19章 女王


カローラの警報アラームが鳴り出した。
「どうしたの? 何なの?」ミクは不安な声だった。
「どうやら、お迎えが来たらしい。」
その言葉通りに、無線の声が飛び込んできた。
「カローラ、聞こえるか?」
「ああ、よく聞こえるよ。」虎が応じた。
「我々は、マーリングリスル空軍だ。9時の方向から接近している。見えるか?」
虎は、その方向に顔を向けた。2機の戦闘機の姿を見つけた。
「ああ見えた。」
「OK。そいつがオレ達だ。君たちから向かって右が源さん小尉。左が私、テツ大尉だ。ようこそマーリングリスルへ。」
「オレは、影虎。虎と呼んでくれ。」
「OK、虎。基地まで誘導する。2番機の位置についてくれ。我々の間に入るんだ。」
「了解。」虎は、カローラを指示された位置につけた。
「さあ行こう。ついて来てくれ。」

「私達、歓迎されたのかしら?」クッキーが独り言のように呟いた。
「さあね。また監獄にぶち込まれたりして。」ムウが言った。

マーリングリスル空軍基地の滑走路が見えてきた。
「虎。一番右端の滑走路に着陸してくれ。」テツが指示した。
カローラの着陸を確認したテツと源さんは、左右に翼を振り飛び去った。
地上に降り立ったミク達に、1匹の男が近づいてきた。
「マーリングリスルへようこそ。私はゴエモン中佐です。あなた達を宮殿にお連れするように指示されています。」ゴエモンは、手を差し出した。長い指をした大きな手だった。
ミク達は、順に握手をして挨拶をした。
「さあこちらへ。車が待っています。オープンカーですよ。風を切って走るのは楽しいですから。」

車は美しい町並みを通り過ぎ、やがて宮殿の敷地へと入り、正面玄関で停止した。
「着きました。降りて下さい。」ゴエモンが先に降りて、後部座席のドアを開いた。
「さあこちらです。どうぞ。」

ミク達は、宮殿の中の会議室に案内された。
「お客様を案内しました。」ゴエモンは、部屋のみんなに紹介した。
一番奥の席に座っていた女王は立ち上がると、ミク達の側まで歩いてきた。
「お疲れなのでは? シャワーを先になさりたいのなら、どうぞそうなさって下さい。それとも食事が先の方がいいかしら?」女王はミク達に声をかけた。
「食事をいただきましょう。」ムウがうなずいた。そのムウの後頭部をミクがはたいた。
「お気遣いありがとうございます。でも、少しでも早く用件を伝えたいのです。」
「わかりました。私は、この星の女王でグーといいます。さあ、こちらにおかけください。ゴエモン少佐も席についてちょうだい。」
ミク達は、長いテーブルに用意された席に座った。
グーは、自分の席に戻りながら、会議に参加しているフェレ達を紹介した。
「彼は防衛部長官のゲンタ、彼女は環境部長官のルビィです。その隣の彼女は厚生部長官のルビー。環境部長官と名前が似てて紛らわしいから間違えないでね。彼女は文化部長官のラーサ。マヨネーズを舐めている彼はタモ。食糧部長官よ。彼女は運輸部長官のブリュン。」
グーは席についた。
「さて、お話を聞かせて下さい。我がマーリングルスルが危機ということですが。」
ミクは、ディスクを取り出してテーブルの上に置いた。「まずは、これを再生してみて下さい。」

ディスクが再生された。マユの映像が消えると、グリが話し始めた。
「私達は、このジパン連邦のやり方に強く反発している組織の者です。私達のリーダーのマロンは、あなた方との共同作戦を提案しています。作戦の内容はこうです。」グリは、共同作戦の案について話した。
「なるほど。マロンは相変らずの戦略家だ。」ゲンタが感心した。
「マロンをご存知なのですか?」クッキーが驚いた。
「ああ知ってるとも。昔、一緒に戦ったこともある。」ゲンタは懐かしそうな顔で言った。「もしかして、あタロウもいるのかな?」
「ええ。あタロウも一緒に戦っています。どうしてご存知なのです?」
ゲンタは笑った。「ふふふ。やっぱりな。奴等は親友でありよきライバルだったよ。お互いに刺激しあっていた。」
「他人のふりして我が身を守れ、ってやつですな。」ムウが言った。
「他人のふり見て我が身をなおせ、って言いたいの? こんな場所で、もうやめてよ。」ミクは今回は本気で怒った。
ただ、グー女王だけには異常にウケていた。


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