37章 借り


パラシュート降下したレッドチームの10匹が、格納庫脇の空き地に着地した。
マロンは、パラシュートを手際よく小さくまとめながら、点呼をとった。
「たぬ吉、マイケル、ピッコロ、ミンミン、タンタン、ファムト、ぱーちゃん、うに。。。」
うには、地面に這いつくばって、何かを探していた。
「どないしたんや? うに」
「落とし物をしたの。」
「なにを落としてん?」
「首輪なの。茶色のリボンで金の鈴がついてるの。あれをしてないとママは私を見つけられないの。」うには泣きそうな顔をしていた。
「後で探そう。ところでムウはどこや?」
ムウの姿はどこにもなかった。
「冷たいようだが、今は作戦の実行を優先しよう。」マロンは、決断した。「さぁ、格納庫に行こう。」

格納庫に忍び込んだ9匹のレッドーチームは、整然と並べて駐機している戦闘機H型ハーネスに、タイマー式の爆薬をセットした。
「爆破時間は、3チュッパチャプス後にセットしたな?」
みんなはうなずいた。
「よっしゃ! 司令室に乗り込むぞ!」

惑星ジパンのレーダー圏外では、マーリングリスル空軍の21機の戦闘機ムラザックと、4機の兵員輸送機ケンネルキャブが待機していた。
ムラザックの編隊長のテツは、予定時間になったことを確認すると、全機に指令を出した。
「テツだ。行動を開始する。」
全機の衝突防止用ランプが消え、了解のシグナルが送られた。
「グー女王。」テツは言った。「一番最後に続いて下さい。決してムリなどなさらずに。」
「わかりました。みなさんの邪魔はしません。」
「全機突入する。目標、ジパン連邦空軍基地。目的、ケンネルキャブの護衛、ジパンでの脅威の排除および制空権の獲得。」
「だから、分かってるって。まったく心配性なんだから。」源さんがのんびりとした口調で言った。
25機のアフターバーナーが点火された。

ジパン連邦空軍基地の総司令室は騒然となった。
正体不明な飛行物体が急速に接近中と、管制塔から緊急連絡が入ったのだった。
その連絡と同時に、爆音とともに格納庫が爆発炎上した。
「何が起きたんだ? 報告しろ!!」総司令官である、シュテルン=フライヘル=フォン=ハルトネッキヒ=男爵が司令室で働くオペレーター達に向かって叫んだ。
オペレーター達は、それぞれの立場で現状を把握しようと、マシンを操作した。
「さて問題です。何が起きたんでしょう?」
その声は、男爵の横から聞こえた。
「何をバカなことを!」男爵は横を向いてぎょっとなった。
男爵の横に立った男は、銃を男爵の横っ腹に押し付けた。
「お、おまえは!」
「騒がない方がいい。アリの巣になりたくなければな。」
「ハチの巣の間違いじゃないのか?」
「つっこみ、ありがとう。ところでオレを覚えているかい? ストロベリーじゃないぜ。」
「どうやってここに入ってきた。」
「簡単に言えば、空から落ちて、制服を奪って、あの入り口から入ってきた。ところで、ここはフェレが多い。落ち着ける場所に行かないか? 君の部屋がいい。」
ムウは、マイクを取り上げるとスイッチを入れて話し始めた。
「あ、あ、テス、テス」
オペレーター達みんなが、男爵とムウの方を向いた。
「お願い、みんなでオレを見ないで。。。よし、それでいい。私は、参謀長補佐官のムウ大将だ。ウソじゃないよ。ホントだよ。今から、総司令官と向こうで話がある。しばらく総司令官はここから席を外す。総司令官が戻るまでは、現状のまま待機せよ。わかったフェレは手を上げて。」
総司令部でオペレーター達はみんな手を上げた。
「以上だ。」

男爵の部屋に着くと、ムウは男爵を椅子に縛りつけた。
「どうしてこんな恥ずかしい縛り方をする!!」男爵は抗議した。
「さて、この前の借りを返してあげよう。」
ムウは、男爵の机の引き出しから爪切りを取り出した。
「まさか!」男爵は脅えた。
「ちょっと爪が伸びてますね、男爵さん。」
ムウは、男爵の爪の先をパチンと切った。
「今度は血管の所を切ろうかしら?」
「や、やめてくれ!」
ムウは、爪切りに力を入れた。
男爵は恐怖で気を失った。
ムウは、ニヤリと笑うと爪切りを放り投げ、部屋の隅に行くとたっぷりこんもり隅うんこをした。
「これは、利子だ。」


前頁へ 目次へ 次頁へ