29章 陰謀


カローラは、惑星ジパンの反乱軍の基地へと光速航行をしていた。
「虎、さっきから何の本を読んでるの?」ミクが虎に話しかけた。
「あ? ああ。マーリングリスルで、ぱぱんぃに本を貰ったんだ。」
「ぱぱんぃから?」
「ああ。ぱぱんぃが書いた本だ。1冊はマユに渡してくれってんで、2冊もらった。」虎は、本の最初のページに戻した。「ちょっと読んでやるよ。」

「それは突然に私に襲ってきた。そしてそれは日増しに広がって、私の身と心を蝕んでいった。私はそれをただ受け入れるしかなかった。そんな私の姿を、妻と子はただ黙って見守るだけだった。」

「なんだか暗い話ね。なんていうタイトルなの?」
「妻よ、子よ。。。ハゲてごめんね」
「・・・・」
「もうすぐ読み終わる。そしたら、ミクにも貸してやるよ。」
「・・・・いい。」

「ねぇ、グリ。」後部座席でクッキーがグリに話しかけた。
「ん?」
「作戦、これでよかったのかしら?」
「どうして?」
「もし、交渉がうまくいったら、クーデターは起きないのでしょ?」
「そうだな。」
「そしたら、政権は今のまま。私達も今のまま。」
「いや、食糧問題が解決するよ。」
「そうかしら? ヤツら、お金を出して私達の分まで食料を買ってくれるのかしら?」
グリは考え込んだ。そして首を振った。
「買わないだろうな。マーリングリスルから買った食糧は、ブラックマーケットに倍の値段で横流しされる。そして、ヤツらの懐が太っておしまいってところだろうな。」
「そうなの。私も同じ事を考えていたわ。」
「交渉は成功するだろうな。」グリがいまいしく言った。
「ええ、成功するわ。平和的解決ってやつ。ただ、その平和はマーリングリスルにとってだけ。私達の戦いは何も変わらない。」
「どうしたらいいんだろう。」
「交渉の失敗を祈るしかないわ。」
「マユがいる。」今まで眠っていたように見えたムウが突然言った。
「え?」
「マユに交渉を邪魔させるんだ。食糧庁技師って立場からな。栄養価が少ない、歯石がつきやすい、灰分が多くて結石の危険がある、理由何でもいい。マーリングリスルの食糧に難癖をつけるんだよ、マユが。」
「なるほど!」
「問題は3つある。1つ、どうやってマユにこの事を伝えるか? 2つ、マユがそれを同意するのか? 3つ、マーリングリスルの連中にこの妨害工作を知られてはまずい。マロンが政権をとった後でマーリングリスルから食糧を買う必要があるかもしれないからな。交渉を妨害したことがバレると何かとまずい。」
「ムウ、あなた、ただのおやぢじゃないわね。」クッキーは感心した。
「どうして、オレ達に味方するんだい?」グリが聞いた。
「マロンや君たちは、オレとミクをジパン連邦から助けてくれた。その借りを返したいだけさ。」ムウはそう言うと、また眠った。


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