18章 迎撃


光速航行を終えたカローラのフロントウインドウ全面に、惑星マーリングリスルが広がっていた。
「きれいな星ね。」ミクが感嘆の声を上げた。
「そうですね。この星の70%の面積は淡水の海です。」グリがデータベースを検索しながら言った。「きれいな中性の水と温暖な気候が、この星に素晴らしい自然を育んでいます。平均気温は20度。どんなに暑い日でも25度を超えることはありません。寒い日も、せいぜい15度止まりです。ほら、あの大地の色を見て。」グリが指差した。
「深く美しい緑に覆われているわ。」ミクはうっとりとした目で言った。
「ええ。この星の住人は、星の健康管理にも気を配っているんです。」
「ジパンの連中が狙うのも無理はない。完璧な環境と、そこで採れる豊富な食料。植民地にはもってこいだ。」ムウは感心した。
「何を感心してるのよ。」ミクはムウを睨んだ。
「どこに降下すればいい?」虎が聞いた。
「まずは、この星の女王に会いに行きましょう。我々が来た理由を話せば、ぷりんさんに会えるよう手配してくれると思います。」クッキーが提案した。
「いい考えね。」ミクは同意した。みんなの意見も同じだった。

あづき、チョビ、ティナの3匹は、道場を出るとショッピングモールに遊びに行った。
「ねぇ、獣道に行かない?」ティナが提案した。
あづき達は、酒場<獣道>の前まで走って行き、窓から店内を覗いた。
「誰かいる?」チョビが言った。
獣道の店内には、客が1匹しかいなかった。いつものように温泉の帰りに寄ったらしい。首からタオルを下げて、1匹で飲んでいた。タオルには<52>と刺繍があった。
「うなちゃんが来てる。入ろ!」ティナが言った。
3匹は店内に入った時は、うなちゃんが別の出口から出た後だった。
「またすれ違い。。。」

マーリングリスル・スペース・エア・ポートの管制室では、ムギがレーダーに新たに輝点が発生したのに気がついた。ムギは、チーフを呼び出した。
「チーフ。飛行申請のない船が接近してきています。」
「なに!?」グリコは、ムギの横に急ぎ足で行くと、レーダーを覗き込んだ。
「船種は?」
「不明です。が、どうやら中型戦闘機のようです。」
「機数は?」
「1機だけです。」
「空軍基地に連絡を入れておけ。」グリコは、腹をさすりながらつぶやいた。「たく、腸重積が治ったばかりっていうのにな。。。」
ムギが空軍基地に連絡を入れた。その回線を切った直後に虎からの交信が飛び込んできた。
「こちらカローラ。船籍惑星ジパン。着陸許可を申請。」
ムギとグリコは顔を見合わせた。
「繰り返す。こちらカローラ。船籍惑星ジパン。着陸許可を申請する。」
グリコはムギにうなづいた。
「こちらMSAP。要請を受信。」
「エムサップ?」
「マーリングリスル・スペース・エア・ポートの略よ。」
「ああ、なるほど。で、着陸していいのかい?」
「着陸の目的は?」
「我々はメッセンジャーだ。重要な情報をもってきた。」
「重要な情報? 何なの?」
「交信では詳しくは言えない。マーリングリスルの危機に関する情報とだけ言っておく。直接女王に話したい。」
グリコは、ムギのマイクを取ると言った。
「カローラ、そのまま待機してくれ。」

「待ってろってさ。」虎は、両手を広げて首をすくめた。
「無理もないわ。突然おしかけたんだもの。」
「まあ、彼らにしてみれば、お耳に水ってとこだろう。」ムウが物知り顔でうなづいた。
「それを言うなら、寝耳に水。」ミクがため息をついた。

マーリングリスルの空軍基地では、MSAPからの連絡を受けて、源さんとテツが操縦する2機の戦闘機ムラザックがスクランブル発進した。


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