22章 平和的解決


ぷりんは、目黒の間で発見された。どうやら目蒲廊下に迷い込んでいたらしい。なぜ目蒲廊下に迷い込んだのかは謎として残されたが、とにかく会議が再開された。

「私がここに呼ばれた理由は分かりました。」ぷりんはマユの映像を無言で見た後で静かに言った。「でも、私は無闇な戦いは好みません。平和的な解決の道を探しませんか?」
「勿論それを一番最初に考えましょう。」グー女王が言った。「でも、私はこの星を守る義務があります。みんなが平和に楽しく暮らすためには、あらゆる手を尽くすつもりです。軍事的な作戦も含めてね。」
「ジパン連邦に、使節団を送ってみてはいかかでしょう? 話し合いの場を作るのです。」ぷりんが提案した。「食料が目的なら、それを輸出してあげればいいのではないかしら?」
「そうだな。幸いに、食料は輸出するに十分なだけ確保できる。」食糧部長官のタモが賛同した。
「輸送船団も、定期的に割り当てることも可能です。」運輸部長官のブリュンも賛同した。
「どうやら、これが平和的解決のようね。」グー女王が満足そうにうなづいた。「さて、次は最悪のシナリオを検討しましょう。交渉が決裂した場合の対処です。」
「基本的には、マロンの作戦に賛同する。」防衛部長官のゲンタが言った。「ただし、作戦としてはまだブレイクダウンが必要だ。」
「その研究には、どれ位かかるかしら?」グー女王は言った。
「72時間は必要だ。」
「48時間で研究して下さい。」グー女王は静かに言った。
「分かった。グリさん、クッキーさん、それでいいですか?」
グリとクッキーはうなづいた。「ベストをつくします。」
「それでは、それぞれの部門でこの件を検討して下さい。48時間後に、また会議を開催しましょう。」
みんなバラバラと席を立って、会議室から出ていった。

ミクが会議室から出ようとしたところを、ぷりんに呼び止められた。
「マユは元気でしたか?」ぷりんは言った。
「ええ。そのように見えたわ。」
ぷりんは、微笑んだ。しかし、その微笑みはすぐに曇った。ぷりんは静かに言った。
「私、平和的な解決ができる可能性は少ないと思うの。」
「え?」
「マユのことはよく知ってる。さっきの映像、マユは泣いていたわ。あの負けん気の強い娘が涙を溜めていたのよ。」
「・・・・」
「マユの意見が、ジパン連邦の閣僚に無視されたのよ。」
「・・・・」
「だから。。。平和的な交渉も。。。」
「どうして、その事を今の会議で言わなかったの?」
「平和的に解決できる可能性があるなら、その可能性を失いたくなった。」
「・・・・」
「戦争はいや。」
ミクは、ニコリと笑った。「マユが、どうしてあなたに助けを求めたのかが、よくわかったわ。大丈夫よ。交渉はうまくいくわ。」
ぷりんはしばらく考えて、やっと口を開いた。
「あの人だったら、こんな場合どうするかしら?」
「あの人?」
「あ、ごめんなさい。私の師匠よ。鳴鼬拳の。」
「誰なの?」
「マスターAko。。。こんな場合、あの人はどうするんだろう?」
「聞きに行ってみる?」
「ここから遠い惑星アコンィに住んでいるのよ。48時間じゃ行ってこれないわ。」
「大丈夫。彼なら。」

「惑星アコンィ!? どこだいそりゃ?」虎は声を上げた。
ぷりんは星図を広げて、指差した。
「ずいぶん遠いじゃないか。」
「48時間以内に、ここに行って戻ってきたいの。」ミクは言った。
「そりゃムリだ。」虎は肩をすくめた。
「自慢のカローラって、大したことないのね。」ミクは鼻で笑った。
「何言ってやがんだい。宇宙一速い船だぜ。」
「でも、ムリなんでしょ?」
「ああムリだ。」
「カローラを貸してくれ。オレが操縦する。」ムウが突然言った。
「へ!? あんたが? 冗談はよしてくれ。それに誰がやったってムリなものはムリさ。」
「やってみないでどうして無理だと決めつける。」ムウは言った。「それに、こんな物も持っている。」
ムウは、パーツのような物をカバンから取り出すとゴトリと机に置いた。
「スーパーチャージャーじゃないか!!」虎の目が輝いた。
「さっき、ぷりんを探しているときに倉庫で拾った。」
「こんな物が落ちてるわけ。。。ムウ、おまえやったな!」
ムウはニコリと笑った。
「こいつは飛行しながら取り付けられる。みんな、何グズグズしてるんだい。ミク、車を用意してくれ。空軍基地まで行くんだ。カローラまで行くんだよ。」虎はスーパーチャージャーを手に取り眺めながら叫んだ。

マーリングリスル空軍基地から虎の操縦するカローラが、ミク、ムウ、そして、ぷりんを乗せて離陸した。


前頁へ 目次へ 次頁へ