作戦の準備が整う時間を利用して、ぷりんはミク達を夕食に招待した。
指定された時間きっかりに、ミクとムウは花を持ってぷりん宅のドアのノックした。
「いらっしゃい。すぐに家分かった?」ぷりんは出迎えた。
「ぷりんの書いてくれた地図を見ながら来たら迷っちゃた。」ムウが言い、ミクに肘鉄をくらわされた。
「さぁ、入って。夕食の準備は、もうちょっとなの。ソファーで楽にしていて。」
ミク達は、リビングルームで思い思いのスタイルでくつろいだ。ふと、ミクはCDデッキがあることに気づいた。
「ねぇぷりん、音楽を聞いてもいいかしら?」ミクはキッチンに向かって声をかけた。
「ええ、適当に聞いてちょうだい。」
ミクは、PLAYボタンを押した。ビートのきいたイントロが流れた。ロックンロールだった。
Cooが腰を怪しく振りながら奥の部屋から出てきた。
「いい曲だろう? ベイビー」
「ああ、すかしてる。」ムウも踊っていた。
ぷりんがキッチンから飛び出してきた。
「いつの間にこんなCD買ったの! お兄ちゃん!!」
「いいじゃないか、なあみんな。」
「ああ、ナウなビートだぜ。」ムウは同意した。
ミクは顔をピクピクさせながら笑顔を作った。
「私、不安なの。」ぷりんが夕食の途中で呟いた。
「え?」ミクも手を止めた。
「もしもの場合、ポッチョとピエロを守れるかしら?」
「ああその話。大丈夫よ。マスターなんでしょ、ぷりんは。」
「何の話だ?」Cooが言った。
ぷりんは、会議の話と自分に与えられた役割を話した。
「すっごーい、お姉ちゃん!」あづきは目を輝かした。「私も行きたーい! ねっ、いいでしょ?」
「ダメよ、あづき。遊びじゃないのよ。」
「オレもついて行こうか? 」Cooが言った。「こう見えても昔は、胃腸の弱いCooちゃんと呼ばれていたんだ。」
「何の関係があるの。」
「それを言われると弱い。」
「スケさんは泳げずに溺死、というヤツですな。」ムウが言った。
「過ぎたるは及ばざるがごとし、でしょ。だから何なの?」ミクが不機嫌に言った。
「すっごーい! よくミクは分かったわね。そんなおやぢボケ!」あづきは感心した。
「コイツとの付き合い、長いから。これで3度目よ。同じギャグ言うの。」ミクはため息をついた。
「どうやら男性陣は分が悪いようだ。」ムウが言った。
「男性陣だって!! すっごーい言い方!」あづきは鼻に皺を寄せた。
「どうだいムウ、あっちでナウな曲でも聞かないか?」Cooは誘った。
「そうしよう。」
部屋の向こうから、おやぢのロックンロールが聞こえてきた。
ミクはその音楽を無視しようと懸命になりながら言った。
「あづきちゃんが一緒だと、ぷりんも心強いんじゃない?」
「え?」
「さっき、そんな顔してた。」
「そうよ! 私も強くなったわ。道場では誰も私に勝てないわ。」あづきは喜んで言った。
「その自信が危ないのよ、あづき。」
部屋の向こうから弾けたムウの声が聞こえてきた。「イエーィ!」
「うぬぼれは自らを滅ぼす結果につながるの。マスターAkoはよく言っていたわ。上に登るは易し、されどその高さを知ることは難し。」
「いい言葉ね。耳が痛いわ。」ミクは言った。
「私、強くなりたい。いい経験になると思うの。お願いお姉ちゃん。」
ぷりんは、あづきの目を真っすぐにみつめた。
あづきも、真剣な瞳をぷりんに向けた。
おやぢのロックンロールが聞こえていた。
3匹は必死で笑いをこらえていた。