5章 遭遇


「今夜はここで泊まろう。」
3匹が森に入って3日が過ぎていた。彼らは手際よく穴を掘り始めた。

「変だと思わないか?」あタロウがふと手をとめて言った。
「なにが?」ミクは鼻の頭についた土を落としながら問い返した。
「もう3日になるのに、モンスターに一匹も出会わない。」
「そうね。なんだか気が抜けちゃうわね。」
「本当にこの森にモンスターなんているんだろうか?」
「なんや! ワイが嘘ゆうた言うんか!」
「いや、そうじゃないけど、森はいつものままだ。」
3匹は鼻をヒクヒクさせて辺りの匂いを嗅いだ。爽やかな森の匂いがするだけだった。
「とにかく穴を掘ろう。眠くなってきた。」
あタロウのその声で、3匹はまた穴を掘り始めた。

マロンは傷の痛みに耐えていた。穴掘りのような重労働は特に傷に響いた。
森に入った最初の夜、あタロウはマロンの穴を代わりに掘ることを申し出た。しかし、マロンは自分の尻は自分で拭くと断った。みんな疲れているのに自分だけ楽をするようなことは、マロンにはできなかった。
「ちくしょう。」マロンは火照った体を冷やそうとキルトの鎧を脱いだ。
その途端、森は邪悪な気配に満ち、どこからか黒い影が猛烈なスピードで走り寄り、マロンを押さえつけた。モンスターのロイスだった。
口からヨダレを垂らしたロイスは、その黄色い牙をマロンに食い込ませようとしていた。
「シャー!」
ミクは悲鳴をあげた。あタロウはロイスの後頭部を噛もうと飛びついたが、ロイスの尻尾の一撃を受けて弾かれた。
「あタロウ!」
「大丈夫。殴られるのは慣れているよ。」
あタロウは再度アタックしたが、結果は同じだった。ミクは足がすくんでしまい、ただ「シャー!シャー!」叫ぶだけだった。
マロンは何とか逃れようと体をウナギのようにくねらすが、ロイスの牙はマロンをがっちりとつかんで離さなかった。

マロンの体の動きが緩やかになり、やがて止まった。ロイスはやっとマロンを口から離した。
「イヤー!!」
ミクが叫んだその時、ロイスの体が大きく宙を舞い、地面に叩きつけられた。ロイスは逃げ去った。
パーカーを着た黄色のクマが、手に持った壷でロイスに一撃を食らわせたのだった。
「なんだ!? あいつは!」
ポカンと口を開けるあタロウの横をミクは走りぬけ、マロンに駆け寄った。
「ミク、危ない!」
我に返ったあタロウは叫んだ。
クマは壷からハチミツをすくうと、マロンの口に塗り付けた。
「なんやこれ。ワテ甘いのよう食べん!」
「よかった。。。よかった。。。マロンのバカ。。。」
ミクは泣きながらマロンを抱き締めた。
「爪、たてんといてくださいな。」

クマの着ていたパーカーのフードがモゾモゾ動き、2匹のフェレが顔を出した。
「危ないところだったね。」ごえもんだった。
「この子の名前はプーさんっていうのよ。」 ピエロはクマの頭をペチペチ叩きながら言った。
「オレ達、ヘレヘスの街で仲良くなったんだ。」
ごえもんはピエロの肩に手を回した。
「そんなことよりも、マロンを医者に診せないと!」
あタロウは叫んだ。
「プーさんに乗りな。オレ達の村へ行こう!」
マロンをフードの中に寝かせ、残りの4匹はプーさんの頭と肩に乗った。
「さあプーさん。出発だ!」
プーさんはクレイシーファージィの村に向かって歩き始めた。


前頁へ 目次へ 次頁へ

解説

穴を掘り フェレは穴を掘る。何が目的なのか、楽しいのか、辛いのか、よくわからないが、とにかく必死に穴を掘る。目や鼻に土が入りそうで、見ている方がムズムズしてくる。だけどフェレはそんなことを気にした様子もなく、ただひたすらに穴を掘る。
ロイス 白川宅で生活している犬。♂。後から来たティナたんに対してヨダレを垂らして噛み付こうとし、FMLのみなさんをハラハラさせた。現在はロイスはティナたんを受け入れている様子で、噛み付くような仕種はないようだ。私としては、ノンストップ・ファイターであるティナたんに付き合うロイスに同情のようなものを感じる。FMLでも、犬とフェレが仲良くなれるのか? といった話題があった。結論としては、猟犬は血が騒ぐのでダメじゃないだろうか、まあ犬の性格によるところが大きいね、といった話で収束した。
後頭部を噛もうと フェレットの原種とされるヨーロッパケナガイタチの攻撃方法は、獲物の後頭部に噛み付き、頭蓋骨を粉砕する方法をとる。幸いな事に、FMLではフェレに後頭部を噛まれて頭蓋骨を粉砕された人は今のところ存在しない。
殴られるのは慣れてるよ あタロウ君のママのママ(Kyonさんのママ)は、あタロウ君に対してスパルタ教育を実践しているらしい。その効果があったのか、あタロウ君はとっても賢い。フェレが人の言葉をきちんと理解できることを証明した。
ウナギのようにくねらす フェレの体は、背骨がまるで存在しないようにグネグネと動く。嫌がるフェレを捕まえる姿は、ウナギのつかみ取りを連想させる。眠っている姿は、「あんた、そんな格好してつらくない?」と聞きたくなるような、妙に折れ曲がった姿である。
ごえもん 本名「五右衛門」。現在、河北宅で生活している。♂。肩乗りフェレットである。パーカーのフードに大人しく入っている姿を見たときは、本当にうらやましかった。
プーさん 河北さんは、ディズニーのくまのプーさんが大好き。しかし、ごえもん君にぷーさんのぬいぐるみの鼻をかじられたそうな。ごえもん君は更に犯行を重ね、ねこバスのぬいぐるみ等もかじったそうな。河北家の「ぬいぐるみの館」の住人は恐れおののいているそうな。
ピエロ 本名「ぴえろ」。現在、Taka宅で生活している。♀。大人しくバトルを好まない。毛が長くびっくりする位に柔らかい。最近になって、Takaさんは白川さん同様にぴえろちゃんを溺愛していることが発覚した。
ヘレヘスの街 1996年11月3日に銀座の松坂屋であったフェレットフェスティバスのこと。関東地区に住むFMLのメンバーが結構集まった。遠くは、名古屋、静岡あたりからも参加した人もいた。ここで、ごえもん君とぴえろちゃんは、1つのカバンの中でバトルした。
医者 フェレを獣医師に診てもらう機会は意外に多い。いざという場合に備えて、きちんとフェレを診てもらえる病院を探しておかないと、助かるフェレも助からなくなる。フェレは、臭腺除去、去勢、避妊、などの処置がされて売られているが、購入したら、その処置が完全に行われているかどうかを獣医師に確認してもらうと共に、健康チェックをしてもらうべきである。ジステンパーの予防ワクチン接種は必ず接種するべきだ。ジステンパーにかかったフェレは100%の確率で助からない。