22章 扉の向こうに
「伝説のフェレっていうから、もっと凄い登場の場面を想像してたんだけどな。」
Cooは少し残念そうだった。
「まあ、色々な演出を考えたんだけど、なんだか陳腐な感じがしてね。それに、最近ちょっと忙しくて、投稿の間隔が間延びしてしまったのも気になってたし。そんなわけで、一番描写が少なくてすむシーンを選んだっていうのが楽屋裏の話。」ミュウは弁解した。
「ねえ、誰に向かって話してるの? 意味がわかんない。」ぷりんは言った。
「あ、気にしないで。」
「まあとにかく、甦ってくれてありがとう。僕の名前はあタロウ。」
「あ、オレはCookie。でもみんなはCooと呼でいる。」
「私は、ぷりん。ひらがなのぷ・り・ん」
「私の名前は、」
「ミクね。」ミュウは静かに言った。
「どうして知ってるの。」
「私は、あなたの姉だからよ。」
ミクは驚いてしばらく言葉を失った。
「私には、姉はいないわ。」
「今の時代ではね。私が前回ジステンバ魔王と戦った時代では、あなたは私の妹だったのよ。」
「私も、一緒に戦ったの?」
「そうよ。あなたの牙が折れているのがその証拠。他にもいるわよ。」
「誰なの?」
「マーリングリスルの村の長老のカノン。彼も牙が折れてるわ。」
「そういえば、クラフフォレットの国の門番のぜんじも、下の顎に傷を負っていたわ。ぜんじもそうなの?」
「彼の場合は、洗濯機に戦いを挑んだだけ。」
「勇敢な戦士ね。」ぷりんは言った。
「・・・・・とにかく、私達フェレは必ず甦るの。でも、大抵は以前の記憶を失うのね。でも、たった1つだけ覚えていることがあるの。」
「それは?」
「この扉の向こうに楽しい世界がある、っていうこと。」
部屋の誰もが、扉を見つめた。
「あの扉の向こうに」あタロウが言った。
「楽しい世界が」ぷりんが言った。
「待っている。」ミクが言った。
Cooは深くうなずいた。
その扉の向こうに、すっかり自己紹介のタイミングを失ったマロンがモジモジして立っていた。