4章 招待


ムウは、冷凍睡眠装置からだらしなく滑り出て、大きなあくびをしながら言った。
「何が起きたんだ?」
「脱出用ポットのコンピュータが、私達が生存可能な星を見つけて、不時着したのよ。」
「それで、冷凍睡眠状態が自動解除されたってわけか。」
「そういうこと。」
「で、ここはどこ?」
「惑星ジパンって星だって。」
ムウは確かめるようにゼンジを見た。ゼンジはコクコクとうなずいた。
「ところで君は?」
「あ、う、ゼンジだい。」

その時、ハッチの入り口でフェレ影があった。
「さあ、大人しくしてもらおうか。」
戦闘アーマーに身を包んだ兵士達であった。兵士達はビームライフルの銃口を3匹にピタリと向けた。
「おいおい、そんな物騒な物はとっとと下げるんだ。」
ムウはのんびりした口調で言って1歩前に出たが、ビームライフルの銃口の光が増すのを見て、3歩下がってミクの後ろに隠れた。
「あなたたちは?」ミクは言った。

「私が話そう。」
兵士達を割って、1匹のフェレが入ってきた。
「君たちのことは、大気圏レーダでキャッチしていたよ。それで何かの助けになると思って、ここに駆けつけたわけだ。そうそう、私は、ジパン連合空軍のヤクト少佐だ。」
「それなら、どうして私達に銃を向けるの?」
「おっしゃる通りだ。この兵士達は私の受けた命令を知らなかったんだよ。お前ら銃を下ろせ。」ヤクトは兵士に命じた。
「さて、惑星ジパンにようこそ。ささやかだか歓迎パーティを用意しているので、ちょっとツダヤマまでお越し頂けないかな?」
「ツダヤマ?」
「ああ失礼。我々の本部のある場所だよ。どうだね?」
ムウは、ゼンジが震えているのに気がついた。
「いやだね。」ミクの後ろからムウが言った。
「それは残念だ。素敵な女性もたくさん待っているのだが。」
「行きましょう。」ムウは頭を撫でつけながら言った。
「オレは関係ないだろ。帰らせてもらうよ。」ゼンジは震える声を抑えて虚勢をはりながら言った。
「おや、膝枕が上手な女性も招待したのだが。」

浮かれ気分のムウとゼンジ、そして呆れ顔のミクを乗せたジパン連合空軍の兵員輸送シャトル<キャリー>は、脱出用ポットの側でフワリと浮上し、空軍基地に進路を向けた。そのシャトルを取り囲むように、3機のH型戦闘機<ハーネス>が護衛についた。
体勢の整った4機は、完璧なタイミングでバーナーを同時に噴射し、星の輝く夜空に残像を残して消えていった。


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