3章 不時着


ゼンジは、こうして誰もが寝静まった夜に一人で森を散歩するのが好きだった。満天の星空を森の木々の隙間から見上げ、星たちに吸い込まれていくような一瞬を感じる時、ゼンジは本当の自分を取り戻したような気がするのだった。
ゼンジは、お気に入りの切り株に腰をかけると、いつものように星空を見上げた。
「おっ!流れ星だ。」
ゼンジは願い事をつぶやこうとしたとき、その流れ星から3つのパラシュートが開き、ゆらゆらと森の向こうに落下しはじめた。
ゼンジは、その正体を迷わずに確かめることにした。新しい物には、みんな興味があった。

その物体は、開けた草原に着陸していた。
「ぶったまげた! こいつは宇宙船だ。」
ゼンジは、しばらく遠巻きに眺めていたが、やがて好奇心が勝ってもっと側に寄ることにした。
船体に沿って回っているうちに、ハッチを見つけたゼンジは、試しにカリカリと引っ掻いてみた。意外と掻き心地がいい。ゼンジは、夢中で引っ掻き始めた。
「お兄ちゃん!」
その声にゼンジは飛び上がって、思わずモケモケと後ずさりをしてしまった。弟のブンタだった。
「なんなの? これ?」
「驚かせるんじゃない! また下痢しちゃうじゃないか!」
「これ、宇宙船?」
「そうみたいだな。ところで、どうしてお前がここにいるんだ?」
「目を覚ましたら兄ちゃんがいなくて、それで寂しくて探してたんだ。そしたら、流れ星を見ちゃって。。。」
「とにかく、リーダーに知らせよう。ブンタ頼むぞ。」
「兄ちゃんは?」
「こいつを見張っている。」
ブンタはコクリとうなずくと、来た道を走り出した。

ゼンジは、しばらく宇宙船を眺めていたが、先ほどの掻き心地が忘れられず、再びハッチを引っ掻き始めた。
突然ハッチが開いた。ゼンジが偶然にもOPENボタンを押した結果であったが、ゼンジはとっさに死んだふりをした。
やがて、恐る恐る船内に入ったゼンジは、食料ボックスをすぐに発見した。
「食料だ! ありがてえ。最近何も食っちゃいなかったからな。おっ! フェレットフードだ!! 何てついているんだ。久しぶりの銀メシってやつだな。」
ゼンジは、夢中で食べはじめた。他人のメシは、どうしてこんなに美味いんだろう。ゼンジはフガフガと幸せだった。

「あなたは誰?」
その声にゼンジは驚き飛び上がった。
「私は、ミク。そして、寝起きが悪くてまだグズグズしているけど、彼はムウよ。」
「オ、オレはゼンジ。」
「ここはどこ?」
「こ、ここはオサカの森のはずれの草原さぁ。」
「そうじゃなくって、何という星なの?」
ゼンジは次第に落ち着いてきた。
「馬鹿な事を聞くなぁ。惑星ジパンに決まっているじゃないか。」


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