第1話
それは、素晴らしく美しい夜のことだった。
僕は正月早々、郵便局のバイトと、親戚連中からもらったお年玉をかき集め
てやっとこさ買ったギターを背負ってとても上機嫌で夜道を歩いていた。
「こつーん」
ふと、何かが僕の頭のてっぺんに落ちてきた。
「いてっ、何だ何だ?」
僕は空を見上げた。まるで、極上のサファイアを写し混んだような夜空だ。
また、そこに浮かぶ満月も、今まで見たことが無いくらいに蒼白く冷たい光りを
放っている。足下を見ると、パワーストーンみたいな石が転がっていた。僕は石
を拾ってしばし手の中で転がしたり、つまんで見たりして眺めて見た。その石は
、今日のこの夜空のかけらのような、とても美しい色の石だった。にしても、誰
だいったい、こんな高そうなものをぶんなげる奴は。僕は周囲を見渡した。見渡
したところでたかが知れている。だって駅から家までの通い慣れた道だもん。こ
の辺りは空き地はあっても建物なんて次の十字路までは一軒も無い。それにこん
な時間、人が通る分けない(実は終電で帰ってきたのさ)。
「これって、真上から落ちてきたよなぁ。」
僕はきょろきょろ周りを見渡した。誰も居ない。いいや、もらっちゃえ。僕
は妙な石をポケットに押し込んだ。
「ただいま〜。ね〜 僕宛にPC−VANから封筒来てなかった?」
「あ、おかえり、和博。封筒ってこれかしら」
「ん、そそ、これこれ。これでやーっと岩館家も未来に一歩近づいたねっ」
「な〜にいってんだか。それより終電なんて遅すぎよ。もっと早く帰ってきな
さいっ」
あぁあ、お説教だ。僕は早々に逃げ出すと、PC−VANのID入りの封筒を握
りつつ、二階の部屋に上がった。僕はドアをしめて、改めてポケットから石を取
り出して見た。すると、不思議なことに、真っ暗な部屋の中で石はまるでラピュ
タの飛行石よろしくほのかに光っているのだ。
「なんだぁ?? 光ってる。蛍光塗料でも塗ってあるのかなぁ」
僕は蛍光灯を付けてみた。なんてことない、普通の石だ。発光する石なんて
聞いたこと無い。やっぱり蛍光塗料だろう。僕は石を持って再び母親のところに
いった。結構形のいい石なので、母親にペンダントにでもしてもらおうと思った
のだ。母は普段はのほほ〜んとしているが(僕もなんだけどね)、以外とこの手
の作業は得意だ。どこで覚えたかは知らないが、渋谷の露天商も真っ青のアクセ
サリーを作る。評判も上場だ。
「あら、素敵な石じゃない。どこで買ったの?」
「ん〜〜 露天で売ってた〜。 これさ、ペンダントにしてよ。露天で売って
るような感じの奴。」
二階で僕がギターをいじっていると母親ができあがったペンダントを持って
きた。。僕はお礼に明日の買い物の下僕となる約束をして、母を早々に部屋から
追い出した。早速ペンダントを首に付け、ギターを背負って鏡の前に立って見た
。これがまた、ハードロックな匂いのする、かなりいけてるペンダントに仕上が
っていた。僕は再び電気を消して見た。が、これがいけなかった。とんでも無い
ことが起こった。石はあろうことか、2・3回鈍い点滅を繰り返したかと思うと
、これまた飛行石よろしく突き抜けるような青い光りを放った。
「わぁぁぁっ」
驚きついでに、今度は僕の部屋が揺れているではないか。激しい揺れは収まる
どころか、激しさを増し、天上は落ち壁は崩れ、可哀想な僕はそのままどこかに
墜ちて行った。
(SUM)
<PC−VANサークル「カフェテリア」#2037より転載>
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