2章 戦士


湖を見つめるミクは、背後にフェレ影があるのに気づいた。
振り向くとマロンだった。
「もう傷はいいの?」
「ああ、おかげさんで。」
マロンはミクの横に伏せた。

2匹は、どちらからともなく湖の向こうの森に目を向け、長い時間黙っていた。
沈黙を破ったのはミクだった。
「どうして旅に出たの?」
「奴らにワイの村をやられたんや。真ん中に指令塔があって、四方にトンネルのある、いい村やった。それを奴らが・・・」
「ごめんなさい。」
「なんで謝るねん? それで、ワイは仕返ししたろ思うたんや。で、ヤツらの後をつけとったら、あそこの森でヤツらに見つかったや。そして、このざまや。」
マロンは腹の包帯をいまいましい目で見た。傷はやっと塞がったが、痛みは相変わらずだった。
「この傷が治ったら、また奴らに仕返しをやるつもりや。」
「どうせ敵わないのよ。」
「なんで、そう決めつけるんや。」
「わかっているじゃない。みんなもそう思ってる。」

マロンは大きくため息をついた。
「この村のフェレは、みんな意気地なしやな。」
「意気地なしじゃないフェレもいるよ」
あタロウがいつの間にか2匹の後ろにいた。
「ただボク達は戦い方を知らないだけなんだ。意気地なしなんかじゃない。」
あタロウの瞳は真剣だった。
「わかった。悪かった。かんにんや。」
「戦い方を教えてくれ。ボクたちにできる戦い方を。」
「あタロウやめて!」
ミクはそう言ったものの、体の底から沸き上がる熱いものを感じて 尻尾が膨らんでいた
「武器はいらん。ワイらの指先にりっぱな武器がついてるさかいに。」
「マロンもやめて!」
「だから、戦い方を教えてくれって言ってるんだよ。」
「そんなものは気にせんでええ。戦いが始まれば自然と体が跳ねるから、それに身をまかせればええんや。自分の力を信じればええんや。」
「2匹とも勝手にすれば!!」
ミクは、背中を丸めて走り去った。
丘の上まで一気に駆け上がったミクは、初めて自分の尻尾は膨らんだままであることに気がついた。
湖を見下ろすと、大きな夕陽に包まれたマロンとあタロウのシルエットがそこにあった。


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解説

ワイの村 作間氏とお子様は、空き箱を使って基地を作った。しかし、作間奥さんが「邪魔よ!」というわけで壊されてしまった。この様子は、「まろん帝国の滅亡」と題されて、作間氏よりFMLに実況報告された。
あタロウ 本名「アーノルド」。現在、Kyon宅で生活している。♂
尻尾が膨らんでいた フェレは極端な興奮、喜び、恐怖のときに、尻尾の毛が逆立つ。この尻尾をツウは「ブラシしっぽ」と呼ぶ。あと、尻尾を左右にバババッと勢いよく振る行動も見られる。この行動は、布団やカーペットに上半身を突っ込んだ状態のときに、上から押さえつけてぱっと離した時に見られるようである。この行動の意味は解明されていない。犬のように嬉しいときに尻尾を振るのではないようだ。
上下に2本ずつの鋭い犬歯を持っている。噛まれたら結構なダメージがあるので、噛み癖をなおすことがフェレ飼いの最初の試練となる。根気よく教えること。ただし、フェレは甘えるときに軽く噛むことがあるので、これは無理に矯正してはいけないと私は思う。1つの愛情表現だと広い心で受け止めよう。ところで、フェレの歯の数は、36本とされているが、34本と記述された書籍もある。96年の大宮フェレットフェスティバルの○×クイズで出題された。ここでは、36本が正解であったようだ。
指先 フェレの指は5本で、退化したような水掻きがある。まあ、カワウソやラッコがフェレの仲間(同じイタチ科)であるので、それほど不思議ではないが、水掻きに気づいたときは驚いた。フェレの指の全てに鋭い爪がある。この爪を切ることもオーナーの役目であるが、慣れないと大変である。2人がかりで切るとやりやすい。FMLには、爪切りをした後でヤスリまでをかけるツワモノがいる。
跳ねる フェレは興奮した時に、驚くほどのスピードで前後左右にリズミカルに跳ね回る。その時は、口は大きく開いて犬歯をむき出しにしている。この特徴的なポーズは「ウィーズル・ウォー・ダンス」と呼ばれており、威嚇や遊びに誘う意味があると言われている。怒っているのか、遊びに誘っているのかを見極めないと大変な事になる。最初に見たときは恐れおののくが、慣れるとわざと興奮させて「右にホップ、左にホップ、下がって下がってホップホップホップ」なんて囃し立てながら楽しめるようになる。
背中を丸めて フェレは早く走る時に、背中を丸めた「Ω」の形となる。バランスよりも小回りを重視した走りであると思われる。