20章 帰郷


高い所に登ったら、母は驚いた顔をしながらいつも私を叱った。
高い場所には、きっと夢があると信じていた。ミクは、そんなことを思い出しながら、足元を流れる景色を見つめていた。
もうどれ位飛んだのか、ミクには分からなかった。
ただ、懐かしい匂いが近づいていることは確かだった。
太陽は地平線に消える頃、ミクの鼻先に冷たいものが落ちた。
雪だった。

「オレの村が見えてきた。」Cooが言った。
足元に続く森の向こうが、暖かい光に満たされている。
大きなクリスマスツリーのイルミネーションも見えた。
「クレイシーファージィの村だ。」Cooは言った。「期間限定バージョンだ。」
ミクは思った。あの光の中に、マロンがいると。

クレイシーファージィの村の診療所では、マロンは盗んだバナナの皮と引き換えに、鈴と琴にえっちなポーズをさせて喜んでいた。
医師のオカテツは、フェレの命の書をまとめる作業をすすめていた。この書がまとまれば、非常に価値あるものになることは間違いなかった。
「さて、ECEのNot Foundを解消するか。。」オカテツは背伸びをし、再び作業に戻った。
ウランは我が子にウラン乳を与えながら、8番目の乳首を探して部屋をひっくり返している鷹をあきれ顔で眺めていた。

「びわのおしりはネコのおしりに似ていると思いませんか?」
ウランはその声に驚いて戸口を見た。
いにしえの占師Akokoだった。
「占いによると、今夜あタロウ達がこの村に帰ってくるらしい。そして、今夜伝説のフェレが甦ると占いに出ておった。そんなわけで、マーリングリスルの村から来たわけぢゃ。」
「あなたも、あの馬鹿げた話を信じているの。」
「ちっとも馬鹿げておらん。あ、これおみやげ。」
Akokoは腰に下げた古い袋をゴソゴソ始めた。
「そ、その袋の中には。。。」ウランは慌てた。
「はい。博多名物辛子めんたい。産婦には辛いものが必要ぢゃ。」
どこまでAkokoさんはミステリアスなんだろう、とウランは思った。
「もうそろそろぢゃの。」
Akokoは窓から雪の振る夜空を見上げた。

ゲンタが来年もカルタチャンピョンの座を守るための練習をしている頃、うなちゃんがゲンタの座を狙って猛特訓している頃、昇り龍三兄弟のくま兄、シーナモン、ぎんたがグニレンジャーの衣装をたたんでいる頃、タモがマヨネーズプレイに興じている頃、FMLのロゴの書かれた2つのハンググライダーがクリスマスツリーの根元にゆるやかに着陸した。

「その者、金色の衣に包まれ、災い訪れる世に帰らん」
Akokoはそうつぶやくと遠くを見つめた。
マロンの鈴と琴に対する要求は更にエスカレートしていった。

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