15章 使者


「彼女の名前は、ぷりん。」そこでマユの立体映像が揺らいで消え、司令室に沈黙が訪れた。

「マーリングリスルのぷりんは、知ってヤツや。」マロンが沈黙を破った。「ぷりんは天性の方向音痴だが、なかなか頭のきれるヤツや。ぷりんと共同作戦をとるのも悪くない。」
「共同作戦?」ニマメが聞いた。
「そや、ワシ達は反乱軍といっても所詮ゲリラ行動しかとれへん。満足な装備がないからや。いつまでもゲリラ作戦ばかりを展開しても埒があかない。」
「でも、ゲリラ行動も有効よ。」メグが言った。
「話を最後まで聞け。マーリングリスルは、ここから離れた別の惑星や。ジパン連邦がマーリングリスルを攻撃するのは、めっちゃしんどいことや。だから、ジパン連邦は奇襲をかけて一気に勝負をつける魂胆や。」
「でも、マユの情報をマーリングリスルに流せば、奇襲は失敗する。」グリは言った。
「そうや。そして戦いは長期戦になる。マーリングリスルは、ワイの生まれた惑星や。そう簡単には力に屈したりはせん。戦いは必ず長期戦になる。」
「犠牲フェレがたくさん出るわ。」クッキーが言った。

「この戦い勝敗のカギは何だと思う?」マロンは、みんなの顔を見た。誰もが答えに困った。
「補給基地や。それも、ちょいと手を伸ばせば相手のノドに剣を突き立てられる位置にある補給基地や。」
クッキーの顔が輝いた。「この基地がマーリングリスル軍の補給基地になるわけね!」
「そや。それがマーリングリスルとの共同作戦ってなわけや。」
「いい考えだ。これでジパン連邦を倒せる。」グリが叫んだ。

「オレがマーリングリスルに行こう。」今まで無関心を装っていたムウが言った。「オレが知らせに行くよ。マロンは、ここで色々と準備があるんだろ?」
「オレ達、でしょう。」ミクがニコリと笑った。
「ふっ。夏毛の気まぐれってやつだな、ミク。」ムウが遠い目をして言った。
「何わけの分からないこと言ってるの。」ミクが突っ込んだ。
「カローラはいつでも飛ばせるぜ。」虎が言った。「植民地にしようっていう位だ。食い物がどっさりあるんだろ、そのマーリングリスルって惑星はよ。オレも行くぜ。」

「みんな、おおきに。しかし、これはワシ達の問題や。」
「もう私達の問題でもあるのよ。」ミクが言った。「ジパン連邦が次に狙うのは、私達の惑星ホーモツデーンかもしれない。ヤツらは、私達の脱出用ポットに残された食料について調べて いたもの。」
「そうさ。」ムウが言った。「昔から言うじゃないか、袖すり切れたダチョウは変、ってね。」
「それを言うなら、袖振れ合うも他生の縁、でしょ。たく、おやぢギャグなんだから。。。」ミクは溜め息をついた。

「頼んでも。。。大丈夫なんやろか。。。」
マロンは、ミクの顔を見つめた。ミクも真剣な瞳でマロンを見つめた。マロンは、なんだか吹き出しそうな気分になった。目の下の模様のせいでミクがひどくタレ目に見えたからだ。マロンは笑いをこらえて言った。
「わかった。頼もう。」
「ボクも行きます。」グリが言った。「ぷりんさんと共同作戦の調整をする必要があると思うのです。作戦部の代表としてボクも行った方がいい。クッキーも来るだろ?」
「もう、寂しがり屋さんなんだから。いいわ。」

虎は、カローラのコクピットに座ると、手際良く計器をチェックして管制室を呼び出した。
「管制室、こっちはオールグリーン。いつでも飛び出せるぜ。」
「了解。2番滑走路を使ってちょうだい。」管制室で琴が応じた。
ミク、ムウ、グリ、クッキーは、それぞれバケットシートに体を固定した。
「タキシングに入る。」虎は、カローラを2番滑走路に向けた。
「進路クリア。上空に敵機なし。」琴はレーダを確認しながら通知した。
「了解。ところで君、いい声だね。帰ってきたらデートしないか?」
「覚えておくわ。」琴は笑った。
「忘れるなよ。」虎は、計器をもう1度チェックするとスロットルを開いた。
「離陸する。」
虎は、スロットルをいきなりMAXまで開いた。
「うっひょろひょろろぉ〜」虎の訳の分からない奇声を残して基地を飛び出したカローラは、星空に向かって急上昇していった。


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