惑星ジパンでは、最高連邦議会が開かれていた。
その円卓に座わるマユは、先ほどから議論にうんざりしていた。
マユは食糧庁技師という立場から、惑星ジパンが現在かかえている深刻な食料不足問題の解決策として、”ネコエサ”と呼ばれる食品を当面のところ主食として代用する案を議会に提出し
たのだった。
議会の反応は予想外に厳しく冷淡なものだった。眉間に皺を寄せて「そんな得体の知れない物なんて食えるか」と声高に叫ぶ保守派の連中や、食の文化の低下と嘆く貴族院の連中を相手に、マユは再び同じ説明を辛抱強く繰り返した。
「気をつけなければならないのは、栄養のバランスです。実際に必要な栄養素が欠けているネコエサもあります。しかし、それを十分にクリアするネコエサもたくさん存在するのです。」
マユはここで一息をつくと、ゆっくりと議会のメンバーの顔を眺めていった。
「あとは気持ちの切り替えの問題です。受け入れさえすれば、私達は豊富なバリエーションと量の食料を得ることになるのです。きっと好みに合ったネコエサが見つけられるはずです。」
いたるところで嘲笑の笑いがおきた。議長もその一人であった。議長は、冷ややかな表情で言った。
「ありがとうマユ君。この話は前向きに善処するということで了解してもらえるかな。」
「議長、私の計算では現状のまま食料を消費すると、わずか半年で完全に不足する事態となります。ただちにネコエサを正式な食品として認可して、」
議長はマユの言葉を遮った。
「もう十分だ。さて、次の議題に移ろう。えっと、次は。。。ああこれだ。ぷぅ教授。」
「はい、議長。」ぷぅ教授は、眼鏡をかけ直すと話し始めた。「それではみなさん、手元の資料をご覧下さい。12ページ目です。そう、花マルトイレ実現計画および実施要綱とかかれて
いるページです。」
マユはわざと音をたてて資料を乱暴にかき集めると、ミーティングルームから足早に出ていった。
この議会を最後に、マユの提案は審議されることはなかった。やがて、食料不足はより深刻な問題に転がるように発展していった。
最終的に議会が採用した解決策は、最もマユが恐れるものであった。それは、食料の豊富な惑星の植民地化政策であった。要するに力による食料の略奪である。
最初のターゲットは、惑星マーリングリスルと決定された。
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