ジパン連邦空軍基地では、マロン達がテレビの前で新政府樹立宣言のビデオ放送を待ちわびていた。
イタチの最後っ屁作戦が惑星ジパン時刻で13:00に開始されて、既に3時間が経過していた。
「ゼンジたち、何をやってるのかしら?」うにがじれったそうに言った途端、画面が揺らぎニュースキャスターの顔が映し出された。
「番組の途中ですが、重大な放送があります。そのままお待ち下さい。」
2秒後にマロンのビデオ映像に切り替わった。映像のマロンは、静かに話し始めた。
「みなさん、新しい時代へようこそ。私はマロン、反乱軍のリーダーです。私達は、みんな公平に食べ物を分け合う社会をめざしてクーデターを起こし、そして成功しました。一部の特権階級だけがうまい物を貪り、不正に富を築く時代は過去のものとなりました。悪しきジパン連邦は、本日を以て崩壊しました。
私達のクーデターは、新しい時代へのきっかけ作りに過ぎません。これからの惑星ジパンが楽しく快適に暮らせる星になるかどうかは、みなさんの肩にかかっています。愛すべき惑星ジパンをみなさん1匹1
匹の手で宇宙で最も魅力的な惑星にしていこうではありませんか。みなさんの夢を聞かせて下さい。ご浣腸ありがとうございました。」
ジパン連邦空軍基地のテレビの前で、マロンはギャグを外してしまったことをひしひしと感じていた。
「ねぇ、マロン。」ミンミンが言った。「最後のセリフ、ご静聴ありがとうございました、って言いたかったの?」
「ち、違うわい! さ、最後に笑いをとりにいっただけや。ホンマや。」
「確かに全世界のフェレが笑ったね。別の意味で。」タンタンが肩をすくめた。
長江いたちんフェレのすけ首相は、ペントハウスの窓から沈む太陽をぼんやりとした顔つきで眺めていた。
「見たまえ。素晴らしい夕焼けじゃないか。」フェレのすけは、ポッチョ全権大使とピエロ副大使の方へ振り返った。「明日はきっと素晴らしい朝になるだろう。そう思わないかい?」
「ええ。そうですね。」ポッチョは笑顔で答えた。
「そうさ。そうなってもらわないと困る。ジパン連邦が新しいリーダーを迎えた最初の朝だからな。」
「新しいリーダー?」ピエロが言った。
「そうさ。私は辞職する。若く勇気あるフェレ達に道をあけるよ。」長江いたちんフェレのすけ首相は、満足した笑顔を見せるとホームバーに歩み寄り1本のボトルを取り上げた。
「最高のトーンだ。一杯やろうじゃないか。」
トーンを楽しんでいた長江いたちんフェレのすけ首相達の耳に、次第に大きくなる歓声が聞こえてきた。
「はて? 何だろう?」長江いたちんフェレのすけ首相は、窓辺に寄り見下ろした。
「ちょっと下を見たまえ。」首相はポッチョ達を呼び寄せた。
ポッチョ達が見たものは、何万何十万のフェレ達が、希望に顔を輝かせて議事堂に集まってきている光景だった。
歓声はやがて歌に変わった。
夕焼けに染まる空の下、歌はいつまでも続いた。