9章 スパイ


マユは監獄の中に急ぎ足で入ってきた。
「私はマユ。ジパン連邦食糧庁の技師をしています。とにかく、このディスクを落ち着いた場所に着いたら再生して下さい。」マユは1枚のディスクを差し出した。
「なあミク、最近訳のわからないことが続くやね。」ムウは両手を広げて目をぐるりと回した。
「そもそものきっかけは、あなたでしょう。」ミクはため息をついた。
マユの顔が曇ったが、すぐに早口で話し始めた。
「時間がありません。通路に出て、右側に曲がって下さい。すぐに排気ダクトがあります。ネジは外しておきました。そこに入って下さい。これはダクトの地図です。ダクトを使えば滑 走路まではすぐです。」
「ちょっと待った。」ムウは言った。「つまり、逃がしてやるということか?」
「さっきからそう言ってます。マーリングリスルに危機を知らせて欲しいのです。」マユはミクにディスクと排気ダクトの地図を押しつけた。

「どうしてこんなことをする。」ムウは聞いた。
「私の両親がマーリングリスルに住んでいるからです。助けたいの。」
「こんな事をして、マユは大丈夫なの?」ミクは、マユの立場が心配になった。マユが味方であることをミクは本能的に知ったのだった。
「私を殴って下さい。」
「へ!?」
「私は、あなた達の脱出用ポットに残されていた食料について調査をする目的で、この基地に呼ばれました。」
「ああ、あれは美味かった。」ゼンジが思い出して舌なめずりをした。
「そして、仕事熱心な私はもっと詳細を知るために、あなた達を尋問することにして、ここに来て、」マユはニコリと笑った。「囚人達に襲われてしまいました。」
「なるほど。」ムウとミクもニヤリと笑った。
「マユも一緒にこないか? オレ達と戦わないか?」ゼンジが言った。
「ありがとう。でも、私はここに残ります。ここにいて、情報をあなた達に流すことを私の戦いにするわ。」
「強いんだね、マユは。」ゼンジは言った。
「さあ急がないと。早く殴って下さい。でも、顔はぶたないで。私可愛いから。」
ミクはむかっときて、マユを思いっきり殴った。

「基地が見えた。低空から突っ込むぞ!」マロンが叫んだ。
4機のブラックバナナは、急速に高度を下げた。
「アカメ!」マロンは言った。「うんこ漏らすなよ。」
「もう手遅れでんがな。」
あタロウは2時の方向の燃料貯蔵庫に照準を合わせた。
「簡単な仕事さ。」のんびりと言った後でリップルレーザーのトリッガーを引き絞った。


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