50章 ミッション


「私達は、フーロの旅人。そして、彼からのメッセンジャー。」

議事堂に詰めかけた何十万ものフェレ達は、固唾をのんで空を見上げていた。
マーリングリスル海兵隊特殊部隊のチームも、あタロウの率いるブルーチームも、ミクも、呆気にとられてポカンと空を見上げていた。

脱出用ポートにいる、Coo、ぷりん、あづき、ムウ、マユも空の異変に気づいていた。

ムラザック編隊のテツは、眩い空での飛行は危険であると判断し、全機に緊急着陸命令を出した。着陸して機外に飛び降りたテツは、ヘルメットを投げ捨て、目を細めて空を見上げた。

ジパン連邦空軍基地のマロン達も、空の異変に気がついていた。マロン達も緊急着陸したムラザック編隊のグー女王達と合流するため滑走路に走り出て、空を見上げた。

テレビ局では、フィヨ局長の迅速な判断で屋上にテレビカメラを持ち込み、空に映る巨大な3匹のフェレの撮影を開始していた。
しかし、これはムダなことだった。なぜなら、空に映るフェレの姿は惑星ジパンのどの場所からも見えた。例え惑星の反対側に住むフェレ達にさえもその姿は見え、その声は静かに聞こえていた。
惑星ジパンだけではなかった。遠く離れた惑星マーリングリスルのフェレ達にも、惑星アコンィのマスターAkoとダッチにも見えた。

「私達は、あなた方に彼のメッセージを伝えるために、あなた方の心に直接話しかけています。」ミュウが話し始めた。「銀河系の遠く離れた太陽系の第3惑星で、ホモサピエンスと呼ばれる種族が自らの惑星を滅ぼそうとしています。彼らは、森を滅ぼし、水を汚し、大切な大気までも毒ガスに変えようとしています。」
ミュウは、言葉を切った。いずなが続きを話し始めた。「彼らは、やっとその事に気づき始めました。しかし、それに気づいても自分一人の力が信じられずに、みんなが他人事のような顔をしています。」
カノンが続けた。「それに、彼らはあらゆる愛を失いかけている。森や空や海への愛、そこに生きる全ての動物達への愛、彼ら同士の愛、その全てを失いかけている。」カノンはため息をついた。「愚かなことだ。その彼らの心の隙に、ココロナキ星人が食い入ろうとしている。」
「このままでは、彼らの星は全てを失ってしまいます。彼はそれを非常に嘆いておられます。」ミュウが言った。「彼は、メッセンジャーを送ることにしました。そして、私達フェレットがその役目を果たすことになりました。彼らの星へ行き、物事を決して諦めてはいけないことを彼らに伝え、あらゆる愛を彼らに思い出させること、それが私達フェレットのミッションです。」
「これは非常に危険なのミッションだ。既に彼らに侵入したココロナキ星人の犠牲になるフェレが多数出るかもしれない。しかし、やり遂げなければならない重要なミッションなのだ。」カノンが言った。
「フーロの力の強さは、彼らへの影響の強さを意味します。フーロを学んだ多くのフェレの協力を必要とします。」いずなが言った。
「私達フェレに希望を託されました。フーロと共にあらんことを。」
優しいほほ笑みを浮かべたミュウ、カノン、いずなの3匹の姿は次第に消え、元の夕焼け空に戻った。

フェレ達は、今起きたことが信じられずに空を見上げていた。
夕焼けの空は色を失い、やがて星空へと変わっていった。
ミク、ムウ、マユは、満点の星のその遠くにあるはずの太陽系第3惑星が見えた気がした。
「地球(テラ)へ。。。」ミクはつぶやいた。


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