<9>
その時、当のヤーブとアーサーは、バスルームに居たらしい。
「参ったな〜、何でこんなことになるんだろ?」
と、ヤーブはズボンのベルトを締めながらぼやく。
「それより俺は、お前が明け方5時にシャワー浴びていた理由を知りたいよ」
と、アーサー。
「眠れなかったんだよ〜。ほら、俺ってデリケートだろう? 繊細だしさ〜」
「デリケートで繊細な奴が、どうしてセーターを裏返しで着るんだよっ?」
「あ、本当だ。あはは〜♪」
「あはは〜♪じゃねーよっ!とっとと着直せっ」
と、俺たちの心配をよそに、本人達は湿気の篭ったバスルームで漫才していたらしい。
「ヤーブのエイドキット、持ち出せなかったぞ」
「怪我しないっていうなら、あれが無くてもいいけどさあ…」
エイドキットが入ったリュックがベッドサイドに置いてあり、それを取る為にグズグスしていたらしい。
一方俺は、エレベーターホールへ行ってみた。宿泊客20人程が頑丈な柱の陰で怯えてる。エレベーターは外が見えるタイプだから、すでに止まって動いていない。エレベータ室を通して煙が昇ってきている。
どっかで、火事になっている。そろそろ、まずい。
その頃、ちょうどホテルマンが、息を切らせて階段室から出てきた。
「みなさん、誘導遅れてすいません」
後から、もう数人が階段からやってきて、また何人かはさらに上に登っていく。
「テロリストの武装ヘリが当ホテルを攻撃し、放送等電気が遮断されました」
ホテルマンは、かすれた声を張り上げて説明をしていく。
「ホテルそのものは大変頑丈なので、これ以上崩れる事はありません。ただし、7階で火災が発生しています。火災から一番遠い階段で、避難を御願いします」
「いったい、どうなってるんだ?」
男の人が数人、説明を求めて怒鳴るけど、ホテルマンはわからないを繰り返した。
「どういう状況か、我々も分かりません。今はとりあえず、お客様に無事、非難して頂く事が先決です」
うーん、こう説明されると、こっちも落ち着くしかないよな。(^^;)
お客さんたちは、ぞろぞろと、反対側の廊下突き当たりにある非常階段に向かっていく。
俺は、アーサーたちの部屋に駆け戻った。と、ドアを開けようとした瞬間だ。
「とったあ♪」
嬉しそうなヤーブが、リュック抱えて飛び出してきた。
「うわあっ」
「あ。ごめん、驚かせた?」
「生きてたのか…(^^;)」
腰を抜かしかけている俺の前に、アーサーたちが上機嫌で出てくる。
屈強な大男がぞろぞろと出てくるのを見て、各部屋を見回ってたホテルマンが駆け寄ってきた。
「お客様、お手伝いを御願いしてよろしいでしょうか」
「何?」
「向こうの部屋に、怪我している方がいるんです。運ぶのを手伝って頂きたいのですが…」
あああ、今回は俺たち、「救援の相」とか出てるのかもしれない。
いや、俺の場合は「火難の相」だな。
ヤーブは、首に下げた軍医証を引っ張り出した。
「いったいこれ、どういう状況?」
「ああ、軍の方々だったんですね?!」
うーん、人間、こういう時は権力に弱いよ。ホテルマンはほっとしたように、今このシーンでは不謹慎な笑顔を見せた。
「戦闘ヘリです。我らの国軍ではなさそうなのですが、ヘリが当ホテルを攻撃しています。外に出た人々も、狙われて…今お客様方は、1階ロビーに避難しております」
さっき、わからないって言ってたくせに…(--;)
彼はぺらぺらとよく喋り、怪我人が居るという部屋に俺たちを案内した。
「怪我人じゃなくて、死人だな☆」
ヤーブは、床に倒れた女性を見てそう言った。生きてるのは、小さな女の子2人。しかも、血まみれで大泣きだ☆
「今月の乙女座は、子供救出運がMAXなのかもしれない」
ファーダはそう言って、十字架を切る。
「それなら蟹座もだよ…」
俺は、溜息をついた。窓の外には、まだヘリがいるらしい。ローターの音が聞こえる。この部屋の窓ガラスは全部割れて、絨毯はささくれて、ベッドカバーがくすぶっている。
部屋の空気はうっすらと白くて、焦げ臭い。
「なんか2人とも、納得が行くよ。その星座。キャラクターにあってる」
と、アーサーが女の子2人を両脇に抱えて廊下に連れ出しながらチャチャを入れる。
「アーサーは?」
「俺、双子座♪」
「ほう、それは奇遇だな。わたしと一緒だ」
皆の輪の間に、冷たい空気が流れる。
「…ヨハン。お前、双子座なの?」
「そう。6月14日生まれの双子座だ」
アーサーとヨハンが、見詰め合う。どっちかていうと、アーサーが見つめられていたけどね。
「…お、お前なあ、それって、すっごく迷惑だぞっ! 双子座のイメージが悪くなるじゃないかよっ!」
「君に言われたくないな、アーサー。双子座というのは一般に、理知的かつ愛情深く、多趣味で教養深いのだからね」
「…すっげえヤな奴だよな、お前。双子座の恥だぜ」
「君と同じ双子座だという事は、確かに恥だな。今後、双子座であるということは、恥ずかしくて口外できん」
「……………」
ヨハンて、なんかこう、もっと、柔らかく素直な物言いが出来ないんだろうかと、俺、いっつも思うんだよな〜(^^;)
「…ま、双子座は二面性があるっていうから、そういう点では、ヨハンは双子座らしいよな。裏表のないアーサーのほうは、双子座っぽくないかも」
と、また救いようの無いフォローを言いながら、女の子2人の怪我を確認したヤーブが、立ち上がる。
「怪我はたいしたこと無い。これ全部、ママの血だね。でも、抱っこしたほうがいい」
「アーサーとランディで、一人ずつだな」
と、ファーダ。
「コージとホテルの人たちに先歩いてもらって…」
と、言葉が終わらないうちに、すごい爆発音が轟いて建物全体がびりびりと震えだした。
「何だ?」
「脱出したほうが、いいんじゃないか? 今の部屋も、下手したら燃え上がる…」
ヤーブの言葉を遮るように、突然部屋の中から、ブシューッッという音が聞こえてきた。
「あっ、やりやがった!」
ファーダとヨハンが飛び込むが、一瞬にして戻ってくる。と、その後を追いかけるように機銃の玉が廊下まで突き抜けてくる。
俺たちが恐る恐る覗き込むと、消化器を持ったホテルマンが2人、散乱しているのが見えた。
「火事を消したいのは分かるけど、消化器使っちゃまずいよ…」
と、ランディ。すぐ近くで消化器の泡が見えたりしたら、誰だって攻撃目標にするよな☆
「距離的に、助けてあげられなかったよ」
と、ヨハン。廊下に残っていたホテルマンは、腰を抜かしかけている。
「ほら、あんたがしっかりしてくれないと。客の誘導、まだ終わってないんだぜ」
俺は、彼の腕を掴んで立たせた。
「一番遠い階段から、降りるんだろ」
そのおにーさんは、青褪めた顔で肯いた。俺たちは、ホテルの、一直線の廊下を突っ走った。
突き当たりは左に折れてて、そこを曲がるとリネン室と書かれたドアがあり、その更に奥が非常階段だった。
下のほうから、ざわついてる人々の声が聞こえてくるけど、上のほうは静かだ。俺たちは、女の子抱えているアーサーとランディを列の真ん中にして、階段を降り始めた。
奇妙な静けさがあるけど、建物全体が相変わらずびりびり震えている。とくに、冷たい金属の手すりに触れると、それをすごく感じた。
「どうなってるのかな、外」
「軍が、うまく追い払ってくれればいいんだけど…」
と、俺の後ろでランディとヤーブが会話をしている。
人の声のざわざわは段々大きくなってきて、俺たちは一階に辿り着いた。
ロビーは、比較的落ち着いて静かだった。壁沿いにみんな集まって座ったりしている。ぽっかりとあいた真ん中は、3階まで吹き抜けてて、シャンデリアが下がっていた。それがゆらゆら揺れてるから、みんな真ん中を避けているらしい。
怪我人も多い。
「ヤーブ、お前、怪我人何とかしてやれよ。そのほうが、集団がまとまる」
ファーダに突つかれ、ヤーブは肩を竦めた。
「…タダ働き…なんて思っちゃ、いけないんだよな、やっぱり」
ヤーブは、女の子2人を連れ、拡声器持っておろおろしている従業員のほうに歩いていく。
「さあてと、救援待つしか、なさそうだよな。あとはせいぜい、様子見ってとこか」
俺たちは、入り口のほうに移動した。
ロータリーには、何人かが文字通り「散乱」してたよ。
「でも、何機かいそうだ。軍がようやく、迎撃に来たみたいだ」
と、ヨハン。上のほうで、ヘリの羽音がうるさく聞こえ、ロータリーに映る複数の影が交錯している。
「追い払ってくれればいいけどな。墜落でもされたら、かなわないよ」
「ヘリなら、大爆発したりはしないと思うけど…」
俺たちは、ひそひそと話すしかなかった。ヨハンなら撃ち落としてくれるだろうけど、どこに落ちるかわからないものね。戦場みたいなフィールドなら、どうだっていいけど、ここは一応街中だ。
しかも、100メートル向こうには、国際線の集まる駅がある。
「撃ち落とせないのが、残念だ」
と、ヨハン。後ろのほうから、医者や看護婦を募るヤーブの声が聞こえてくる。
「お医者さん、看護婦さん、いませんか〜。僕と一緒に、怪我人の治療してくれませんか〜。怪我した方、いらっしゃったら奥のラウンジまでどうぞ〜。怪我はしてないけど具合いが悪いって方でもいいっすよ〜」
「…力抜けるよ…あれ」
と、アーサー。それは同感だ。でも、壁際で怯えていた人たちが、ヤーブの後についていく。
最悪なことに医者は一人も居なかったようだけど、看護婦さんが何人か名乗り出たようだった。
「ヤーブってあれ、天職だよなあ」
と、アーサー。俺たちは、ひさしで見えない上空を見上げながら、他愛も無い話を続けた。下に映る影は、相変わらずめまぐるしく動き、機銃の薬莢がガンガン降ってくる。
「ヘリの燃料、いい加減無いんじゃないか?」
「あのタイプは、航続距離長いんだよ。だから、あまり早く落ちると厄介かもしれない…」
ファーダの問いに対するランディの答えは、最後まで続かなかった。
ひさしの下にいる俺たちからも見える距離まで、ヘリがホテルから離れる。と、それを軍のヘリが追い、そして、敵機はくるりと旋回し、俺たちのほうに、つまり、ホテルの出入り口めがけて急降下…というよりも、落ちてきた!
「げっ!」
俺たちは全員、同じ声を上げたよ。ヘリはホテルの入り口から30メートルくらいの地点に機体の横から激突し、ぐるぐるぶんぶん回るプロペラを俺たちのほうに向けながら、こっちにむかって滑ってきたんだ!
「マジかよっ?!」
一般の客が、一斉に逃げていくが、ヨハンは、懐からマグナムを引き出す。
「今度こそ死んだっ!」
「諦めるなっ」
ドンッ、ドンッと銃声が響く。突風で、目もろくに開けられない。ヘリが目の前まで来る。
ドンッと再び銃声が響き、一拍置いてヘリの機体後部から火が吹き出す。凄まじい音とともに爆発が起き、俺たちはホテルの奥に逃げ出した。が、もちろん爆風のが早い。俺たちは、爆風に背中を押されて足が宙に浮く。
「きゃああっ!」
悲鳴が響き、熱風が通り過ぎていく。
ヘリは爆発の勢いで横に逸れていき、ホテルの入り口左の瀟洒な柱に突っ込む。再び爆発が起きて風が吹くけど、中に吹き込んでくる風は温度も勢いもさっきの半分くらいだった。
ホテル全体がびりびりと震え、埃が落ちてくる。
シャンデリアが激しく揺れて、ついに落ちてきた。俺たちを含む逃げ遅れた人間が、まだ下に居る。
「うわっ!!!!」
ヨハンが俺の腕を、ぐいっと引っ張った。
ガッシャンッ!とプラスチックか何かが割れる鈍い音がする。
シーンと静まった中、恐る恐る目を開けると、シャンデリアは俺とヨハンの足先の所で、床から1メートル半くらいの高さで宙吊りになってぶらぶら揺れていた。垂れ下がった部分だけが床や他の部分にぶつかって砕けている。
シャンデリアから遥か上のほうの天井まで、太いワイヤーが伸びていた。
命綱ならぬ、安全ロープが、切れずにシャンデリアの重みをちゃんと支えたらしい。
俺たちの反対側に避けていたファーダとランディ、それから、ちょっと離れたところにいたアーサーは、互いに視線を合わせた。
言葉も出ないよ。
下敷きになりかけた人々が、シャンデリアの下から這い出てくる。
一人の女の人がわっと泣き出し、その次に男の人が、いきなり、やったああっ!と叫んでガッツポーズで飛び跳ねた。
緊張の糸が切れたらしい。
静まっていたホテルのロビーのあちこちから、拍手と歓声が湧き上がった。
<10>
「ばれた以上は、ウロウロしていてもしょうがないな」
と、ヨハンはそう言った。ここは、さっきの事件の対策本部から割り当てられた別のホテル。
皆ようやくきれいにさっぱりして、一室に集まったところだった。
「君たちは、王子様を見つけ出して、王宮まで無事送るのが任務なのだから、早々に実行してもらう必要がありそうだ」
「でも、あんなことしてくる奴等だぞっ! のこのこ行くのは、余計危ねえよ!」
と、俺。
「だけど、うろうろするのは、もっと危ないだろう」
ヨハンは、冷静に言い返す。
「でも、俺たちは生き残れてるッ」
「回りの他人に犠牲が多すぎる」
「まあ、やめろよ」
と、間にファーダが入ってくる。彼は、俺とヨハンの肩をポンポンと叩いた。
「どっちの言い分もわかるけどね… とりあえず、王子様を王宮に無事送るのが、俺たちの任務で目的だ。コージだって、そういう依頼を受けたはずだろ」
「…」
「だから、それは完璧に仕上げないといけないよ」
「でも…」
「依頼の完遂は、プロの常識だ」
ファーダはまた、俺の肩を叩いた。
「それだけは、きっちりやろうぜ」
頭では分かってるけど、俺は、返事どころか肯く事も出来なかった。
-----------------
「近衛制服、分かってるよな」
ファーダは、俺たちを見回した。
装甲車の中は、やっぱりちょっと狭い。装甲車って言っても、見かけは普通のワゴンカー。ただしシートは、運転席の分しかない。
「近衛は手加減しなくていい。あ、男女混合だから、たじろぐなよ。宮内職員は殺さないように。ゴールは、陛下が逃げ込むはずの奥の書斎。場所は、OK?」
「OK」
と、俺たち。
「けどよう、コージ。よく王宮内のこんな詳細の見取り図、持ってたよな」
と、ランディが感心してくれる。
「まったくだ。私だって憶えてなかったのに」
と、ヨハン。
「…まあな。一般公開日のたびに未公開地区にも忍び込んで、作ったからね」
「熱心だなあ。何でまた…」
「趣味の一環だな、これって」
ああ、なんか物凄く複雑な心境。
「それじゃあまあ、行きますか☆」
途切れかけた会話を繋げるかのように、アーサーがそう言ってハンドルを叩く。
「ようやく、それっぽいことが出来る事が嬉しいよ」
ファーダが、そう言いながらヘルメットをかぶってゴーグルを下ろす。
「今作戦初のチーム行動、みなさんのお手並み拝見と行きますか」
言われてみれば、そうだよな。こうして、武装して行動するのは作戦始まって以来初めてだ。
夜が明けようとして、空が白んでくる。オレンジ色の帯が空に浮かんで、星が見えなくなっていく。
「じゃ、まずは私からだな」
ヨハンもヘルメットをかぶるが、ゴーグルは下ろさない。そのまま、ライフルをかついでサンルーフから肩から上を出す。
「車の位置、大丈夫だったか?」
と、アーサー。
「こんなものだろう。悪くはない」
「…素直に、これでいいって言えよ(--;)」
「これ以上の文句を言わなかった事に感謝をしてもらいたいものだな」
消音された、鈍い篭ったような2発の銃声とともに門衛が倒れる。
続いて6発が撃たれ、最後の一発と同時にランチャー担いだランディもサンルーフから顔を出す。
「行っくぜえええっ!!!!」
車は急発進し、王宮の正門に突っ込んだ。金具を砕かれた門は簡単に吹っ飛び、ヨハンが、正面の扉を守ろうとする兵に向かって銃を乱射する。
「曲がるぞっ!」
装甲車は扉ぎりぎりで右折した。まだ、警報は鳴らないけど、警備兵が追ってくる。ランディは、それにめがけてランチャーを二発もぶち込む。
「ランディ、あんまり無駄に撃つな!」
「数えてるからダイジョーブッ」
「お前のカウント、当てにならないっ!!!」
車のスピードと乱暴な運転で、舌噛みそうさ。
でも俺は、どういう訳か気分が上向いてきた。
アーサーが鼻歌混じりで運転して、俺がナビをして、後ろではヤーブが、一生懸命に丸メガネを押さえてる。
ファーダは必死で手すりにつかまりながら、しっかり前を見ている。
サンルーフから顔を出して銃を撃っているヨハンの足はリズムを取ってるし、ランディの発射した弾のカウントは、10発目にして既にいい加減になっている。
車の中は、その二人が撃ちまくる弾の、鼻に痛い硝煙の匂いが充満していた。
政府高官の屋敷ってのは一般に警備が本当に強固だけど、王宮なんかの警備は、意外とソフトだったりする。門衛が立っていて、あとは庭を回る警備員程度などと言うのは良くある話。もちろん、対人センサーくらいはあるけどさ。
ここも、その程度だった。
「コージ、次どっちだっ!?」
「そこを左!そのまま突っ込めっ!」
「よし行くぞっ!全員注意っ!」
レンガのタイルの上を車は滑る。
「うわあっ!」
サンルーフから頭を出している二人が、悲鳴を上げる。
とぼほ同時に、車はテラスの窓に突っ込んだ。ガラスの砕け散る音と共に、サンルーフからガラスが降ってくる。
「アーサー! 貴様、我々を殺す気かっ!」
「もっとはっきり、注意を促せ―――――――っっっ!」
間一髪で頭を引っ込めたランディとヨハンが悪態をつく。
「ああっ! ランディのほっぺから血が出ているっ!血がっ、血がああああっ!!!」
ヤーブの叫びが、妙に嬉しそうだ。
車は、カーテンを引き千切ってテーブルや椅子をなぎ倒し、サンルームの扉も砕く。広い廊下に出て、アーサーは車のライトを上向きにした。
広い一直線の廊下が、遥か果てまで見通せる。そこには警備兵が群れていて、俺たちに銃口を向けている。
「そろそろ本気で来るぞ!」
「かまってられるかっ!」
アーサーが、ぐんっとアクセルを踏み込む。弾が防弾ガラスに当り、ロケット弾が炸裂して車体が煙りに包まれる。
「このままガンガン行っちまえ!」
ファーダが叫び、俺たちは警備兵の群れに突っ込んで行ったのだった☆