46章 追跡者


テレビ局に潜入したゼンジのチームは、局長室に突入した。
「なんだね、君たちは!」局長のフィヨは読んでいた書類から赤い目を上げると、白い頭を撫でながら不審のまなざしでゼンジ達を見た。
「クーデターが起きたんだ。でも、ここでは手荒なマネはしたくない。大人しくオレ達の言う事に従ってくれ。」ゼンジが銃を向けながら言った。
「クーデター? 何なんだそれは?」
「みんなが平等にごはんを食べられるため、今の体制をぶっ潰すための戦いだよ。」ブンタが小さい声で言った。
「君、足が震えているよ。」
「ち、違うね!!」
「そのクーデターとやらは成功したのかい?」
「ああ。後はこのディスクに記録されている映像をここから放送すれば終わりさ。」ゼンジはディスクを取り出した。
「ほう。どんな映像なのかね?」
「マロンの新政府樹立宣言の演説が入っている。」
「マロン? あの反乱軍のリーダーのマロンかい? そうか! ちくしょう! ついにやりおったか。」フィヨは、ポンと手を叩くと笑顔を見せた。
「さあ、こうしちゃいられない。」
フィヨは、机の電話を取り上げた。その行動を見てゼンジがピクリと反応し、銃をフィヨの横腹に押し付けた。
「銃を下げなさい。心配せんでいい。調整室に連絡するだけだ。」フィヨは銃を押し下げた。「あ、調整室か? 局長だ。今放送している全てのチャンネルにテロップを入れろ。文面はこうだ。今から5分後に重大な放送があります。お見逃しのないよう、今のうちにトイレに行っておいてください。いいな?・・・・よし。それから、スタジオにかっきり5分後に全て番組を中断するように言っておけ。」
フィヨは、ゼンジ達の顔を見ながらニヤリと笑った。「それからビデオデッキも開けておけ。5分後に最高のショーが始まるんだ。」
フィヨは受話器を置いた。
「ありがとう。局長。」ゼンジは手を差し出した。
フィヨはその手を両手で強く握り言った。
「フィヨと呼んでくれ。この日を待っていたんだ。こんなふうに時代が変わる日をな。そうだ、これを君たちにあげよう。記念の品だ。」
フィヨは、机から小さなシートを取り出した。
「さあ受け取ってくれ。オコジョの記念切手だ。」

議事堂では、ダークマスクことココロナキ星人が脱出用ポートに到着していた。ココロナキ星人は、特別機の中型脱出用シャトルに飛び乗ると、待機していたパイロットの肩を叩いた。
「さあ、出してくれ。」
しかし、パイロットは反応しなかった。
「おい! 何をやっている! さあ出すんだ。今すぐ!」
パイロットはくるりと振り返った。
「お、お前は!」
「Cooちゃんだよ〜ん!!」
ココロナキ星人は、あわててモケモケと後ずさり誰かにぶつかった。
「ムウちゃんでしたぁ〜!」
驚いて振り返ったココロナキ星人の目は大きく見開いていた。
「どうしてこの場所を?」
「フーロの声さ。」Cooとムウは同時に言った。
「わ〜、ハモっちゃた。」Cooとムウは、また同時に言った。
「ブラックバナナからぴょーんって脱出して、パラシュートで降りてる時に、フーロの声がまた聞こえた。で、地面に降り立って、そこを歩いていた娘さんに聞いたんだ。申し訳ありませんが、怪しい者です が、脱出用ポートはどこですか? ってね。」
ムウの後ろにいた娘が、ぴょんと顔をのぞかせた。
「紹介しよう。お風呂に入ると狂暴な鼻毛星人さんだ。ここまで案内してくれたんだ。」
「はじめまして。茶々です。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。Cooです。ずいぶん立派な鼻毛ですね。お手入れが大変でしょう?」
「まあ、ブラッシングは欠かせませんわ。それに、体の毛だってすごいんです。」
「どれどれ、拝見するとしようかな。」ムウが言った。
「いや〜ん。」
「はっはっは、これは一本取られたな。」Cooがオデコをピシャリと叩いて笑った。
「いや〜まったく。」ムウも笑った。
ココロナキ星人は、事態の成り行きにどう反応していいものか迷ってただオロオロしていた。


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