24章 作戦会議


会議が再開された。
「それでは最初に平和的プランについて検討しましょう。」 グー女王が言った。
食料部長官のタモは、実現可能な食料輸出計画を、具体的な数字で示した。
「惑星ジパンの不足分は十分に賄える量であると予測できます。更に5%の増量も許容範囲です。」タモは、報告を結んだ。
「運輸部の試算では、輸出船団の編成および航行に要する諸費用を捻出できないという結果が出ています。」ブリュンが首を振りながら言った。「残念なことですが。」
「どれくらい不足しているの?」グー女王が聞いた。
「食料を定価の5%増しでジパン連邦が購入してくれるのならば、プラマイ0です。」
「売る気だったの?」ぷりんが驚いて言った。
「もちろんですよ。」ブリュンは意外な顔を見せた。「ボランテアで送るほど豊かな財源はありません。あくまでも惑星と惑星間でのビジネスです。まあ、こちらの儲けはありませんので、ボランテアと言えなくもありませんが。」
「それはそうかもしれないけど。。。」ぷりんは不満だった。
「さて、次は厚生部からの報告を聞きましょう。」
「はい、女王。惑星間での貿易が始まるとなると、ウイルスや寄生虫なども誤って輸出入してしまうかもしれません。耳ダニは痒いですからね。」ルビーは笑顔を見せた。「そこで、検疫のプランを立ててみました。」ルビーは資料を配り説明した。

「みなさん。短い時間で、よくここまでプランをまとめてくれました。」女王は、満足していた。「さて、使節団のメンバーですが、適任フェレを推薦して下さい。」
「ポッチョが適任だと思います。」ルビィが推薦した。「ああ、確かに彼女は適任だ。それでは補佐役にピエロはどうだろう?」タモが言った。
「いいと思うわ。彼女らは冷静で物腰が柔らかいしね。彼女達に頼みましょう。」女王は、ぷりんの方を向いた。
「ぷりんさん、あなたは彼女たちの護衛役として一緒に行ってくれるかしら?」
「え? 私がですか?」ぷりんは驚いた。
「そうよ。鳴鼬拳のマスターがついていると安心だわ。」
ぷりんは、首に巻いていたバンダナに手をやった。
「鳴鼬拳をご存じなのですか?」
「ええ。そして、あなたが分身の術を修得していることもね。」
「分身の術? 誰がそんな事を?」
「ぱぱんぃよ。」
「あのフェレの言うことは信用しない方がいいですよ。」

「それでは、交渉が失敗した場合の軍事的プランについて聞かせてちょうだい。」
「はい、グー女王。」ゲンタが立ち上がって、プロジェクターの前に立った。「照明を落としてくれ。」
「ちょっと待って!」グー女王が言った。「そのジャンバーいいじゃない! どうしたの?」
「あ、これですか? エヘヘ、ナポレオンJrにもらったんです。正式には、北川ジャンパーバージョン1っていうんです。」
みんな羨ましそうに、ゲンタのジャンバーを見つめた。

「あの、軍事的プランを話してもいいかな。」ゲンタが言った。
「あ、そうね。話してちょうだい。」グー女王は、なごり惜しそうに言った。
部屋の照明が消え、プロジェクタに惑星ジパンの映像が3D映像として投影された。
「正面から力と力が衝突するのは得策ではありません。一般市民まで巻き込んだ大量の犠牲者が出ます。そこで、次の作戦を立案しました。」ゲンタは、プロジェクターの映像をジパン連邦の議事堂の映像に切り替えた。
「作戦の目的は、ジパン連邦の中でクーデターを起し、現政府を転覆させることにあります。」

「クーデター?」グー女王が聞いた。
「はい、そうです。今回のケースにおいて、最小限の作戦行動、および、最小限の被害で目的を達するベストな方法であると考えます。」ゲンタはちょっと水を飲んで話しを続けた。
「作戦行動は、3つのチームに分かれて実行されます。ジパン連邦空軍基地を制圧するレッドチーム、議事堂を制圧するグリーンチーム、そして報道機関を制圧するブルーチームの3チームです。これらのチームは完璧なタイミングで動かなければなりません。また、作戦の目的がクーデターである以上、表立って活躍するのは反乱軍でなければなりません。我々は、見かけ上は作戦をサポートするだけです。では、グリさん。」
グリは立ち上がると、話を引き継いだ。

「レッドチームは、マロンが指揮官となります。マロンは、ジパン連邦空軍基地に潜入したことがあります。また、その際に大量の機密データをダウンロードしました。その中に基地の見取り図も含まれています。マロンは、少数の反乱軍のメンバーを率いて基地に潜入して戦闘機を無力化すると同時に司令室に突入にして指揮系統を遮断します。その隙に惑星ジパン上空のレーダー圏外で待機していたマーリングリスル空軍の戦闘機および兵員輸送機が大気圏突入をして制空権を確保します。」
プロジェクターに、戦闘機および兵員輸送機が惑星ジパンに突入する経路が3Dグラフィックスで示された。

次にクッキーが立ち、話を引き継いだ。
「グリーンチームは、あタロウが指揮官です。マロンのチームの働きにより上空を制圧した後で、兵員輸送機は議事堂の芝生に着陸します。あタロウ達のチームは、先行して議事堂に潜入して、この着陸地点を制圧確保します。兵員輸送機は、合計で4機、それぞれに15匹のマーリングリスル海兵隊のフェレ中隊が乗っています。輸送機から飛び降りた60匹のフェレ中隊、および、あタロウのチームは、そのまま議事堂および隣接する首相官邸に突入して首相と議員の身柄を拘束します。」

グリが再び話し始めた。
「最後のブルーチームですが、更に細かく3チームに分かれます。テレビ局を制圧するゼンジのチーム、ラジオ局を制圧するニマメのチーム、そして新聞社を制圧する健太のチームです。それぞれのチームは、マロンのチームが空軍基地を制圧した直後に突入して制圧します。」

一同は作戦を理解するために、しばらく無言で考え込んだ。
「作戦が成功して新政府が立ったときに、誰が首相となるのかしら?」グー女王が聞いた。
「マロンです。」グリとクッキーが迷わずに声を揃えて言った。
「ブルーチームは、マスメディアを占拠した後に予め用意しておいたマロンの新政府樹立宣言のテープを全国放送で流します。耳の不自由なフェレや、関西弁の分からないフェレの為に字幕も入れておきます。」グリは、その日を夢見るかのように言った。
「しばらくはマロンの暫定政権となりますが、落ち着いたら選挙を実施します。マロンが再選されるとは思いますが。」クッキーが微笑んだ。

「大事な事を忘れていた!」ムウが突然言った。
みんなはムウに注目した。
「そんなにみんなで見ないで。。。」ムウが照れた。
「早く言いなさいよ。」ミクが言った。
「惑星ジパンには、凶悪な鼻毛星人がいるらしい。」
「誰から聞いたの?」ミクが言った。
「ぱぱんぃさ。」
「あのフェレの言うことは信用しない方がいいですよ。」
ぷりんは深くため息をついた。


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