6章 総司令官


マロン達が脱出用ポットに踏み込んだちょうどその頃、ミク達を乗せた兵員輸送シャトル<キャリー>がジパン連邦空軍基地に着陸した。

ミク達は、ヤクト少佐の後に続いて、複雑に入り組んだ基地の廊下を歩いた。
「ねえ、ムウ。フフフッ。。。」ミクが小声で囁いた。「ヤクト少佐って、小さいくせに頭が大きくない?」
「そうだね。」ムウもニヤニヤしながら小声で返した。
「さあ、諸君。この部屋だ。」ヤクト少佐は、1つのドアを開いた。

その部屋は狭かったが、機能的にレイアウトされていた。中央にある大きな机のむこうに、1匹のバターなフェレが座っていた。その男はヤクト少佐とミク達が部屋に入って来たのに気づいて顔を上げた。
「適当に座ってくれ。私は、シュテルン=フライヘル=フォン=ハルトネッキヒ=男爵だ。この基地の総司令官だ。」
「自分でお名前を言い間違えること、ありません?」ミクは言った。
「いやそんなことはないさ。しかし、私のペットの十姉妹の名前は時々間違えてしまうよ。ちなみにその名前は、ぺぺ=リョウラ・キンシュウ=ペプシ・コーラ=実篤と言うんだがね。つ いでに言うと、私の母の名前は、」
「総指令殿、もうその辺で。。。」ヤクト少佐が遮った。
「そうだな。ところで、君たちの名前を聞いていなかったな。」
「ミクです。」
「ムウだ。ストロベリーと呼んでも振り向かないぜ。」
「ゼンジ。」
「結構。ところで、リーダーは誰かな?」
「マロンさ。」ゼンジは自慢気に答えた。
男爵のヒゲがピクリと動いた。
「マロン? 今聞いた君たちの名前にその名前はなかったはずだが。。。ほう、マロンね。」男爵は、ヤクト少佐に向かって目配せをした。
ヤクト少佐は小さくうなずくと、室内の護衛をしていた6人の兵士に合図を送った。
兵士達は、ミク達が座る椅子の左右にそれぞれ駆寄り、一斉にミク達の体を椅子に押しつけて身動きがとれないようにした。

「何のマネだ!」ムウは叫んだ。
男爵は、机から爪切りを取り出しながら言った。
「反乱軍のリーダのマロンを知っているようだな。もっと話を聞かせてもらおうか。」
「何を言ってるの、リーダーは私よ。」ミクが叫んだ。
「シラを切ってもムダだよ。」
男爵は、爪切りをムウの右前足の爪に当て、プチンと切った。
「さあ、話してもらわないと、今度は血管の近くを切るよ。」
「やめろ! それだけはやめるんだ!」
「さあ、話すんだ。マロンはどこにいる!」
「何の話だ!? 知らないものは話しようがない。マロンってヤツは本当に知らないだよ。」ムウは力強く言った。
男爵が爪切りに力を入れようとしたとき、ゼンジが言った。
「オサカの森の。。。」
男爵は手を止めてゼンジを見た。
「オサカの森の北の外れの谷。」ゼンジの声は震えていた。
「結構。大変結構。」
男爵は、爪切りを机にしまうと、ニッコリと笑った。


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