1章 旅人
赤く染まった秋の葉が水面に落ち、波紋が小さな湖に拡がる様子を、
ミク
は不安な心で見つめていた。
ミクだけではなかった。マーリングリスルの村の誰もが、あの日から不安な瞳で視線を交わす毎日をおくっていた。
あの日、マーリングリスルの村のはずれの森で、
マロン
という名の旅人が傷つき倒れていたのを見つけたのはミクだった。
知らせを聞いて駆けつけた村フェレによりマロンは村に運ばれ、奇跡的にも一命をとりとめた。
「全く危ないところじゃった。」
村の長老
カノン
は、長い体に巻きつけられたマロンの包帯を見ないように気を使いながらマロンに言った。
「ほんに、ごっつ危なかったわ。」
「もう大丈夫じゃ。ゆっくり休むがいい。」
カノンはマロンのハンモックの張り具合を確かめ、
新鮮な水
がボトルに入っているのに満足した。
「大丈夫やないんや。」
「え? 何と申した?」
「大丈夫やないんや。もうあそこは。」
マロンは、そう言うと窓の外に見える森に視線を向けた。
カノンも森を見つめたが、いつもと変わらぬ森がそこにあった。
「あの森で何があったのじゃ。」
マロンは、自分を襲ったのは
ジステンバ魔王
の生み出したモンスター達だったことをカノンに話した。
「ジステンバ魔王の魔の手が、もうここまでのびていたとは・・・」
「村のみんなに知らせた方がええ。」
「そうじゃ。すぐに知らせんといかん。」
カノンは急いで病室を出ようとしたが、ドアの前で足を止めた。
「しかし、みんなが知ったところで何ができるというのじゃ。」
その声は独り言に近く、マロンの耳には届かなかった。
幸せに暮らしていたマーリングリスルの村のフェレたちが黒い影に脅える日々が、この日から始まった。
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解説
ミク
本名「未来」。現在、佐藤洋一&裕子ファミリー宅で生活している。♀
マロン
本名「まろん」。現在、作間ファミリー宅で生活している。♂
カノン
現在、STEVE宅で生活している。大病を克服した不屈のフェレ。♂
新鮮な水
フェレは水をよく飲む。我が家では、2匹で200cc位は1日で飲む。いつも新鮮な水を与えるように心がけている。
ジステンバ魔王
フェレにとって、ジステンバは確実に死をもたらすウィルス性の病気である。 このジステンバを予防することが、ANESのテーマになっている。