41章 正体


議事堂の地下の監獄にも、地上の激しい戦闘の音がかすかに伝わっていた。
ポッチョ全権大使、ピエロ副大使、ぷりん、あづき、長江いたちんフェレのすけ首相、そしてマユは天井を眺めていた。
「ついにイタチの最後っ屁作戦が始ったのね。」ポッチョが、がっくり肩を落とした。「私達は、結局何の努力もできなかった。せめて、もう一度ダークマスクさんと話し合う機会があれば、もしかしたらこんなことに。。。」
「無駄よ。」あづきが言った。「あいつは絶対に話し合いに応じるタイプなんかじゃない。」
「そうね、信じられない位に冷たい目をしていた。」ぷりんは、ため息をついた。
「そうさ、あの目で見られたら、」長江いたちんフェレのすけが言いかけたところで、いきなり監獄のドアのロックが解除される音が響いた。
そのドアから武装したジパン連邦の兵士がドカドカと入って来た。
「ダークマスクさまが、お前達を呼んでいる。さあ、来るんだ。」

ポッチョ達は、議事堂の最上階のペントハウスに連行された。
窓辺にダークマスクが立って、薄ら笑いを浮かべながら窓の下の戦闘を眺めていた。ポッチョ達が連行されていたのに気づくと、不気味なほどの猫なで声で話しかけてきた。
「いやあ、よく来ましたね。実はあなた達に面白いショーを見せて差し上げようと思いましてね。」
窓の外を見下ろしたポッチョ達が見たものは、激しい攻撃を受けて為すすべもなく、頭を低くしてとぐろを巻いているあタロウ達の姿だった。
「わざとヤツらを直撃しないように指示してある。」
「ど、どうして。。。」ピエロの声は震えていた。
「決っているじゃないか、ヤツらに恐怖を与えるためさ。」ダークマスクは笑った。「ヤツらの尻尾を見ろ! 見事なブラシじゃないか。」
「あなたを・・・許せない。・・・」ぷりんの声が変わっていた。あづきは、そんな姉の声を初めて聞いて、ポカンとした。
「ほう、許せないときたか。で、どうするんだい?」
その言葉が終わると同時に、ダークマスクは頬にぷりんの強烈なパンチを受けた。ダークマスクのマスクが外れて飛んだ。ダークマスクの護衛の兵士達は、突然にさらけ出されたダークマスクの素顔に驚いて、ぷりんを取り押さえる任務を忘れていた。
ダークマスクの正体は、ココロナキ星人だった。
「この代償は高くつくぞ!」ココロナキ星人は、ポケットから小さな機械を取り出すと、スイッチに指をかけた。「このスイッチを押すと、スペースミサイルが発射される。照準は既に植民地にするはずだった惑星に向けている。そうさ、おまえの故郷、マーリングリスルに向けてな。」 ココロナキ星人は、立ち上がると言葉を続けた。
「ミサイルの種類を教えてあげよう。知りたいだろ?」
「・・・・」
「去勢ミサイルさ。別名、"もうあなた役立たずなんだからぁ"とも言うがね。さぁ、押そうか? ん? どうする?」

あタロウのハンディトーキーに交信が入った。
「ミク! 聞こえるか! ムウちゃんだよーん!」
ミクは驚いてあタロウの無線をひったくって叫んだ。「こんな時に何のんきな声だしてんのよ!!」
「あ、元気だったぁ?」
「ええ! おかげさまで!! 今どこにいるのよ。」
「ブラックバナナのコクピットさ。でも困っちゃった。」
「何を困ってんのよ。忙しいんだから、早く言いなさい。」
「無線のボタンは分かったんだけど、操縦のやり方が分からなくってさぁ。もうすぐ議事堂に着きそうなんだけど、どうしましょう?」
「どうしましょうって、まさか!」
ミクは空を見上げた。その空の彼方に、テツ達のムラザック編隊に混じって1機のブラックバナナが急速に接近してくるのが見えた。
「なあ、ミク。前から思ってたんだけど、歯は早めに治療した方がいいと思うぜ。」
「早く脱出しなさい!!」
「ミク、一緒にホーモツデーンに帰れなくてゴメンな。」
「何バカな事を言ってんの! 早く脱出レバーを!!」
ムラザックの編隊は、攻撃態勢に入るために左右に展開した。しかし、ムウの乗るブラックバナナだけは、そのまま直進してミク達の頭上を通り過ぎて議事堂に向かって突進して行った。
「オッパイ! ミク。。。」ムウの優しい声が無線から聞こえた。


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