砂塵…打猟組的香港大作戦

(チーム・ハンティングの香港大作戦♪)

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窟の中はほの暗く、ほら、よくある中華的な匂いがたち込めていた。

「あ〜ら、コ〜ジィ♪」

高級娼婦のお姉さん達が、俺に投げキスしてくる。俺、このおねえさん達が苦手なんだよ…と思ってるうちに、彼女たちは男達に追い立てられて奥の部屋に逃げていく。

「何やらかした?コージ」

ボス格の「ファンソ」という男が、いわゆる「東洋人」丸出しの巨体と無精ひげ、そして細い目で俺を見上げ、にやりと笑う。俺は、ため息をついた。

「婆婆から、聞いてるだろ」

「おうよ、聞いてるさ。だけどよ、コージ。重火器が出てくるってのは、どういうことなんだ?まさかあれ、治安維持隊じゃねえだろうな?」

「俺は、香港マフィアでも絡んでるのかと思ったゼ」

俺の言葉に、奴等は笑った。香港の治安は、九龍という元締めがあるからこそ維持出来ている。そこに、彼らとべったり癒着した治安維持隊が攻め込んでくるはずはない。マフィアはもっと、きな臭い犯罪に手を染めてるしね。つまり、九龍というのは裏社会のギルト…労働組合みたいなものなんだ。傭兵、ヒットマン、情報収集などの仕事を請け負うけど、密輸や薬、人身売買みたいなヤバイ仕事は御法度だ。一方で香港マフィアは、その御法度なお仕事を主に担当している。

だからこそ維持隊のお仕事は、もっぱら「犯罪を犯す外国人」と「社会主義国家転覆を目論むテロリスト」が相手だった。

「奴等は、マシンガンよりでかい武器は使わねえ。それに、俺等に攻撃するほど馬鹿じゃなかろうよ。ようするに、シギィの野郎が新薬に絡んでるって噂は、本当だったってことだな」

こいつらの情報網も、たいしたもんだよ(^^;)。大体のことを、ほぼ正確に知っていると考えていいだろう。会話は上海語だったから、ファーダとジェシーは、あまりよく理解出来てないかもしれないな。中国語ってのは、方言が多いから、けっこう難しいんだ。

奴等も、中国語、いわゆる「標準語」は知ってるんだけどね。

「サムも、生き延びたわけか。運がいいな」

まあ、嫌味というより九龍流慰労ってところだろう。サムは肩を竦めただけだった。

ここも九龍の一角なんだが、商売地域は端っこの方なんだ。中央までは、かなり距離がある。 ファンソ大兄が経済チームのボスで、そして駕仙大兄が戦闘チームのボスってところだ。

「計寸婆婆と待ち合わせしてるんだ」

との俺の言葉に、ファンソ大兄はニヤリと笑った。

「聞いている。満漢全席だってな」

「そんなことまで聞いてるのかよ(^^;;;)とりあえずだな、九龍中枢部(クーロン・コア)に行きたいから…」

途中まで言いかけた途端、内線が警報を発した。そばにいた若い衆が、通話をONにする。

“こちら12区検問。大変だ!何かの攻撃を受けて、防壁が…こいつら、軍隊並みだ!”

俺達は――つまり、早口の中国語が理解可能な奴等――は、凍り付いちゃったよ。軍隊のはずはない。政界は、九龍と繋がっている。

とすると、これはもうやっぱりシギィ君の秘密結社か、そのバックアップを受けて思い上がった一部マフィアの寝返りか…

考えている余裕はなかった。ここからコアに行くには、12区を通らなきゃならない。

「ちっ。応援に…」

ファンソが怒鳴りけた瞬間、内線からは悲鳴が轟いた。

“奴等、大型の砲弾を…うわっ…”

そして爆音。

ファーダとジェシーも、何が起きたか察したらしい。その場にいた俺達20人は、しんと静まったまま顔を見合わせた。

「……コアに行くにゃ、一番危ない地上が、一番確実ってことだな」

と、一人が呆れたように呟く。あの通信の様子じゃ、応援に行っても無駄だろう。

「女どもは、上の通路から外に逃がしな」

と、ファンソが苦々しい顔で若いのに命じた。女の逃げ道は、戦闘要員や商売人たちとは別ルートなんだ。そうじゃないと、彼女たちの出入りが目立ってしまうからね。

それに、女たちは戦いに不慣れなのが多いから、すぐに人込みに紛れられるような位置に逃げ道があるんだ。そこから、俺達みたいなごっつくて濃いのが出入りするわけにいかないだろ?

「おう、14区と連絡を取りな。そっちの様子次第で、俺達も…」

どんっ!凄まじい衝撃に部屋全体が揺れ、天井から塵が降ってくる。

俺達は、鉛の扉で封印された入り口を、振り返った。

誰かがここを、攻撃しているっ(^^;;;;

「ちいっ!」ファンソが舌打った。

武器だって、各自銃が一、二丁と、せいぜい若い衆が好んで持っている青龍刃くらいなものだ。通信で言っていた大型の砲弾っていうのが何なのかはわからないけど、このまえ空中でぶち込まれた対空砲みたいのだったら……だったら、白兵戦になりゃ、こっちのが小回り効く分、意外と勝てたりして(笑)。

ま、市街戦の訓練を受けた九龍兵が守る12区が壊滅したんだ。そんなに甘くはないだろう。俺は渋々と手を挙げ、そしてそれから、ファーダとジェシーにも分かるようにゆっくりと話した。

「12区を通らずに、敵を迎撃する余裕とポイントのある撤退経路を、提供してもいい」

「そんな都合のいい道が、あるもんか。ここに住んでる俺達だってそんなのは知らねえ」

と、一人が反発する。が、ファンソは眉間にしわを寄せ、いつもより1オクターブも低い声で呟いた。

「地下水龍…か」

その言葉で、サムを含む香港人たちは、呆気に取られたように黙った。ファーダとジェシーが黙ったままなのは、それがなんだかわからないからだ(^^;)

地下水龍といえば聞こえはいいが、その実体は「下水道」。

香港地上面積の2倍以上の広さをもつ「新九龍」全てにくまなく張り巡らされた、セキュリティ万全の、地下迷路のことさ。

「案内料は、かくまってもらった礼金でチャラだ」

と、俺はファンソに言い放った。こういう図々しいいい方とやり方は好きじゃないんだけど、図々しいほど強気に出る理由が一つあった。

要するに、部外者の俺が、九龍の内部を完全に把握しているということをさらけ出してしまったということさ。目撃者を消せ、なんてことにならないように、商談をすすめなきゃね。奴等は、自分の命も九龍の安全も保証して欲しいはずだ。

そして俺たちの方は、自分の命以上の保証と報酬を求めない、といういうことさ。ファーダとジェシーには気の毒だけど、この商談に付き合ってもらうしかない(笑)。

で、2人は話の内容を察した様だった。俺をちょっと恨めしそうに見て、肩を竦める。

あーあ、しかたねーな…ってところだろう。

「コージ。せめて弾薬だけは請求してくれよ(--;)」

と、ファーダ。

「俺は9ミリパラ。ジェシーは、マグナム弾」

それを聞いて、ファンソが部屋の隅に積まれた弾薬ケースを顎で差す。

と、そのときだった。

今まで以上の衝撃と爆音が轟き、天井から塵が、文字どおりの「土砂降り」になる。そして攻撃を受けた壁の上部が少し崩れ、攻撃者からのサーチライトの白い光が、微かに差し込んだのだのさ!

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凄まじい爆音が、3回ほど鳴り響き、何かが崩れる派手な音がする。

「これじゃあの廃ビル、崩れちまったかな」

と、若い衆の一人がさも面白そうに呟く。普段めったに味わえないスリルに、興奮しているらしい。

俺達は、下水溝に通じる、小さな小部屋に居た。俺達が最初に逃げ込んだ所よりも、10メートルほど地下なんだ。足元は、じめじめとしていてる。ここから、下水…要するに、マンホールの下の世界に通じているってわけさ。

ま、ファンソたちだって市街戦の訓練を受けてるし、サムは元々、九龍の戦闘要員だ(傭兵業専門部員だけど(^^;))。そして俺達は、限りなく何でも屋に近い傭兵だもんな。あそこで奴等を迎撃するほど、無茶はしない。

ライトが差し込み、そして砂塵が薄れて攻撃者たちが突入してきた時にはすでに、俺達はピンを抜いた手榴弾を幾つか残してここに逃げ込んでいた。ま、ビルは崩れちゃいないだろう。なにしろ、あの程度で崩れたら、自分たちだって危ない。ある程度の対爆構造にはなっている。だから、攻撃者たちが後をつけてくる可能性は高いんだけどね。

「瞬間技だったから、弾があまり持ち出せなかったぜ」

と、ジェシーはパンパンに膨らんだジャケットのポケットを叩いた。左右の内ポケットも、グラマラスなバストよろしく、こんもりと膨らんでいる(^^;;;。そしてファーダも、同じありさまだ。ただ、ファーダの方が持ち出せた弾数は多いだろうけどね。

「おう、持ち出した武器、上に掲げな」

ファンソの指示に、若い衆たちは手榴弾だのマシンガンだのを掲げた。

「ファンソ、司令官してよ。俺は水先案内する。ファーダとジェシーは、最後方で適当にやるはずだ。ただし奴等は、上海語がかなり不自由だから、できれば標準語で…」

という俺の言葉が終わらないうちに、

「俺も後方を行く。通訳もする。オル語でいいな?」

と、サムが口を挟んだ。だけど

「オル語はやめろ。駕仙の後釜は、テメエだろうが。せっかくのチャンス、棒に振る気か?」

と、ファンソが鋭く遮ってしまう。若い奴等も、しんとしたままサムとファンソを見ている。

だけどサムは、ファンソたちをじろりと見返したのだった。

「駕仙大兄(がせん たいけい)の後を継ぐつもりはない」

「…婆婆を泣かせるのか?」

「亜莱(アライ)が死んだと知った時点で、決心はついている」

あっちゃ〜(^^;)やっぱり知っているよな。自分の女が死んだこと☆

…なんて、おどけている場合じゃない。俺は、2人の間に入った。

「その話は、婆婆の前でしろよ」

という俺の言葉に、サムとファンソの2人が、同時に反応する。

「コージ、君には関係ないことだ。俺も後方に回るから…」

「今じゃなきゃ、間に合わねえ。それにコージ、テメエは…」

「あいにくだけど、この件に関しては、俺は部外者じゃない」

と、俺はファンソとサムに言い返した。

この件って、何のことかって?

簡単に言うならば、金色の髪を持つハーフのサムは、外国人支配を嫌うここじゃ完全なる異邦人で、そしてその異邦人が現最高権力者の計寸婆婆の後を継ぐことを、快く思わない奴も多いということさ。もちろん、ファンソくらいに、地位も年齢も分別のあるところまで行った奴等は、サムを支持しているという話だった。

生粋の香港人の女と一緒にして、少なくない反感を和らげようとした婆婆たち幹部のもくろみは、彼女が死んだ時点でパアとなっていたわけだ。

もちろん、彼女の死因も俺は知っていた。

だからこそ婆婆は、同じアジア人で、ヨーロッパの傭兵業界に通じている俺にサムを探すよう頼み、生きていたら、九龍での居場所を無くす可能性の高い彼の身の安全と将来を、保証しようとしたのだろう。

俺等ハンティングに加わるかどうかはサムの好き好きだけど、どこのチームに加わるにしろフリーでやっていくにしろ、俺やファーダと一緒に仕事をしたというのは、それなりにサムの「信用」になるはずだった。

おまけに、(ちょっと変人とはいえ)売れっ子の超A級スナイパー・ジェシーとも知り合いだとすれば、欧州でも充分やっていけるだろう。

計寸婆婆は、そこまで見越していたに違いない。

「だからあのケチ婆婆が、情報料をタダにしてまで“俺”にこだわったんだ」

俺は、2人と交互に視線を合わせた。

裏を返せば…というか、もっとシビアできつい言い方をするならば、計寸婆婆たち九龍の幹部たちは、亜莱(アライ)が死に、そして俺にサムの捜索を頼んだ時、すでに「サム」という次期総領を諦め、見限り、九龍で生きていくことを拒絶したということだ。

もっとも、あのミッションで生き残ったのがサムだけだったという事実が、決定的だったんだろうけどね。

他の誰かが一緒に生還して、生き残ったプロセスを(もちろんサムに有利な事実を)語ることが出来ていれば、物事はまた別の方向に動いていったかもしれない。

ファンソは、不満そうに何度か肯いた。

「…わかっている。八つ当たりだ。俺にしてみりゃ、婆婆たち長老のやり方は、あまりに“もったいない”んでな」

彼は続けて、俺をまじまじと見つめた。

「で、どうするんだ?コージ。下水道は、そう簡単じゃねえ。だいたい、セキュリティも完備だぜ。しかも、この下水道は、定期的に壁が動いて通路を変える。いくらお前さんでも、全てのパターンを知っているとは思えねえ」

「知ってるところを通るのだけが、地図読みじゃねーよ(--;」

と、俺は大切な小型ナビシステムからイヤホンを引っ張り出し、外れないように左耳に装着した。

「確かにここの下水道は、定期的に通路が変えられてしまう。コアに近づけば、セキュリティも働くしな…。でも、それはジェシーに任せるとして」

「高いぞ!」

と、ジェシーが不満気に口を挟む。が、まあ、いざとなればやってくれるさ。

「…で、あとはとにかく、俺を信じてついてきてもらうだけだ」

「まあ、信じるしかねーや」

ファンソは、ニヤニヤしながら肩を竦める。

「おう、奴等にはシギィがいる。あの野郎が、ここに居た時に下水道の内情まで調べ上げてたら、この先も安心とは言えねえ。さっき吹っ飛ばした奴等も、追ってくるだろうしな。最悪の場合は、挟み込まれる。覚悟しな」

彼の言葉に、みんな、おう、となんだか楽しそうに答える。そしてジェシーが、

「楽しい戦闘を期待するぜ」

と言って俺の背中を突く。俺は、心の中で呟いた。

“下水道って、絶対楽しくないよ(^^;”

―――――

さて、俺達は下水道へと入っていった。高さは3メートル程度で、幅は、場所にも寄るんだけど、だいたい5〜6メートルはある。ちょうど、かまぼこみたいな感じ。灯かりのほうはついてないから、俺とジェシー、ファーダ、それからサムが常備している小型のライト。それと、他の面々が持っているジッポくらいのものかな。

ただ、ジッポってのはオイルの匂いが残るからね。本来、追跡されてる時に使うのは不向き。といっても、オイルの匂いは、下水の匂いに負けていた(笑)。

「しっかし、こんな最新の地下都市にしては、ずいぶんレトロな下水道だよな☆」

と、ファーダがぼやいている。

「水路は九龍の命脈だからね。コンピュータなんていう、一部の人間にしか制御できないようなもので完全機械化されていたら、困るのさ」

答えてるのは、サムだ。それは合っている。けど、セキュリティはオートだよ☆

で、俺達が歩くのは、水が流れているところから50センチほど上に造られた、はば2メートルほどの金網製通路だった。ところどころに階段が作ってあって、水際に降りれるようになっている。

でもまあ、金網の上を歩けるだけ、綺麗な下水道と言っていいだろう。人が入って掃除をするということなんて、まったく考慮されていない下水道だって、いっぱいあるもん。流れている水そのものは、そんなに汚くない。この下水道に流れ込むまでに、何度かの濾過を受けているからね。もちろん匂いは消えてないし、消毒も不十分だけどね。でもこの濾過された水が汚れるのは、ネズミによる生ゴミの持ち込みやその死骸、直接流れ込む汚染雨水が原因だ。最終浄化施設まで、あと丸一日は流れ続けるはず。

俺は、追手をまく意味も兼ねて、少し回り道をしたのち、とある場所に辿りついた。

「さてみなさん。ここが第一関門です」

と、俺はみんなを見回した。ライトや、揺れるジッポの炎に照らされた顔は、テレビゲームのゾンビを思わせて、あまり気持ちのいいものじゃない。

と思った瞬間、ファーダが自分の顔の下からライトをあてて、にへらっと笑った。

「*^^*」

「!(((^^;;;」

まあ、皆俺を見ていて、ファーダの仕種に気付いたのは、ジェシーとサムくらいだったらしい。俺の「引きアクション」を、他の奴等は怪訝そうに見つめる。

「え、えと…。まずは第一関門と行きたいんだよね」

俺は平静を装って、背中を、俺達の行く手を塞いでいる扉にくっつけた。ここでファーダにかまっていてはいけない☆この第一関門は、シビアにくぐりぬけなくちゃ!

そして俺は、声を大にして叫んだ。

「1分で、泳ぐ準備をしてくれっ!」

俺の声とは逆に、みんなし〜んと静まり返る。うんうん、わかるよ。その気持ち。案内している俺だって、すっげ〜やだもん。

「…泳ぐのか?」

ファンソが聞き返す。

「100メートルくらいだ。たいしたことはない」

たいしたことはない、というのは、嘘だよな、やっぱり(^^;)

「深さは3メートルのはずだけど、半分くらいはヘドロで埋まってるはずだ。ジャングル・ミッションと思えばいい」

「この前行ってきたジャングルに、ヘドロはなかった」

と、憮然とした顔をするのは、ジェシーさ。そうだろうね。俺も、ヘドロで汚染されてるジャングルには行ったことないよ(^^;)

「とにかく、泳ぐぞ。俺は先に行くからな」

俺は、言うが早いが扉を開け、中にずんずん入っていったのだった。

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中は、何て言うのかな。汚水処理場…って、ここ全部がそうなんだけど、いったん水を溜めておく所なんだ。ここでヘドロを沈めて、上清だけが流れていくという仕組み。したがって、俺達が泳ぐはずの場所は、もうすこしきれい(であるはず)だった。

まあ、多少ヤケにもなっていたのは認めるよ。大切なことをサムに伝えてあげられなかったこと、結果としてはそのほうが良かったのかもしれないけど、それでも後悔は残っちまった。それから、満漢全席がすごく遠いことにも腹がたった。

俺の本来の予定が、全部狂ってる!ちくしょう、ムカツク!

俺は一息つくと、ざぶざぶと汚水の中に入っていった。

汚水の池は、底まで階段状になっていて、ローマ風呂的で洒落てるけど、4段から下は濁ってみえない。この階段の3段目くらいが膝丈だった。左側は壁になっている。滑らないように注意しながら、横にずっと歩いていって、上澄みだけを流す柵とフィルターをよっこらせっと跨いで、そして多少きれいになった「汚川」を100メートルほど流されていけば…

フィルターの手前で足を止めた俺に、ファンソがぶつかる。

「おう、コージ。何やってんだ。先に進みやがれ…」

俺より大柄で背の高いファンソも、口を噤んだ。俺と同じモノを見たからだ。

同じモノ…それと俺は、しっかり目があった。

そうさ。目のある生き物だよ。世界中で、一番質の悪い生物…

水の中から俺たちを見上げていたのは、潜水服を着込んだスナイパー数人と、その銃口だったんだ!


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