24章 もう1つの復活
ロイスは森の中を矢のように疾走していた。ロイスの喘ぐような呼吸により激しく吐き出された白い息が、静寂の森に長く伸びは消えていった。
途中、ロイスは崖の突端に立ち、明け方の空に向かって遠吠えをした。
「ワンワンワン。。。ワオーーンワオーーンワオーーン。。。ワンワンワンーーーー」
ロイスの力強い声は、山々に木霊して消えていった。そして、ロイスはまた走り出した。
あタロウは、ロイスが向かっている方向が次第にわかってきた。
「この方向は、マーリングリスルの村じゃないか!!」
「そうです。」ミュウが言った。
「どうして? 戦いに行くんじゃないの?」ぷりんが聞いた。
「その通りです。」ミュウは悲しそうな顔で答えた。
マーリングリスルも村の南のほこらでは、長老のカノンが守護神<にし>の象に語りかけていた。
「ついにこの日が来たようじゃの。にしさん。」
ミュウが甦った瞬間に、カノンにも昔の戦闘の記憶が甦っていたのだった。
「ミュウやムウ、それにミクと共に戦ったあの頃のワシは、もっと若かったんじゃがの。。。今のワシでもジステンバ魔王と戦えるかの。にしさん。」
カノンは知っていた。ジステンバ魔王自身がまず最初に倒しにくるのは年老いた自分だということを。
カノンが大きくため息をついたその時に<にし>の声が響いた。
「カノンよ。我の力をそなたに授ける。」
<にし>の顔が光り、その光がカノンを包んでいった。
暖かく優しい感触の中で、カノンは力があふれてくる自分を感じた。
太い腰、筋肉の盛り上がった肩、強い顎をとり戻したカノンは、一人つぶやいた。
「村に帰ったら、記念に自分の写真を撮ろう。」
「ジステンバ魔王は、マーリングリスルの村に迫っています。」
走るロイスの頭に乗ったミュウが鼻をヒクヒクしながら言った。
「間に合うの?」ミクが聞いた。
「ギリギリです。」
「あっ! あそこに若い女の人が全裸で倒れている!」
ぷりんが叫んだ。
「気にしないで。」ミュウが言った。「妖怪バッシーよ。」
「ロイス、ちょっと止まってくれ。」Cooが静かに言った。
「マロンが飛び降りやがった。」
南のほこらから出て来くると、チョビとティナが待っていた。
「私達も戦います。」
「何のことかな?」カノンはとぼけた。
「私達、立ち聞きしてしまったんです。」
「悪い娘達だ。」
「私達、意外と凄いんです。」
カノンは、2匹の細い体を見つめた。
「気持ちはとても嬉しいが、その体じゃムリじゃな。」
突然、ティナはカノンにバトルを挑み、チョビが壁を蹴って空中に舞い上がった。
危ういとこでティナの攻撃を避けたカノンは、空中から舞い降りてきたチョビに押さえつけられた。
「やれやれ。最近の若い娘さんは。。。」
カノンは体についた泥を払いながら立ち上がった。そして、2匹を眩しそうに見つめた。
「ジステンバ魔王はもっと強いぞ。油断すんじゃないぞ。」
チョビとティナは笑顔を見せた。
「はい! 長老さま。」
マーリングリスルに村に向かって更にスピードを上げたロイスの背中で、ボコボコにミクに殴られたマロンがのびていた。