36章 発動


マーリングリスルの総司令部では、誰もが無言で時計の秒針を見つめていた。
0時になった。総司令部に0時の音楽が流れた。

きんこんかんこん0時です
よい子はみんなハンモック
ケージをガジガジしていません
トイレにきちんと行ったわね
お腹に大きな水たまり
オネショをしたら笑いもの
きんこんかんこん0時です

ゲンタ防衛部長官は、グー女王に回線をつないだ。
「グー女王、0時です。」
「・・・・」
「グー女王。」ゲンタは繰り返した。
「分かっています。」グー女王が大きくため息をつくのが無線を通してわかった。「イタチの最後っ屁作戦の発動を許可します。」
「イタチの最後っ屁作戦を発動します。」
ゲンタのその言葉で、総司令部のオペレータ達が一斉に自分に与えられた仕事を始めた。
「グー女王」
「なんですか?」
「お気をつけて。。。」
「ありがとう。」

ジパン連邦空軍基地のはるか上空に音もなく接近する黒い影があった。反乱軍の輸送機だった。
「予定地点に到達。」輸送機を操縦している鈴がマイクに向かって言った。「後部ハッチを開くわ。」
輸送機の貨物室では、ジャンプスーツに身を包んだ10匹のフェレが後部ハッチが開くのを待っていた。レッドチームだった。
「ムウ、ほんまについてくるんか?」マロンがムウに言った。
「ああ、あそこにはちょっと借りがあるんでね。借りはきちんと返す主義なんだ。ところで、パラシュートの装着方法はこれでいいのかい?」
「どれどれ? げっ!なんちゅう着け方してんのや! それじゃあ逆さ釣り状態になるで。器用なやっちゃやな。」
マロンは、ムウに正しい装着方法を教えた。
「マロン、もう1つ質問がある。」
「なんや?」
「お祈りをすれば、パラシュートが開くって本当か?」
「ちゃうわい!! ここの紐を引くんや。 ちょっと待てぃ! ここで引っ張ってどないすんのや!!」
「ああビックリした。おかしいと思ったんだ。」
「思ったんならすな!」
ムウは予備のパラシュートに取り替えた。
後部ハッチが全開した。
「さあ、行くで!」マロンは気合いを入れた。
10匹のフェレは後部ハッチから次々と空中に身を躍らせた。
鈴は旋回しながら、マロン達の黒く染めたパラシュートが全て正常に開いたのを確認すると、反乱軍基地に向かって機首を向けた。
鈴は、マロンのパラシュートに大きく書かれていた文字を思い出してクスリと笑った。そこには「チッチよ、耳は噛まずに、やさしくせめて!」とあった。

あタロウの率いるグリーンチームは、ジパン連邦の議事堂の隣の森に潜んでいた。
「マロン達がジパン連邦空軍基地にパラシュート降下をしている頃ね。」ミクが小声でささやいた。
「そうだな。」あタロウは、腕時計を時計をちらりと見た。
「ムウがみんなに迷惑かけてないといいけど。」
「気になるんだね。」
「ば、馬鹿なこと言わないでよ。どうして私がムウのことなんか。。。」ミクが慌てた。
あタロウは、にっこり笑った。「さあ、もうすぐ突入するぞ。」

反乱軍の秘密基地からは、新政府樹立声明のテープを携えたブルーチームを乗せた3機の垂直離着陸機8in1と、それを護衛する虎のカローラが離陸した。

イタチの最後っ屁作戦が始まった。


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