14章 マユ


3機のブラックバナナは、反乱軍の要塞3への最終アプローチに入っていた。
「あタロウだ。滑走路の誘導レーザを点灯してくれ。」
「おかえり。あタロウ。」琴が交信した。
「お兄ちゃんは? お兄ちゃんはいるの?」ブンタの声が割り込んだ。
「大丈夫よ。」ベベの声だった。「後ろで居眠りしてる。疲れたのね。」
グリーンの誘導レーザが、進入経路を空間に示した。

ブラックバナナが全機着陸し、あタロウ達は格納庫に降り立った。
ブンタを先頭に、鈴、ニマメ、メグ、健太、グリ、クッキーが奥から走ってきた。ブンタは、センジに飛びついた。
「おいおい。」ゼンジは照れた。
「よかった。本当によかった。」
「いい子にしてたか?」
「うん。」
ゼンジは、ブンタの黒い頭を撫でながら言った。「おまえがいないと、どうも調子が狂っちまう。」

管制室では、琴がマロンからの通信を受信した。
「マロンや。」
「どうしたの? もうみんな着いてるわよ。」
「全員無事か?」
「ええ。」
「よかった。ちょっと手違いがあってな。違う船で帰ってん。格納庫の場所をキープてくれ。」
「了解。」
琴は、要塞3の格納庫の館内放送に切り替えた。
「ピンポンパポ〜ン。マロンが帰ってきたわ。安全な場所に待避してちょうだい。」
そのアナウンスが終わらないうちに、カローラが飛び込むように格納庫に突っ込んできた。みんなワラワラと逃げた。カローラは急停止した。
「腕がいいのはわかったから、今度からもっとまともに着陸してくれ。」ムウが首をコキコキと振りながら抗議した。
「ブレーキの調子もみたくてね。」虎が涼しい顔で言った。
「もし調子が悪かったら、どないするつもりやったっんや?」マロンが抗議した。
「そのときはスピンターンして、ここから飛び出すだけさ。」
「クルクル回るのは得意やったしな。」マロンが笑った。
「契約を破棄するか?」虎はむっとした。
「これからも虎の腕が必要なようやな。反乱軍の秘密基地へようこそ。」

みんなが、要塞1の指令室に集まっていた。
「私の名前はミクです。惑星ホーモツデーンの星間定期輸送シャトルのパイロットです。彼は、相棒のムウ。」
ムウは照れていた。
「ごめんなさいね。みんなに見られるの、ムウは苦手なの。」
ムウは、照れ隠しに大きなあくびをした。
「みんな、私達も助けてくれてありがとう。そうそう、助けてくれたと言えば、監獄から脱出できたのはマユっていう女性のおかげなの。彼女に、落ち着いたらこのディスクを再生してくれって手渡されたの。これよ。」ミクは、ディスクを取り出した。「マーリングなんとかを助けて欲しいって。」
「マーリングリスルか!?」マロンが思わず叫んだ。
「確かそんな名前。」
「再生してみよう。」
琴はミクからディスクを受け取ると、ドライブ装置にセットした。
3D立体映像のマユの姿が現れた。再生されたマユが話し始めた。

「私はジパン連邦の食糧庁技師をしているマユといいます。私の努力が足りないばかりに、みなさんの食料をうまくキープできなくて、申し訳ないと思っています。」
「あんたのせいじゃない。」マロンはつぶやいた。
「今、ジパン連邦は食料確保のため、他の惑星の植民地化政策を決定し、最初の惑星をマーリングリスルに決定しました。」
「リーダの星だ。」ゼンジが思い出して叫んだ。
「まだ占領軍を編成中ですが、それが派遣されるのも時間の問題です。そこで、みなさんにお願いがあるのです。マーリングリスルに住む私の友人に、この話を伝えて下さい。」
映像のマユの目に涙が光っていることに、みんなは気がついた。
「その友人は、クールフォレットの町に住んでいます。彼女の名前は、ぷりん。」


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