21章 復活


伝説のフェレが今夜蘇る噂は、「[misc]蘇る伝説」のSubjectで、たちまちクレイシーファージィの村中にe-mailで伝わった。
空からハンググライダーが舞い下りてきたのを見た誰かが、思わずあげた「シャー!」の奇声をきっかけに、村フェレ達は診療所に続々とおしかけてきた。

診療所のウランの部屋は、今や異様な静けさ包まれていた。
「さあ、始めよう。」あタロウが沈黙を破った。
「待って!」ウランが叫んだ。
ウランはミュウの前に立ち、静かな優しい声で言った。
「もし、あなたがどんな姿になろうとも、もし、あなたがママの事を忘れてしまおうとも、ママはあなたを愛しているわ。」
鷹も言葉を添えたかったが、うまい言葉がみつからなかった。
「なにもかもが終わったら、パパに会いに来い。一緒にうまい物を食おう。」
ウランと鷹はミュウを抱きしめたまま、時間がすぎていった。

「だめ、私にはできない。」ミクが言った。
「ミクの気持ちは分かるよ。でも、ミュウを蘇らせることは、
きっと大事なことなんだ。」あタロウが言った。
「違うの。」ミクは首を振った。
「え?」
「違うの。気が散るの。」
ミクが指差した方向に、Akokoが白いタイツにピンクのレオダード姿でワクワクした目をして立っていた。
「Akokoさん! なんて格好してるんだあ!」
あタロウは叫んだ。
「素敵な夜にしたいから。。。」Akokoは言った。
「それに、キョーンさんまで同じ格好して。あっ! キョーンのママまで!!」
あタロウは、がっくり肩を落とした。
「でも、色違いよ。」
キョーンとキョーンのママはお互いに顔を見合わせ、ニッコリと笑った。
「ゴメーン! 遅くなっちゃった。」
平田が太股を叩きながら、紫のレオタード姿で入ってきた。

「さあ、ミク。気にしないで始めましょう。」ぷりんが言った。
「はい。」ミクは大きく深呼吸をすると、ミュウの前に立った。
「ミュウちゃん。あなたの力が欲しいの。」
ミュウは、つぶらな瞳でミクを見つめていた。
「あなたは、私達を助けてくれるわよね。」
ミュウは、大きなあくびをした。
「呪文の言葉を唱えるわよ。」ミクは言った。
「ア・ネ・ス」
何も起きなかった。
村フェレ達は、拍子抜けしてゾロゾロと立ち去っていった。

「みんな帰ったようね。」聞き慣れない声がした。
ミク達は声のした方向を見ると、ミュウが微笑んでいた。
「ミュウなの? 甦ったの!?」ミクは興奮した。
ミュウはコクリとうなずいて言った。
「出会いは、さ・り・げ・な・く・・」

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