44章 追撃


海兵隊特殊部隊を乗せた4機のケンネルキャブが、議事堂前の芝生に毎度おなじみの乱暴な着陸をし、後部ハッチが開いた。
そのハッチから60匹のフェレが勇敢に飛び出した。
「もたもたするな! 日が暮れちまうぞ!」草薙が叫んだが、それは無用なことだった。訓練の行き届いた特殊部隊の連中は何ひとつムダな動きもなく速やかに展開すると、議事堂の制圧を始めた。
そんな様子を誇らしげに見守っていたCooの耳に誰かの声が聞こえた。
「脱出用ポートへ行くのです。」
Cooは慌てて辺りを見渡したが、声の主は見つからなかった。
「悪が逃れ、善が失われようとしています。」
「誰だ!? Cooちゃんをからかうのは!」Cooが叫んだ。
「私の名はいずな。あなたの心に直接話しかけています。」
「いずな? 知らないな。」
「目を閉じて精神を集中しなさい。さあ早く。」
Cooは半信半疑でその言葉に従った。
「えっちな事を考えましたね。」いずなは静かに言った。
「どうしてそれを!」
「さあ、心のレンジを広げて宇宙の声に耳を傾けて。」
Cooは今度は真剣になった。Cooの瞼の裏側に映像が形作り始めた。
「お骨の生焼け。。。」
Cooはあわてて目を開いて、今見た映像を頭から追い出そうと頭を振った。
「変な想像をしなさいと言っているのではありません。」いずなのため息が聞こえた。「ぷりんとあづきに危険が迫っています。さあ早く自分の目で確かめるのです。」
その声を聞いたCooは今度こそ真剣に精神を集中した。
Cooが見たものは、ココロナキ星人が脱出用ポートに向かって全速力で走っていく映像と、それを追うぷりん、あづき、マユの映像だった。
「馬鹿なことを! ココロナキ星人はおまえらが考える以上に強敵だぞ! 戻るんだ! さあぷりん、今すぐにだ!!」Cooは思わず叫んだ。
「さあ、早く行くのです。フーロと共に。」
Cooは、脱出用ポートに向かって走り始めた。

宇宙空間では、ジパン連邦空軍基地から発射された去勢ミサイルの後を追って、4機のムラザックがアフターバーナーを最大限に開いていた。
「ダメだ! ついていくのがやっとだ。」レイの声が無線から漏れた。
「あきらめるな。ムラザックを信じるんだ。」源さんが穏やかに言った。「そして自分達を信じるんだ。我々は栄光のマーリングリスル空軍のライトスタッフだ。」
「しかし、このままでは。。。」ミーが言った。
ミーの言う通りだった。次第に光速飛行体制となった去勢ミサイルとムラザックの間隔は少しずつ開き始めた。
「ちくしょう!! 全機ありったけの武器で攻撃するんだ!! まぐれでも当たるかもしれない。撃て!!」源さんが命令を出した。
4機のムラザックは一斉にミサイルを発射し、レーザービームを発射し、ついでに臭腺も開いた。
しかし、全てはムダだった。
今や去勢ミサイルはムラザックでは追撃不可能となっていた。
突然ムラザックを追い越して去勢ミサイルに追撃する船が登場した。同時に無線から奇声が飛び込んできた。
「うっひょろひょろろぉ〜」
虎のカローラだった。
「いずなとかフーロとかいうヤツがオレを呼んだんだ。」
カローラは、光速飛行を始めたミサイルを追って光になった。


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