「お兄ちゃん、どうしてここにいるの? それに、何なのその服は? 兵隊さんの服じゃないの?」あづきが口を両手で覆いながら、Cooに言った。
Cooは立ち上がると、あずきの目を真っすぐに見つめて言った。
「帰ったらゆっくり話そう。今まで黙っていたことは、仕方ないことだった。これがオレの仕事なんだよ。」
Cooの背後で、ココロナキ星人がノロノロと立ち上がった。そしてCooに殴りかかった。
「お兄ちゃん、後ろ!」ぷりんが叫んだ。
Cooは振り向きざまに、ココロナキ星人の顔面に強烈なパンチをぶち込んだ。
「これは、夏の炎天下にオレを放置したお礼だ。」
更に1発。
「こいつは、仲間の牙を削った仕返しだ。ヤツは、おかげて歯を失い顎を痛めちまった。」
ココロナキ星人は倒れた。
「おっと、おねんねするには、ちとはや過ぎるんじゃないかい? まだお礼が全部すんじゃいないんだよ。」Cooは、ココロナキ星人の襟首を掴んで立ち上がらせた。
「こいつは、変なメシだけ放り入れられて栄養失調になった仲間の苦しみだ。それから、これは病気になっても放置されたままにされた仲間の恨みだ。まだまだ、寝るんじゃねぇ!」
Cooのパンチは果てしなく続いた。
あづきとマユは、そんなCooのとりつかれたような姿に圧倒されて、ぶるぶる震えていた。
ぷりんは、静かに涙を流していた。優しいお兄ちゃんが、あの日病院で見た時と同じ冷たい目をしている。ぷりんは、それで全てが理解できた。お兄ちゃんが殴っているこの男が、お兄ちゃんを変えてしまったんだ。ぷりんは、怒りと悲しみで涙が溢れて止まらなかった。
「こいつは、おまえらココロナキ星人の犠牲となった全ての仲間の怒りだ。」
Cooの強烈な右ストレートをもらったココロナキ星人は、後ろに飛ばされた。やがて、立ち上がったココロナキ星人の手に握られていたのは、小型爆弾だった。
「ずいぶん楽しんでくれたじゃないか。」ココロナキ星人は、爆弾の安全ピンを抜こうとした。
ぷりんは自然に体が動いた。ぷりんは、大きくジャンプをすると、ココロナキ星人の頭上に舞い上がり、鳴鼬拳の最高の奥義を繰り出した。
突然に増えたように見えたぷりんの手が、足が、牙が、ココロナキ星人の体中を一度に撃破した。
「あぁ〜〜〜ん いやぁ〜〜ぁん」ぷりんが色っぽく鳴いた。
ぷりんが着地した時には、ココロナキ星人は既に立ったまま息が絶えていた。
「こ、これが鳴鼬拳の神髄なのか。。。」Cooは呆然としていた。
息一つ乱さずに瞳を閉じて立っているぷりんの背後で、ココロナキ星人は崩れ落ちるように倒れた。
ジパン連邦は、完全に崩壊した。
議事堂に詰めかけた何十万ものフェレの大合唱は続いていた。その中にるびの姿があった。るびは、夕焼けに染まる空に裂け目のようなものが見えるような気がした。
るびは、目を擦ると再び空の裂け目が見えたあたりを凝視した。その裂け目は始めはゆっくりと、だか次第に早く広がり始めた。
「空が破れてる!!」るびは、叫んだ。
るびの横にいたスーがそれに反応して、空を見上げた。「本当だ! 一体なにが。。」
るびを中心に空を見上げるフェレの輪が波紋のように広がっていった。
歌声は小さくなり、やがて途切れた。
全てのフェレが、息を殺して空を見上げていた。
空は眩しい光に溢れ、3匹の巨大なフェレの顔が浮かびあがっていた。
ミュウ、カノン、いずなの3匹だった。ミュウは、静かに話し始めた。
「私達は、フーロの旅人。そして、彼からのメッセンジャー。」