2章 漂流


宇宙空間を漂う脱出用ポットの船内は、全てが凍りいていた。
ただ1つ休みなく活動しているのは、冷凍睡眠状態のムウとミクを守る生命維持装置と救助信号発信機のみであった。
宇宙を漂流して、既に3ヶ月が経過していた。

脱出の衝撃で気を失ったミクは、事故から3時間後に空腹を覚えて気がついた。状況を把握するまでに時間がかかったが、把握すべきではなかったとミクは後悔した。脱出ポットの現在位置get命令をコンピュータに入力しても、
「Not found」

と表示されるのみだった。メンバー専用のチャットルームと、獣道へのアクセスにも失敗した。
酸素、食料、そして水などのライフラインは1ヶ月であることはわかったが、それが十分な量なのかは、こんな状況では判断できなかった。
「あ〜よく寝た」
ムウが意識を取り戻した。ミクは、黙ってムウの首根っこに噛みつくと、船内引き回しの刑を与えた。

「状況はどうなんだ。」ムウは首をさすりながら言った。
「最悪よ。どこを飛んでるだかわかりゃしない。」
「食料や酸素は?」
「1ヶ月分位かな。」
「あれだな。"備えあれば嬉しい"、ってやつだ。」
「それを言うなら、"備えあれば憂いなし"でしょ。」
「とにかく、当面は大丈夫ってやつだ。」
「ねえムウ、罪の意識ってある?」
「ああ。昔、子供にを噛みついてケガをさせたことがある。あの時は、ちっとばかりやりすぎたようだと反省したよ。」
「・・・・・ないみたいね。」

結局、ミクとムウは冷凍睡眠の状態で救助を待つ事にした。酸素や食料は、万が一の場合に備えて少しでも多く残しておきたいという判断であった。
ミクは、救助信号を定期的に自動発信するようセットすると、ムウの冷凍冬眠装置を起動した。ムウは何かを言いかけていたのか、口と目を開けたままのマヌケな表情でフリーズされた。
その顔を見たミクは、なんだかムウが許せてしまった。ミクは自分の装置を起動し、微笑みを浮かべながらフリーズされた。

こうして3ヶ月が過ぎた脱出用ポットのコンソールの明かりが突然輝き始めた。ディスプレイにはこう表示された。

*** 生存可能な惑星発見。
*** 30秒以内に指示なき場合は自動降下プログラムを起動。
*** 降下しますか? [Yes/No] : _


前頁へ 目次へ 次頁へ