぐ連絡路に誘導し、先頭集団のヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリン、イメルダと男子児童を誘導し、滑らせ広いゲレンデに出る。
一部にやや急な斜面があるが、途中には、平坦になる斜面があるので、勇気を出し、滑り降りるように促した。
急な斜面をスキーで滑るには、高い技能を要するので、初心者には転倒の回数は多くなるが、スキーの転倒では、緩やかな斜面より、より角度のある斜面の方が体への衝撃が分力と滑りがあって少ないのが物理である。
角度のある斜面では、前方に平坦なところがあればスキーをハの字形の直滑降、しかし、その平坦になるところまで届かない前で転倒、残念である。
後続集団のエリザベス、ビクトリア、ダイアナの三人は、まだ追いついてこない。
先頭集団のヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリン、イメルダを滑り降ろす。
後続集団のエリザベス、ビクトリア、ダイアナが、ゲレンデに見えたところで、先頭集団とともにゲレンデを横断し滑り降りた。
また、迂回路に戻り、先頭集団のヒラリィ、マーガレット、ナンシイ、スウジィ、キャサリン、イメルダと男子児童を滑り降ろす。
迂回路は、他のグルーブがカーブのところと斜度の困難な個所で重なるように転倒者がいた。
心配したが、なんとか滑り降りてくれた。
緩い斜面では上手く滑っていたが、少し急な斜面にかかると腰がひけて、動けなくなってしまっている。
むしろ緩い斜面では苦しんで滑っていた人の方が急な斜面をたやすく滑っている。
慣れなくとも、斜度と速度に強い人がいる、度胸だとやっぱり思った。
後続集団の、エリザベス、ビクトリア、ダイアナの三人は超特徴の持ち主である。
リフトに乗って、斜面に残っている三人を、中間から見下ろすと、三人のうち、エリザベスは、スキーをはずしてやや急な斜面の上にいた。
やや急な斜面の下の平坦なところにビクトリアとダイアナの二人が雪面にいる。
二人のところに行くと、ビクトリアが「せんせっ、のんきに、リフトになんか乗っている場合でないでしょう。」と叫んで待っていた。
エリザベス、ビクトリア、ダイアナの三人を降ろすためにリフトで戻ってきたのに、ダイアナは、何か勘違いしている。
レストランからも、リフトからも把握できる状況にして、リフトで登り降りして、一人づつ降ろすことにしていた。
ビクトリアを滑らせるがすぐ転倒しスキーをはずしている。
それなのに、ビクトリアは、まだそれよりは斜面の上に残っているエリザベスに「エリザベスっ! 早く降りてきなっ!」と叫んでいる。
緩い斜面でもそうだったが、ビクトリアは、他人よりも前にいる場合に、後ろを見ては、「早くきな!」と言う癖がある。
午前の緩い斜面の場合でも、斜面の上に立っていてなかなかスタートしない者がすぐに上手に、自分の前を滑り降りてしまって、自分が斜面の上に残され、後ろになってしまうと、「わたしより、せいせきがわるいくせに、そんな。」という。
エリザベスは、スキーを誰かに持ってもらい、歩き降り始めていた。
「今は、あなたは、他人のことを心配している場合ではない。自分のことだけを考えなさい。スキーを先ず履いて、自分だけでもスタートしなさい。」とビクトリアにと云った。
「せんせいっ、せんせいったら」と叫んでいる。
スキーを一人でおもうように装着をできないので、手伝って履かしてやる。
ビクトリアは、先ほどまで、スキーブーツをビンディングへ上手くのはめていたはずだが、まあ時間の無駄だと手伝ってやるが、次にはスタートしない。
とうとう、「ペナルティとして、スキーをはずして歩きなさい。」と云う。
すると「やだっ。やだっ。滑る。」と言い出す。
少し滑っては、後ろを見て、まだ自分より斜面の上に残っているダイアナに「ダイアナ!、早く来な!」と、また叫んでいる。
「早く滑り出しなさい。」
「でも、せんせい、ダイアナが・・・」
「関係ないよ! ここでは今は、自分のことだけで精一杯だから、自分に集中しない。」と云った。
「でも、せんせい、・・・」
「スキーをはずしなさい。背負って滑り降りるから。」
「スキーははずさなさい!」と頑張るのだが滑りださない。
「ペナルティだ、スキーをはずして歩きだよ。」と云って、スキーを預かり、滑り降りた。
ヒラリィとマーガレットとスウジィは、再びリフトで二回目の挑戦をして、滑り降りてきた。
レストランを正面になるゲレンデを滑らせることにした。
迂回路を滑らせるのは目が届かなくなるのである。
ビクトリアよりも斜面の下になると、「せんせっ、おぶって!」と言い出す。
それじゃと登ってそばに行って背負う姿勢をすると「やだっ」と言う。
側にいるとビクトリアは、スキーブーツを真下に向け、上手くバランスをとって滑る。
身体のバランス感覚はいいのだが。
心のバランスのとり方が上手くいかないビクトリアである。
ヒラリィとマーガレット、そしてスウジィの三人は、なんとか、レストランを正面にした斜面に挑戦し、滑り降りきった。
この三人は、二日間の成果が十分にあったと思った。
ビクトリアは、斜面を平坦なところまで歩いて来て、レストラン前の雪面に坐っていた。
顔を見るなり「せんせい、おぶってもらえばよかった。」と言った。
エリザベスとビクトリアは、雪上をスキーブーツで歩くよりも、スキーを使って移動したほうが良いということを学んだだろうか。
十三時四十五分になって、残ったのは、ダイアナである。
「早く滑りだしなさい。」といっても雪上に立ったままで、声をかけても返事もしない。
「山頂へ行こう。行こう。」と楽しみにはしゃぎ、別なグループの二人のまで誘って、リフトに乗ったはずである。
スキーをつけたまま、此方の後ろにつかまらせて滑り降りようとする態勢も拒否される。
「それでは、後ろについて滑りなさい。」と云って先になって滑り出すが、追って来ない。
戻って近づくと逃げ出す。
迎えにいくと逃げ出す。
我が家の愛犬クリスが、桃太郎にちょっかい出しては近づくと逃げる仕草である。
「スキーを外しなさい。背負って滑り降りるから。」と云って、近づくと逃げる仕草である。
どうしようもない。歩かせる以外ないと判断する。
「スキーをはずして歩きなさい。」と云ったが、はずさない。
スキーを絶対はずさないというのは、ビクトリアとダイアナに共通している。
約束か誓いでもしたかのように、かたくなに拒否する。
地上では、相当な威張っていて、そのプライドが許さないのだろうと思った。
いくら地上の星でも、雪上の星にはなれない。
集合時間が迫って、時間がないから早く滑り出しなさいというのは通用しない状況である。
スキー技能もない。気力も無い。無理でもある。
スキーをやり、斜面に自分のスキーの操作が適しなくて、ギブアップし、自分でスキーを肩に斜面の端を歩く人もいるし、他人にスキーを持ってもらい歩く人もいる。
強制的にスキーを預かるというスキー指導上異例の処置をすることにした。
雪上に立っているダイアナの後ろに行き、右足のビンディングを手で外した。
そして続けて左のビィンディングをはずそうと手をかけると、なんと、右足のスキーを履いてしまう。
急いで左足のビィンディングをはずして、右足のビンディングをはずそうとすると、なんと、左足のスキーを履いてしまう。
右足のビィンディングをはずしていると右足のスキーを履いてしまう。
モグラたたきゲームの状態である。
此方もスキーを履いて、ストックも持ったままで、それを繰り返してやったので相手の心と体の動きを読めなかった。
ストックをはずしてから、両方同時にダイアナのビィンディングはずしてスキーを預かった。
というよりは、とりあげたという感じであった。
「あとは、桃太郎が滑った跡を歩いて来なさい。」と云って滑り降りて、レストラン前に、ダイアナのスキーを雪に刺した。
そこには、ダイアナの母親が立っていた。
娘を心配して滑り降りてくるのを見ていた。
「ほかのグループは、迂回コースを使ったので、もうとっくに滑り降り、下の緩い斜面を滑っていたのに、金太郎指導員は、観光案内しながらプルークボーゲンで降りた。」と言った。
娘のグループは指導の仕方が悪いと言わんばかりの角のある話ぶりだ。
「此方のクループは、人数が増えてしまってね、真っ直ぐしか滑れない状況で、迂回コースは狭いし、林に落ちたり、固まって滑る状況では、他人に突っ込んだりして、案外あぶないので、把握のしやすいゲレンデを降ろしたんです。」と云った。
そして「大丈夫、降りてきますから。」と云った。
「あの子は、一度言い出したらきかないから。」と自慢するようにダイアナの母親は言った。
その母親、先ほど斜面でダイアナの近くにいたが、此方が近寄ったら、「娘をよろしくっ!」と言って滑り去って行ったのだ。
娘がスキーで苦戦をして、もがいている状況で、助けずどうしたのだろうとおもったが、あの時に、ダイアナ母娘の間に、いざこざがあったのかもしれない。
その後に行って近づいた桃太郎が、ダイアナに話を掛けても返事もなかったし、モグラ叩きゲームの状態になった原因はそこにあったのだろうと思った。
正面ゲレンデの斜面を、階段登行ならぬ、階段を下るようにしている娘を見つけて、ほっとしたのか、「あら、うまく降りてくる。」と言った。
「ダイアナのスキーは、ここにありますから。」と云った。
母親は無口になった。
スキーをつけずにスキーブーツだけで歩いていることを知ったからだ。
ゲレンデ内を、つぼあし≠ナ歩くのは禁止行為だ。
ゲレンデのど真ん中をスキーブーツで歩けるのは、フェアリーランドかねやまスキー場、ならでこそであろう。
会津坂下スキー場でもゲレンデ内をつぼあし≠セったが、あれはあれで、チェアリフトがないので仕方がない。
会津自然の家で、閉会式が行なわれた。
会津自然の家の代表が、「楽しかったですか ?」、「スキーは上手になりましたか?」と再び聞いても、児童たちの反応は「・・・・・・」であった。
疲れたのだろうか、楽しかったのだろうか。
総評ということで指名があった。
また、「起立、脚を広げて、手を高く上げ、伸び。」と開会式と同じことを云った。
そして、「犬、猫などは腰痛がないという、次の行動の移る場合には、関節等を伸ばすため、伸びをして、整体をしてから行動します、自分の体を上手につかってほしいからです。行動の変わり目には、伸びをしてください。スキーの研修会では科学的に説明を受けています。」と話した。
「スキー講習は、中級者、初級者、初心者という三段階のグループとして分けて行いました。中級者グループは、目を見張る上達ぶりでたのもしく感じ、初級グループは、中級に追いつく勢いを感じました。初心者グループは、きのうの坂下スキー場、きょうの午前まで、かねやまスキー場スキーで慣れる段階、午後には、かねやまスキー場の頂上から景色を観ること、そしてスキー場全体を見せることを主眼としました。高いところから、まあまあで滑り降りた人、苦労して降りた人、それぞれの思いは、今後に必ず役に立つと思っています。スキーの上達のコツは、長い時間を滑ることと、長い距離を滑ることです。次にスキーの機会には、そうおもって滑って下さい。スキーは楽しいです。」と那須桃太郎が云った。
「緩い斜面では上手く滑っているが、少し急な斜面にかかると腰がひけて、動けなくなってしまう子。むしろ緩い斜面では苦しんで滑っていた子の方が、急な斜面でやすやすと滑っていた。あれが不思議だ。」と金太郎は言った。
また、いっしょにすべりましょう≠ニ、言われることは、スキーヤーとしては勲章ものだ。
また、おしえてください≠ニいわれたら、インストラクターが、その言葉でインストラクターの労が報われるというものだ。
二日間(平成十六年二月二十一(土)、二十二日(日))で、小学生卒業記念スキー旅行で、児童が爽快感と楽しさをゲットしたのか,得たかの手ごたえよりも、インストラクターが、ゲップでバランスが崩れたということは感じた。
びっくり≠ニは、不意のできごとに驚くさま、はっとして、こころがわずかに動くほどである。
びっくり仰天≠ニは、びっくりを超えて、こころが浮揚するほどである。
上達でびっくり仰天することが楽しみだったが、別なことでびっくり仰天したスキー行でもあった。
スキーの技術と技能の習得するのは目的ではなく、手段である。
雪上の一日で生まれた出会いの人。
雪なし地域のスキーヤーがスキーを通して出会った方々は貴重な存在。
手に入れた宝は、鴎盟の友。
「いわきスキーフレンズ」と命名して良かったと思う二十年。
スキーは心身のバランスを保つ比類のないスポーツ
いわきスキーフレンズ 桃太郎
2004年 2月 2日 記(載)